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「ノド」と「小口」の「空き幅」を気にしている出版関係者しか面白くない話

今宵、本の深みへ。編プロのケーハクです。

こちらの「シュッパン前夜」ですが、実はnoteでの連載だけでなく、YouTubeでの配信も行っております。本づくりの舞台裏について、ちょっとマニアックな話題を提供しておりますので、ぜひそちらもチェックしていただけるとうれしいです。

さて今回は、そのYouTubeチャンネルのほうで今週から「出版業界の気になる話題を語ってみた!」というメンバーによる座談会を配信する予定なのですが、収録中にゲリラ雷雨に苛まれ、その激しい雑音によってやむなくカットされてしまった話題をこちらのnoteで座談会記事として再現させていただきました!

テーマは、「ノドと小口の問題はどうしている?」という、どう考えても編集者など一部の出版関係者しか気にしていない話題(笑)。でも、あまり他社の編集者同士で相談することがない話ではあるので、読む人によっては貴重な情報になるのではなかろうかということで、「シュッパン前夜ch特別編」としてお読みいただければ幸いです。

それでは、どうぞ!

○座談会参加者
MC:編プロのケーハク(ケーハク
新星出版社編集者:ネバギブ編集ゴファン(ゴファン
池田書店編集者:高橋ピクト(ピクト
小学館編集者:マルチーズ竹下(竹下
エクスナレッジ編集者:アワジマン(アワジマン

ケーハク 「ノドと小口の問題はどうしている?」ということで、なかなかマニアックなテーマですが、ゴファンさんからの質問です。

ゴファン たとえば、こういう裁断面(小口や天地)から近いところに飾りや文字のある誌面デザインの場合、毎回OKするかどうかで悩んでしまうのですが、皆さんはどうされてますか?

ケーハク あ〜なるほど。こういう天地左右を枠で囲うデザインってよくありますよね?

ゴファン はい、ですが、製本の過程で裁断する場合、こういう枠ってどうしてもすべて均一に裁断されるわけではないので、幅にばらつきが出るんですよね。こういうのは他の編集者の皆さんはどう考えているのだろうかと。

ケーハク ちなみに入稿データ上には、誌面の端に二重トンボというのがあって、この内側にある内トンボのところから製本の過程で裁断されるわけですが、実際は紙を折ってからカットするので、裁断の際に数ミリ単位の誤差が生じると……。

ゴファン はい、これが実際の本になります。枠の幅が違いますよね? デザイン上は均等の幅であっても、実際はこういう誤差が出てくるんです。上が4ミリで下が2ミリとか。場合によっては5ミリと1ミリということもあります。

ケーハク なるほど、それがなんとなく不恰好ではないかと?

ピクト データでは何ミリで作成したんですか?

ゴファン 天地3ミリ・3ミリです。

ピクト うちでは3〜4ミリ空けることにはなっていますが、ちょうど最近ボクも制作部(印刷関連の担当部署)から「1ミリくらい増やしたほうがいい」と指摘を受けて、デザイナーさんに相談したことがありました。
結局「1ミリ増やすと不恰好になるから」と、枠のデザイン自体を外すことになったんです。でも、ボク個人としてはあまり気にはならないかな〜と。

竹下 私も気にならない派です。気にならないけど、指摘をしてくる人はいますよね。なので、デザイナーさんからこういうデザインが上がってきたときは、過去に仕上がりに誤差が出たことがあるけど、大丈夫ですか? と一応意見はいいます。

ケーハク 大丈夫じゃなかったら?

竹下 デザイナーさんがこのデザインに対して強い意図がなければ「外しましょう」となるし、懸念を払拭するアイデアがあれば、「こうしましょう」という提案がある場合もあります。そのへんは、できるだけデザイナーさんの意図を汲んで進めますが、それでも危ない感じはしますよね?

ケーハク アワジマンさんは?

アワジマン 特にないです。全部デザイナーさんに任せます(笑)。

ケーハク ボクの場合、枠をつけるんだったら、3ミリではやらないかもしれませんね。もう少し太枠にします。ギリギリの幅だと逆に誤差が目立っちゃうじゃないですか? 1ミリしかないと「失敗なんじゃないの?」って思われてしまう。

アワジマン 結局はデザイン的な美しさっていうことですか? それとも事故が怖い?

