[自分流] 効率良く論文を探すコツ part Ⅱ
こんにちは , こんばんは もしくはおはようございます.
社会人大学院生のしゅうとです.
今回はいよいよキーワードを検索ボックスへ入れて
お目当ての論文を見つける作業に取り掛かります.
前回の記事で, (1) , (2) については既に解説していますので
(1) 臨床的疑問のカテゴリー化
(2) 臨床的疑問 の PI(E)COへ定式化
今回は以下の, (3 , (4), (5) について解説したいと思います.
(3) 医学統制用語 (Medical Subject Headings ; MeSH)の確認
(4) AND / OR を使用した検索式をつくる
(5) フィルター機能(ワイルドカード)を活用する
(3) 医学統制用語 (Medical Subject Headings ; MeSH)の確認
まずはじめに, MeSH(メッシュ)について一応解説させてください.
MeSHとは...
MeSH はMedical Subject Headings の略で, pubmed内で
様々な医学用語をできるだけ統一して使えるようにまとめられた
用語集
のことです.
と, これだけでは非常に分かりづらいので, 例を基に解説します.
たとえば, 「癌」という言葉は, 世界中の研究者によって
cancer・carcinoma・neoplasm など色々な用語で表現されています.
では, いざ「癌」というキーワードを検索する際に
上記3つのうちどの英単語を用いればよいのか?
あるいは, 考えられる全ての単語で検索すべきなのか?
という問題に直面します.
しかし, この問題はMeSHによって速やかに解決されます.
以下の[図1] をご覧下さい.
[図1]
文献上で複数用いられている表現も
pubmed内のMeSHデータベースで確認すると
neoplasm が, "癌" というキーワードの MeSH であるのが分かりました.
それでは, 実際の画面上で "前十字靭帯" の MeSH を確認していきましょう.
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まずはホーム画面の MeSH Database をクリックします.
クリック後, この画面になるので MeSH を知りたい検索ワードを入力します.
今回は 前十字靭帯の直訳である anterior cruciate ligament と入力しています.
その後 Search ボタンをクリックすると...
部分一致したMeSHがいくつか検索結果として表示されています.
今回の結果では, どうやら入力した anterior cruciate ligament は
そのままMeSHとして使用することができそうだということが分かります.
つまりこの検索結果画面では, 入力したキーワードがMeSHとして
どのように規定してあるかということが分かるわけですね.
ちなみに, この一番上にあるMeSHをクリックしてみると
このような画面になります.
初見の方は見るべきポイントが絞れず, ちょっと眠くなりそうですよね.
余談になりますが,
画面一番下のMeSHの階層構造を示している Tree structures は,
幅広く網羅的な文献検索をしたい時や
ピンポイントで文献検索をしたい時なんかに重宝します.
ただし, 知らなくてもそこまで困ることはないので, また別の機会で記事にしたいと思います.
システマティックレビューチームに入って網羅的な文献検索をするときなんかは必須の操作方法です.
このように, MeSH とは同じ意味を持つ単語を1つに統制する役割がある
ということを分かっていただけたかと思います.
ではMeSHについてここまでお話ししたところで本題に移っていきます.
(3) 医学統制用語 (Medical Subject Headings ; MeSH)の確認 は,
前回PI(E)COへ定式化した際の日本語のキーワードを
英語且つMeSHへ置き換える作業となります.
今回は, 赤字で示したCQを例に日本語からMeSHへ置き換えていきます.
日本語は Google翻訳 や DeepL翻訳 を使用して
英語へ翻訳する方法でも構いませんが, より精確性を高めるために
医中誌を使用できる環境にいらっしゃる方であれば,
同サイトのシソーラス参照機能を使用されることをオススメします.
今回は医中誌のシソーラス参照機能を使用し,
PICO の P の部分である 前十字靭帯再建術後患者 を
MeSH に置き換えていきます.
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まずはシソーラス参照をクリックします
MeSHを知りたいキーワードを検索ボックスへ入力し,
検索ボタンをクリックします.
検索結果で部分一致したキーワードがいくつか出るので,
その中から最も該当するキーワードを選択します.
該当キーワードをクリックすると, 以下のコマンドが現れるので
「キーワードの詳細情報を見る」をクリックします.
