【絵本】「あんぱんまん」 やなせたかし
「おなかが すいたろうさあ、ぼくの かおをかじりなさい。ぜんぶ たべてもいいんだよ。あまくて おいしいからすぐ げんきに なれる。」
「あんぱんまん」 やなせたかし
アンパンマンの絵本。
初版が1976年というので、ずいぶん前になりますね。
一番下の娘が幼いころ「アンパンマン」が大好きだったので、アニメをよくいっしょに見ていました。
この絵本は「アンパンマン」の原点といいますか、アニメとはまたちがう空気感の絵本です。
ここから「アンパンマン」がはじまったんだ!と思わせてくれる絵本でした。
絵本のタイトルが「あんぱんまん」とひらがなで書かれています。
そして
アンパーンチ!
や
アンキ~ック!
は、でてきませんし、
バイバイキ~ン!
のバイキンマンやドキンちゃんも出てきません。
ショクパンマンも、カレーパンマンも、バタ子さんも出てこないんです。
*
砂漠のまんなかで、ひとりの旅人が飢えて死にそうになっていました。
すると
西の空から、なんか鳥みたいなものが近づいてきました。シルエットを見ると、マントのようなものをつけています。
そして
たびびとの前にひらりとおりてきました!
いきなりそんなことを言われると怖いですよね。
たびびとも
と言います。
すると、そのふしぎなひとはこう言ったのです。
たびびとは、恐る恐るあんぱんまんの
顔にかじりつきます。食べてみると、
びっくりするくらいおいしいのです。
たびびとは元気になりました。
あんぱんまんはウルトラマンのように、空中に飛んで行きました。顔が半分くらいになっても、あんぱんまんは空を飛んで行くのです!
今度は夕暮れの森の中に、あんぱんまんは向かいました。
森の中でひとりの子どもが泣いています。
子どもはちょうちょを追いかけているうちに、森の中で迷ってしまったのです。真っ暗の森の中、動物たちの目が光っています。
そのときに
あんぱんまんが子どもの前にひらりとおりてきました。
あんぱんまんは、子どもを背中に乗せて飛びたちました。
ついにあんぱんまんの顔は、なくなってしまったのです。
あんぱんまんは、子どもを無事に家まで送りました。
そして
あんぱんまんはパン工場に行き、新しい顔をおじさんにつくってもらって、また飛んで行きました。
と言って。
おなかがすいた人たちを助けるだけのあんぱんまん。
そんな「あんぱんまん」みたいな人がいたら、そういう人たちこそ、本当にカッコイイヒーローですよね。けっして、世間ではクローズアップされないと思いますが。
やなせたかしさんは、あとがきにこう書かれています。
あんぱんまんの物語の最後のページは、笑顔で空を飛んでいます!
【出典】
「あんぱんまん」 やなせたかし フレーベル館