「奇跡は自分で起こす 幸せになる一ミリの法則」 鈴木秀子
「幸せに生きる力は一人ひとりの中にあります。私たちは幸せに生きるために必要なものをすべて持っています。」
「奇跡は自分で起こす 幸せになる一ミリの法則」 鈴木秀子
この本は、幸せになるための逸話がたくさん詰まっています。
良いお話がたくさんあるのですが、とくに心に残った2つのお話をご紹介します。
1つめの話。
アメリカで実際に起こったお話です。
裁判中に法廷内で銃を乱射して、裁判官を含めて3人が殺されるという事件がありました。
犯人は逃げてしまって、行方不明。
その事件があった街に、26歳の女性が引っ越してきました。
その女性は子どもが1人いましたが、その子のお父さんは赤ちゃんのとき病気で亡くなり、その女性がひとりで育てていました。
引越しのあいだ、子どもを託児所に預けて3日目に引き取りに行く約束になっていました。
2日目の夜、片付けが遅くなってしまい、食事もなにもなかったので、その女性は近くのスーパーに買い物に行きました。
夜中の2時。変なトラックが家の前に停まっていましたが、スーパーは目の前だし、危険はないと思い買い物に出かけました。
スーパーで買い物から帰ってきたとき、そのトラックの中から帽子を深くかぶった男が出てきて、その女性に銃を突きつけたのです。
2人は家に入り、すぐに女性の手足を縛りました。
「お願いだから私を殺さないで。自分が死んだら、あの子は両親のない子になってしまうから。私を殺すことだけはしないで」と大声で叫びました。
「食べるものを持ってこい。」
女性は「さっき買ってきたものの中にある。」と言いました。
男は飢えていたようで、夢中で食べました。
「あなたが食べている間、私はどうしても読みたい本があるの。読んでもいいかしら。」
「取ってこい!」
女性は口で本のページをめくりながら読んでいると、男は……
「声を出して読め!」と言いました。
その本のタイトルは、「The Purpose Driven Lives」(『人生を導く5つの目的』)という本です。
女性はその中の、とくに感銘を受けたところを大きな声で読みました。
それは人生の目的とは何か、私たちは何のために生きているか、といった難しい本でした。
人間というのは命を与えられ、生かされている存在だ。そして、一人ひとり状況は全部違うけれども、それぞれに使命があり、いろいろな苦しみを経ながら、最後の使命を果たした時に死ぬ。いちばん大切なことは、他の人に貢献することである。
それぞれの形は違うけれども、他の人が「本当に生きているっていいなあ」と思えるようなことをすることが、人間の生きていく使命だ、というようなことが書いてありました。
男は帽子を脱いで、「自分が誰だか知っているか?」と聞きました。
毎日テレビで連日報道されている法廷で、殺人事件を起こした犯人でした。
「自分は人を殺したから、これから何人殺しても同じだ」と言うのでした。
犯人はソファーに座って食べながら本の言葉を聞いていましたが、あるところで「もう一度読め!」と言います。
それは、人生の目的は何か、一人ひとり命が与えられ生かされている、一人ひとりはかけがえのない存在だ。
そこのくだりにくると
「もう一度読め!」
女性が愛読書を10回くらい読んでいるうちに朝がきました。
そして、犯人に頼みます。
「今朝早く、子どもを託児所に引き取りに行くと約束してあるから、引き取りに行かせて」
すると犯人は
「パンをくれ」
女性は手足をほどいてもらって、トーストを焼きバターを添えて出しました。
男は…
「本物のバターだ」
今まで、本物のバターというものを食べたことがなかったのでしょう。
男はおいしそうに食べ、コーヒーを入れてもらいました。
「では子どもを迎えに行ってくるから」
男は頷きました。
女性は外へ出ると、警察に知らせようかどうか迷ったといいます。しかし、罪を償わなければならないと思い、警察に行きました。
100人を超える警官が、家を取り囲みました。
犯人は自分から手を上げ、家から出てきました。犯人は女性のほうに目を向けて、こう言いました。
「ありがとう」
犯人がつかまったとき、最初の猛々しさはなかったといいます。とても同じ人だとは思えなかったそうです。
良い言葉をくり返し心に刻んでいるうちに、このような奇跡が生まれたのかもしれません。
鈴木さんは、こう言います。
2つめの話。
アメリカの中学校での話です。
数学の先生のクラス担任の生徒に、とてもおしゃべりなマークという子がいました。
授業中、マークがおしゃべりをはじめるとそれにつられて他の子もおしゃべりをして、とても落ち着きのないクラスになっていました。
「どうしたらこの子たちを落ち着かせるのだろうか?」
先生は考えました。
先生はみんなに1枚づつ紙を配り
「ここにクラスのみんなの名前を書きなさい。」
「今から、みんなの観察力と、人を見抜くテストをします。」
「ひとりづつ、あの人はあんなところがいいなぁ、この人のこういうところが好きだなぁって、頭で考えないでどんどん思いつくまま書いてくだい。」と先生は、生徒たちに向かって言いました。
生徒たちは
あの人は親切!