そうすると, MeSH用語に置き換わったキーワードが表示されるので
"前十字靭帯再建術" の MeSHは, 赤の下線で示しているように
Anterior Cruciate Ligament Reconstruction であるということが分かります.
同様の作業をI と O にも行い,
というように, MeSHへの変換作業が無事終了しました.
日頃から慣れ親しんでいる領域であれば
実際はここまでしなくても
直訳した単語や日頃から呼称しているキーワードを
PI(E)COにそれぞれ英語で置き換えれば済むケースがほとんどです.
(4) AND / OR を使用した検索式をつくる
段々と文献検索に近づいてきましたね.
まず, 検索式って? と思われる方のために 少しだけ説明させて下さい.
検索式とは, 必要な情報を効率良く抽出するために
論理演算子などを使用した単語の組み合わせのことです.
pubmedなどのデータベース検索でキーワードを組み合わせるときは
論理演算子というものを使用します.
文字でみると難しいですが, 単語と単語の間に入って
検索条件を調整してくれるものという認識を僕はしています.
それぞれの論理演算子の役割および検索イメージは以下の通りです.
基本操作としては P と I で AND検索をするのが一般的で
検索結果の数があまりにも多い場合は, O を追加して再度検索すると
自分が欲しい文献に近づく可能性がぐっと近づきます.
では, 赤字になっているCQに沿って検索式を作成し
検索結果がどうなるか見てみましょう.
まずは, pubmedの検索画面へ
ホーム画面へ直接キーワードを入力すると下記の二の舞になります.
(1) Yahoo!や Googleの検索エンジンを使用する感覚で, 医中誌やpubmedを使用している.
最初にクリックすべきはこちら(Advanced)です.
クリックするとこのような画面が表示されます.
ここから検索式を作る作業になります.
(3) で日本語から英語へ置き換える作業は済んでいるので
あとはキーワードを入れていくだけです.
ちょっとしたコマンド操作も含めて以下を参考にして下さい.
Search ボタンを押すと普通の検索になってしまうので
間違えないようにして下さい.
History and Search Details では キーワード検索した際に
何件Hit するのかが Results に表示されます.
仮に anterior cruciate ligament reconstruction のみで検索すると
13,286件 Hit することになります.
この膨大な数からお目当ての論文を見つけるのは骨が折れますよね.
この要領で, I のキーワードも入力すると以下のようになります.
キーワード単体だと膨大なHit数だったものが,
検索式を使用することで 検索結果は 53件と かなりスマートになりました.
さらに, P + I の検索式に O を 加えることで
検索結果の精度を向上させることができます.
ただし P + I の検索結果の数が少ない場合は O を加えることで
検索結果が極端に少なくなったり, 0 件になることもあるので
注意が必要です.
(5) フィルター機能を活用する
さきほどの Results に表示された数字をクリックすると,
この画面に移ります.
画面左にあるフィルター機能(チェックボックス)を使用することで,
表示された検索結果からさらに詳細な条件を設定し
検索することができます.
今回のCQを検証するための研究デザインはランダム化比較試験でしたので
試しにRCTのチェックボックスを指定すると
検索結果はなんと 9件になりました.
この数であれば全ての論文に目を通しても 日は暮れることもなさそうですね.
このように研究デザインを指定する以外にも
掲載からの経過年数を指定したりと色々な機能があるので
用途に応じて使用していただければと思います.
まとめ
日常の疑問を構造化しキーワードに落とし込むだけで
検索効率は格段に良くなります.
もう, 膨大な数の論文に目を通す作業とはおさらばです.
検索方法を体系的に学習したいという方は
講習会や図書館で配布されている資料を
参考にしていただくと良いかもしれません.
ちなみに, より実践的な検索方法を学びたいのであれば
図書館司書さんに聞くのがオススメです.
熱心な方であれば親身になって教えていただけます.
僕の検索の型はほとんど図書館司書さんに教えてもらいました.
といっても, 自分が行う作業によって検索方法は大きく変わるものです.
今回は該当論文の数を絞り込み, 効率良く文献を見つけることに
フォーカスを当てていますが,
システマティックレビューやメタアナリシスなどの網羅的な文献検索を
必要とされる場面では,
むしろどれくらい多くの論文を拾い集めれるかが重要になってきます.
状況に応じた使い分けが自由自在にできると,
日々の検索作業が楽しくなってくるかもしれませんね.
では本日もここまで読んでいただきありがとうございました.
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