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紙の雑誌編集から離れて、もう10年くらい経つけれど……。

今宵、本の深みへ。編プロのケーハクです。

私は、今でこそ書籍の編集とライティングを中心に仕事をしていますが、かつて編プロの仕事の中心(レギュラー)といえば、雑誌でした。

コンビニからマガジンラックが撤去されてすでに久しいですが、出版業界で働く私でさえ、最近は雑誌を手に取ることがほぼなくなってしまったので、一般の人からしたら「まだ売ってるの?」みたいな感覚なんだろうと思います。

なぜ、ふとこんなことに思いを馳せているのかというと、ウェブ記事もSNSも、それから現在の生業にしている書籍も、最近目に触れているものは「ぜんぶ小さくて四角いな……」と思って(笑)。

なんとなく、小さな四角のなかに縛られている感覚、皆さんもありませんか?

スマホ画面に映し出されるウェブコンテンツも、当たり前なのですが、小さな四角いインターフェイスに合わせたレイアウトになっているし、動画や映画も、最近はスマホやPCでの配信を楽しむことが中心で、小さい画面に見慣れてしまっております。

ちなみに、某映画監督さんにインタビューしたときにプライベートな映画鑑賞の話を聞いたところ、本職の彼ですら映画はもっぱらスマホで観ているらしいです(そのほうが意外と細部まで見えるらしい)。

私の本業である書籍にしても、四六判や新書判、大きくてA5判とかなので、スペース的にはやはり小さく、入れられる要素も限られます。

それでもその小さな四角のなかにあって、自由にレイアウトを組んでなんとか遊べないものかと、足掻いているのですが、気がつけば、やはり小さくて細かくて、窮屈さを感じながらも、そんな世界に慣れてしまっており……。

油断していると、定型っぽい、いくつかの配置パターンのなかから選択して、なんとなく置きにいっている感じになってしまいそうになるのです。

そんな行き詰まりを感じつつ、「は〜」と一息ついたところで、ふと、仕事場に置いてある、昔手がけた雑誌を手に取ってみたのでした……。

「でかい! そして自由!」

かつての自分はこんなに動きのあるレイアウトを作れたのか、と少し驚きました……。久しぶりにA4の版面をまじまじと見ると、スペースの大きさにハッとします。

「片観音ありの7P特集! 懐かしい……(もう何年もやってない)」

私自身、この業界に入った頃にはすでに雑誌市場は下降気味になっていましたが、それでもまだ、雑誌は出版の花形だったような気がします。

特に自分が購読していた、憧れの雑誌で特集を担当したときなどは、本当にうれしくて、今も見本は捨てずにとってあります。

たとえば……映画ファンだった私にとって、ぴあさんの雑誌やMOOKは外せません。

ケーハクが担当した懐かしの雑誌&MOOK

終わり際に駆け込みで担当できた『Weeklyぴあ』の『ダイハード4.0』特集!(この頃はA4変型)

百科事典のような分厚さの『ぴあシネマクラブ』。最後に発行された2008年版(洋画と邦画が統合したレアものです)の巻頭特集を担当できたのも、今となっては密かな誉れです。

当時の雑誌は、A4とかA4変型が多く、結構スペースが大きくて、要素もてんこ盛り。これを読者に「面白そう!」と感じてもらうため、レイアウトのラフとか、毎回必死に工夫していた記憶があります(今も必死ですが……)。

レイアウトの引き出しを増やすのにも必死で、いろいろな雑誌を立ち読みし(買わなくてすみません……)、頭のなかでラフ変換してインプットしてまわったりしていました。

とにかくスケジュールが恐ろしいスピードでまわってくるので、なにかと生き急いでいましたが、ページデザインがデザイナーさんから上がってくるたび、ワクワクが止まらなかったし、その反面、修正指示に頭を悩ませることも多かったです。

赤字を入れる範囲も広いので、なんとなくですが、肉体的な消耗も激しかったような……(笑)。

毎日、赤ペンのインクで手は真っ赤、電車で同じように赤ペンで汚れた手を見つけると、同業者か? と勝手にシンパシーを感じていたものです。

当時は時間をかけてプリンターからゲラを何部も出力し(めっちゃ遅い)、それを出版社まで電車に乗って届けに行っていました(通称:おつかい)。今思えば、編集者の仕事は、全般的に肉体労働だったな〜と

不便さゆえに時間内に詰め込む作業量がとてつもなく多く、時間があっという間に流れていく相対性理論の世界(あれ、もう春!? と、毎年年度末発行の案件に追われて冬の記憶がない)。

今は、赤字もPDF上に入れられるし、ゲラのやりとりもメールでサッと送れるので、だいぶ作業は効率化されましたよね。

そういうわけで、仕事内容が今より肉体的でダイナミックだったので、その勢いや躍動感が誌面に表れていたのかもしれません。

「もしかしたら、小さくなっていないか、自分?」

ここ最近の自分は、気づかぬうちに発想力が少し萎縮していかもしれません。小さな四角いスペースに慣れすぎないよう、昔の雑誌を担当していた頃のように、脳を柔らかくして思考の可動域を広げておかねばと、あらためて気を引き締めていこうと思う次第です。

そんなことに思いを馳せつつ、エンタメ系(特に映画)のジャンルでA4(変型も)の雑誌を担当することなんて、もうないのだろうな〜と少し寂しく思います。あの頃のように、150%の力でフルスイングなんて、もうできる年齢ではありませんが……(笑)。

そんなに部数を発行しなくてもよいので、年間エンタメまとめの復刻版みたいな形(価格が多少高くてもいいので)で発売したら、昔のファンとか買いそうですが、どうでしょうか? やっぱり無理です……よね?

文/編プロのケーハク

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