あの人は声がキレイ!
あの人は、とても責任感がある!
など、みんなの良い所を書いていきました。
先生はこの言葉を持って帰って、生徒ひとりづつに対して紙にきれいな字で書き写しました。
次の日
ひとりひとりに、その紙を通信簿を渡すように手渡したのです。
先生はどんなにみんなが喜ぶのかを期待しました。
しかし
みんな、何も言わないのです。
次の日も、そのことについては何も言わず、先生はこのことを失敗に思いました。中学生の心理状態って難しいと。
でも
そのうちにだんだん教室が穏やかになって、みんな仲良しになっていったのです。
ひょっとすると、あれが効いたのかもしれない!
月日が経ち
先生は長い間、そのことを忘れていました。あれから学校も変わって、20年という月日が過ぎました。
ある日
先生は20年前に勤めていた自分の故郷に帰ってきました。
めずらしく先生の両親が空港に迎えにきました。
先生は、ふと感じます。
「何か様子がおかしい。」
すると、お父さんが言いました。
「実は、お前の教え子のマークが戦死して、明日はお葬式だ。ちょうどいいときに帰ってきた。」
それは、ベトナム戦争のあった時だったのです。
先生は、マークのお葬式に参列しました。
教え子たちがみんな集まってきていて、先生を懐かしく迎えてくれました。
そして
明日、マークの家に集まろうということになりました。
翌日、先生はみんなより早めにマークの家に行き、ご両親に会いました。
マークの両親は、先生が遠くから来てくださったことに感謝しました。
マークの両親が、あるものを先生に見せました。
マークが戦死したときに身につけていた服の中に、たったひとつだけ残っていたものがあったのです。
お財布でした。
その革の財布にはお金は入っていなかったのですが、中に1枚の紙が入っていました。
その紙は中学生のときに、みんなの良いところを一つづつ書いた紙。
そう
あの紙だったのでした。
そこに
40人の子どもたちが見つけてくれたマークの良さが、40個も書いてあったのです。
マークはそれを戦死するまで、それもベトナムでの激しい戦争の最中、肌身はなさず持ち歩いていたのです。
あの時、生徒たちは何も言わなかったのに……マークはこうしてずっと持ってくれていたんだ。先生はそう思いました。
しばらくして、マークの友達がみんな集まってきました。
先生は、みんなに言いました。
「マークは死ぬまでこれを持っていてくれたんだよ。ほらみんなの書いてくれた言葉が一つづつここにのってる」
すると
そこにいた立派な青年たちは
「先生、僕も持ってるよ」
とズボンのポケットから紙を出しました。
「僕も持ってるよ」
と胸のポケットから出した子もいました。
ここに集まった教え子たちは、ひとり残らずその紙を持っていたのでした。
1人ひとりの中には、
こんなに素晴らしいものがある!
それをみんなに教えた先生。
人はみんなに認めてもらいたい。
人はみんなの役にたちたい。
それが幸せを感じることなんだ!
鈴木さんは、最後にこう結んでいます。
【出典】
「奇跡は自分で起こす 幸せになる一ミリの法則」 鈴木秀子 海竜社