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ラ・リーガのチームが一層愛しくなる!サポーターの呼び名に込められた、チームと地域の歴史とは
こんにちは、しえです!本日もご覧下さりありがとうございます!
先週公開したイムノを深掘りした記事、たくさんの方に読んでいただけてとっても嬉しいです!ありがとうございます!
noteを始めてから、今まで一人で楽しんでいたラ・リーガ深掘りが共有できて嬉しいです。と、いうことで今回も知ればもっと楽しくなる、ラ・リーガ深掘りシリーズ!
FCバルセロナファンの方が名前に「クレ」と入れているのを見かけたことはありませんか?スペイン現地の方でも、よくCuléと名乗る方を見かけます。
これ、バルセロナファンの総称。「俺はバルササポーターだぞ!」という意思表示としてクレという言葉を使っています。このサポーターのことを指す総称、他のチームにもあるんです。
それぞれのチームのサポーターがどんな名前で呼ばれているのか、なぜそう呼ばれるようになったのか?調べてみたらとっても面白かったので、今回はサポーターの総称について深掘りして行きましょう!
スペインはニックネームがよく使われる国
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まず最初に、スペインという国はニックネームがとてもよく使われる国です。なんなら初めて会った時に最初からニックネームで名乗ることもあるくらい、まるで本名のようにニックネームが使われています。
この名前ならこのニックネームという風に決まっているものもありますが、「どこから来たん、その名前」という場合も。頭文字だけが一緒とかね。
例えばラ・レアルのゴールキーパー、レミロ選手はÁlex Remiroとして知られていますが、実は本名はアレハンドロ。ニックネームが友人同士はもちろん、職場でも頻繁に使われます。
ニックネームで個性を!
スペインでニックネームがよく使われる理由として、名前のバリエーションが日本ほど多くなく被りやすい、ということが上げられます。
スペインはカトリックの国なので、多くの名前が聖書から取られています。そのためバリエーションに限界がある。だからニックネームで少し個性を出す人が多いんです。
ペドリ選手の本名もペドロ。スペイン人でペドロという名前の方がめちゃくちゃ居るので、区別するためのニックネームだと考えられます。ペドリの方がかわいい。
書き言葉には出身地が頻出
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ニックネーム関連で日本人の私達にとって見慣れないのが「出身地」や「〜出身の」という単語を三人称の人称代名詞として使うことです。
先日、ニュースで久保建英選手のことについて書かれたスペインの記事をまるまる翻訳しているものを見かけました。その中に「日本人は〜」と書かれた一文があり、記事についてのコメントの中に「日本人はってわざわざ書くなんて、なんか差別されているみたい」というものがありました。
ちょっと待った。これ、大きな勘違い。むしろ逆です。
スペインは出身地をとても大切にする文化。そのため、新聞などの書き言葉に限り、わざわざ三人称の人称代名詞として地域名を出すことがよくあるんです。
https://as.com/futbol/2021/08/23/primera/1629735686_267388.html
上記の記事のように、オヤルサバル選手のことをエイバル出身のという意味を込めて「eibarres」と書いたり、ナバーラ出身のメリーノ選手を「navarro」と書いたりします。外国人であっても同じです。文章にリズムを持たせるとともに、出身地域への敬意を表す言葉でもあるんですね。
だから、わざわざ日本人と書くなんて差別だ、なんてとんでもない!そんな気持ちは微塵もないはずです。
チームはもちろん、サポーターにも愛称がある
日常生活はもちろん、書き言葉であってもニックネームや少し変わった人称代名詞が使われるスペイン。そんな国のチームですから、もちろんチーム自体を指す言葉は多くあります。そしてその愛称を付ける文化はサポーター全体にも及びます。
ここからは各チームのサポーターが現地でなんと呼ばれているのか、特に起源の特におもしろいものをご紹介しましょう!
Merengues(レアル・マドリード)
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まずは今季優勝したレアル・マドリード。
チーム自体は「los blancos(白の)」「vikingos(バイキング)」などと呼ばれたりもしますが、ファンを指す言葉が「merengues(メレンゲ)」です。チームに使われることもありその境界線は曖昧ですが、ファンに向けて使われる方が多いかと思います。
このメレンゲスという総称、もちろんメレンゲ菓子から来るものです。卵白とお砂糖を使って作られる、白い焼き菓子のことですね。この呼び名は一人の新聞記者Matías Prats Cañeteのラジオ番組によって広まりました。
有名な新聞記者でナレーターでもあった彼がラジオ番組の中で、レアル・マドリードの上下白のユニフォームをメレンゲ菓子に例えて伝え、それが広まって行ったのだとか。
ちなみにレアル・マドリードは創設時の1902年から今に至るまで、ホームユニフォームはずっと真っ白なんだそうです。メレンゲス、なんて上品でかわいい名前ですよね。気品のあるレアル・マドリードとそのファンにぴったりです。試合中は憎たらしいけど。強いから。
Culé(バルセロナ)
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対するバルセロナ。バルサファンのニックネームは冒頭でも紹介しましたが、culéです。レ、にアクセントです。このサポーターの総称、なぜか分かりませんが日本でもよく使われていますね。「クレだから」とXに投稿されているのもよく見かけます。
このクレの起源がおもしろい。その昔今のような大きなスタジアムがなかった時代、試合の度に多くの人が壁の上に座っていたそうです。
道ゆく人から見ると、多くのお尻がすし詰め状態になって壁の上に並んでいる。その状態を表し、スペイン語のお尻「culo」から年月をかけて変化し現在のculéという単語になったのだとか。
クーロ→クーロス(複数形)→クゥレス→クレというわけですね。やや無理矢理感があるけど、年月の流れということで。Jidequínさんの記事に詳しくご紹介されているのでぜひ!