ケーハク そもそも折って切るから正確に追いきれないという前提があって、誤差が出るのはしょうがないと。でも、たまに5ミリと1ミリとか誤差が目立つケースっていうのがあって、「これってミスなんじゃないの?」って思われるのが嫌だってことですよね、ゴファンさん。

ゴファン はい。

ケーハク 対策としては、枠ごとトルか、太くするか。それで版面が狭くなるのが嫌だったら、中面の部品を被せてもいいようなデザインにするとかですかね? デザイナーさんに懸念される要素を相談して、あとはデザイナーさんの選択という感じでしょうか?

ゴファン 一方で小口の際にあるツメの部分に文字が入った場合は、私は正直5ミリは空けてくださいと依頼するんですが、皆さんはどうですか?

ピクト 私は4ミリです。社内では4ミリ空けましょうという決まりになっています。

ケーハク 会社によって空きのルールがありますよね? なので、初めてやり取りする出版社の場合は、印刷系のルールを最初に聞きます。で、フォーマットが上がってきたときにチェックを受ける感じです。後出しで修正を入れてくる人もいますが……。竹下さんのところは?

竹下 社内的なルールはないですが、制作部の担当者が「ここ不安じゃない?」と指摘してくれることはあります。それで「ハッ」と気づく感じ。私は割とそのへん甘いほうなので……(笑)。

ケーハク あと、断ち落としの文字デザイン(仕上がりいっぱいにレイアウトして切れることを前提としたデザイン)なのか、そうではないのか、みたいなケースもありますよね? 入れるのか、出すのか、ハッキリさせる配置にしてもらったり。

ピクト なんとなく配置している場合もありますからね(笑)。それはちゃんとデザイナーさんと話をしたほうがいいと思います。

ゴファン あとはノドの重なりの部分ですね。見開きで見せるレイアウトの場合、皆さんはどう処理しているのか聞きたいです。

ケーハク ノドは本の真ん中の綴じる側の部分で、中心の重なる部分が見えない、もしくは、見づらくなるということがあります。見開きで跨ぐレイアウトをした場合、見えなくなる部分の処理をどうするのか? ということですよね。

ゴファン イラストの場合は、配置をずらしたり、延ばしたりすると思いますが、こういう表組みの文字で跨ぐ場合は、どうでしょうか?

ピクト へえ〜、これはなかなか……。

ゴファン 実際の本ではこれくらいの空きになるんですが、もっと狭めたほうがよかったのか……?

アワジマン あ〜、これ以上狭めちゃうと見づらいですね。

ピクト 
雇用(間隔)保険。1,5(間隔)10円ってことですか? これはすごい!? でも、ギリわかるか……。

ケーハク でも、ボクはやらない(笑)。

ピクト ボクもやらない(笑)。これ給与明細の見た目にしたかったんですよね?

ゴファン はい。なので、左右にずらすことができなくて。あと、この本の特徴として見開きで可能な限り1枚絵で見せたいというコンセプトがあったという背景があります。

ケーハク 縮小の給与明細をつくって、そこから引き出す感じのチャート解説ですかね? あとは、つながっているのがわかりやすく見える仕掛け飾りを入れるとか……。まあ、ノドを跨いでドーンと見せるのは、ゲラで見るとダイナミックでカッコいいですよね。でも、実際に製本したときにどう見えるかが問題というか。

ゴファン 見開きドーンの場合、イラストレーターさんも真ん中に置きたい衝動が生まれるので、それをずらしてもらったりするのはよくあります(下はデザインで中央配置したの場合の例)。

ケーハク 見開きの真ん中に重要な要素が来てしまうと、どうしてもノド寄りになるので見づらくなるんですよね。なので、ボクの場合は大事な要素は、小口寄りに配置することが多いです。

アワジマン そういうのがわかっている人だと、最初に指示とかできるんでしょうけど、やっぱりイラストレーターさんは真ん中に重要なものを置いてくることが多いので、ボクも結構ずらしてもらっています。最初にいっておけばよかったっていつも思うんですが……。

ケーハク 分厚い本になると、よりノドのほうが見えなくなるので、せっかくのイラストなのに思い切り本を開かないと見えづらくなってしまうのは残念ですよね……。
こういうのも失われていく出版編集のスキルなんでしょうか……と、こんな感じですが、ゴファンさん、大丈夫ですか?

ゴファン はい、ありがとうございます!

というわけで、シュッパン前夜chはコツコツと毎週金曜の19時更新を続けております。よかったらぜひ、YouTubeも覗きに来てください。チャンネル登録もよろしくお願いします!

文/編プロのケーハク

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