Colchonero(アトレティコ・デ・マドリード)
ラ・リーガ三強の一角、アトレティコ・デ・マドリードのサポーターたちの総称は「colchonero」。
コルチョネロとは日本語に訳すと「寝具の」とか「寝具製造の」という意味になります。寝具???このサッカーとはなんの関係もないニックネームには、スペインのかつての日常が隠されています。
アトレティコ・デ・マドリードが今のような赤白のユニフォームを着用するようになったのが1911年のこと。1903年の設立当時は青白のユニフォームだったそうです。
変更後の赤白のユニフォームが、当時スペインで一般的だったマットレスカバーに酷似。当時、ほとんどのマットレスカバーに赤白のフリンジが付いていたようで、そこからサポーターを含むアトレティコを表現する言葉としてコルチョネロが定着したのだとか。おもしろいですねぇ!
Leones(アスレチック・ビルバオ)
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同じ赤白のチームカラーであっても、寝具にはならずライオンへと進化したクラブがアスレチック・ビルバオのサポーターたち。
バスクの雄、アスレチック・ビルバオのサポーターたちは「leones」と呼ばれます。ライオンのスペイン語ね。レオネスの起源は、ホームスタジアムであるSan Mamésの場所、そして名前と繋がる特殊な形です。
1913年に設立され、2013年まで使用されていた旧サン・マメス。現在は取り壊され、新しいスタジアムがその名前を引き継いでいます。サン・マメスという名は古いスタジアムがキリスト教の聖人、聖マメスを祀った礼拝堂の真横にあったことに由来します。
この聖マメス、ローマ帝国においてキリスト教が迫害されていた時代にも信念を曲げず、様々な責め苦に耐え続けたとされています。そしてとうとうコロッセオに投げ入れられる事態に。通常、聖マメスはこのコロッセオでライオンに殺されたとされていますが、ビルバオに伝わる聖マメスの伝説は違う。コロッセオでなんとライオンを手懐け生き延びた、というのです。
この聖マメスの伝説が元となり、チームにとって重要なスタジアムがサン・マメス、サポーターたちはライオンに例えられその名で呼ばれているというわけですね。
いやー!おもしろい!!!今、一番訪れたいスタジアムです。サン・マメス。ちなみに、サン・マメス自体も現地では「catedral(大聖堂)」と呼ばれています。
Pericos(RCDエスパニョール)
https://youtu.be/DfcbnOC8Kf0?si=adG5f8UlSeyoYskA
現在はセグンダ(二部)で戦っているRCDエスパニョールのサポーターたちはpericos。ペリコはインコを表し、クラブのマスコットも青いインコ型です。
インコと呼ばれる起源となったのは、昔あったスタジアム周辺に大量のインコがいたからなんだとか。なんとも分かりやすくシンプルな呼び名ですよね!かわいいし。
アスレチック・ビルバオのように複雑な起源のものが有る一方、エスパニョールのようにかつての土地の特徴がそのままニックネームとして残ることも少なくありません。
セグンダで現在4位につけているエスパニョール、またインコたちが喜びで飛び回る姿をプリメラ(一部)で見たいものです。いい選手がいっぱいいるんですよ、セグンダもおもしろいのでチェックしてみてください。
Babazorro(デポルティーボ・アラベス)
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アラベスはサポーターの総称とチームマスコットの名前が一致している珍しいケース。Babazorroと呼ばれています。日本人の私達からすると変わった響きの名前ですが、しっかり意味を持っています。
babaはバスク語でそら豆、zorroは袋を表します。アラベスのあるアラバ県では、昔からそら豆の栽培が盛んに行われておりそこに起源があるのだとか。スペインでも一風変わった呼び名として知られています。
バスク語では袋という意味を持つzorroですが、スペイン語だとキツネ。そのため、アラベスのマスコットはキツネ型なんですね。キツネ先行かと思っていたら袋の方が先でした。とても上手なダブルミーニングです。バスク人しか分からんやろこれ。
Pepineros(C.D.レガネス)
https://youtu.be/p5M3s3oRY_E?si=TKX0k2GdEdaU60Rx
チームのある地域の特産品が由来となっているケースは他にもあります。
かつて柴崎岳選手が所属していたC.D.レガネス。郊外とはいえ首都マドリードに本拠地を置いているため都会的なチームかと思いきや、マスコットが驚きの「きゅうり」!選手、サポーターともにきゅうりを意味するスペイン語「pepino」から「pepineros」と呼ばれています。
現在はマドリードのベッドタウンとなっていますが、20世紀初頭のレガネスは農業の街だったんだとか。様々な農作物が栽培され、マドリード中心部に出荷されていました。そしてその中でもっとも評判がよかった農作物、きゅうりが人々の暮らしを支えていました。
この歴史が元となり、地元のチームはきゅうり型のマスコットが置かれ、呼び名もきゅうりそのものになった、ということのようです。レガネスのきゅうり愛には地元の歴史が詰まっているんですね。
サポーターの名称、ぜひ使ってみて
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今回はラ・リーガチームにサポーターの総称というあまり注目されないであろうところにスポットを当ててみました。いかがでしたか?
現地に出かけた際、例えばビルバオで
Me gusta Athletic,soy una parte de leones(アスレチックが好きです、レオネスの一員です)
なんて言ったらかなりの確率でビールか何か奢ってもらえると思う。
次に行ったら試してみたいけど残念ながら私はレオネスではないので、レオネスの方、どなたかやってみてください。
クレのみなさん、心を強く持って。チャビはいなくなってしまったけれど、来季はきっといいシーズンになると願っています。ではまた!