未来からやってきた【宇宙の虹の子】
はい
ゆっくり息を吸って
ゆっくり吐く
そなたは、教会にひざまずく者のように身をかがめ、長い道のりを歩いてこられました。
あなたの傍らには、常に教会の音が聞こえ、迷った時、苦しい時、悲しい時、人の言葉よりも、その鐘の音に癒やされたのです。
あなたにとって人生は、求めるというよりは、招かれるものであり、招待状が来たときにすぐに席を立って歩いてゆく準備を、幼少の頃から身につけてこられました。
もちろん人生は単調な振り子時計のようなものではなく、次々と展開し、気がつけば、「大きな精密機械時計」ができているように、あなたにとって人生は、やがては大きな壮大なビジョンを見るための仕掛けに過ぎません。
そしてやがては、大きな機械仕掛けのその巨大な歯車の上に座って、心ゆくまで星や月を眺めていたい。まさに飽きることがありません。
あるいは、他の銀河系に足を運べば、もっと違う彩りともっと違う動物がいて、もっと違う生き方をした人がいて、もっと違う価値観を持った人がいるに違いない。
胸の鼓動を通して、かすかなその叫びをあなたはいつも聞くことができる、人一倍動物的な嗅覚に優れ、頭脳というよりは類稀なその五感と、その延長にある六感の助けを借りて必要な人を見分け、招かれるようにして人生を歩いて来られた。
人生は必然から必然への流れであり、そこに選択の余地はないのであり、次々に開かれたそのステージを、ただ胸を張って堂々と進むのが人の生き方であると
あなたは無意識にそれを感じ、時には鳥小屋の鳥のように自由を奪われたとしても、それは何かの訓練であると理解し、悩むことも悲しむこともなく、音もなくあなたは人生を歩んできました。
その原動力はどこにあるのか。
その淵源を探るなら、魂はその記憶を、遥かなる無限の彼方から引き寄せ、そしてやがてあなたの意識表面上にそれを引き出す。
目の前に地球儀があって、それが厳かに回転すると、やがて巨大で大地の色に満ちたアフリカ大陸が眼下に見えてきます。
ゆっくりと向日葵の種が蒔かれるように、あなたはその広大なアフリカ大陸に向かって降りていきます。
舞い降りながら、あなたはアフリカの匂いを全身で嗅いでいる。
アフリカは、あなたにとってまさに他人ごとではありません。
自分の中を流れる血管のようであり、神経組織のようであり、そしてまた筋肉のようである。
ここは六世紀の北アフリカ。
100年もすれば、やがてイスラム帝国の支配下に入るわけですが、当時のアフリカはまだ自由で土着の信仰に基づいて、伸び伸びとした生活を送っておりました。
あなたには優れたシャーマンの父親がいました。
北アフリカ一帯を統治している優れたシャーマンでした。
どこから身につけたのでしょうか。
父親が一声声を上げると、巨大なアフリカ象やライオンたちは、どこからともなく姿を現し、父親を背中に乗せて目的地へ運んで行くのです。
あなたは小さい頃それを楽しみました。
象の背中に乗って流れるようなアフリカの平原を堂々と進んでいくと、天地が全て自分の味方のようにさえ思えました。
父親は言いました。
父親はたくさんの酋長から尊敬され、病気治しやあるいは天候を読み取り、人々の生活を導く、まさにリーダーの中のリーダーでありました。
しかし、そんな父親がやがて40代半ばで死にます。
死にゆく父親の手をとって、あなたは父親に懇願します。
まだ死なないで。
私はあなたの跡を継ぐことなんかできません。
アフリカ全土は悲しみの淵にありました。
王は死んだ。
偉大な王は死んだ。
誰がこの跡を継ごうか。
人々は皆悲しみに沈み、誰もが猜疑心の塊となりました。
人々はあなたを見てこう言います。
アフリカライオンの前に立った時、あなたは身がすくみました。
何もできない。
私はシャーマンにはなれない。
あなたは一週間近く泣き通しました。
いっそ嘆きの丘から下に向かって自分の身を投げればよかった。
何もできないこの無能な私が生き延びて、人々に迷惑をかけるだけではないか。
あなたがまさに嘆きの丘から身を投げようとした瞬間だった。
腹の底から突き上げるような力があなたを支えたのです。
生きているのか死んでいるのかわからない状況の中で、目の前に白い立派な立髪を立てたアフリカライオンが立っていた。
殺される。
そう思った瞬間だった。
気がつくと、嘆きの丘の上に腰を掛けていたんだ。
さっきまで墜落したはずの我が身が、
我と父親の愛に守られて嘆きの丘の上に立っていた。
見たまえ。これが命の秘密だ。
知りたまえ。これが力の秘密なのだ。
君は今から一人ひとりと直面対話し、一人ひとりの人生を
切り開くお手伝いをしなければならぬ。
勇気を出してその人に面と向かい、勇気を出して技を振るうがよい。
この幼い惑星地球は、今やっと長い眠りから目覚め
真の夜明けを迎えようとしている。
欠点だらけの自分に何ができよう。
きっと80億の民一人ひとりがそう思っているに違いあるまい。
ゆえにこそ、勇気と正義の神、旧約聖書においては
モーセと呼ばれる人間が咆哮する。
今勇気を出さねば、この地球は永久に救われないのだ。
人生において最も重要な資質を挙げるとすれば、それは勇気をおいて他にはあるまい。
人類がもし真に夜明けを迎えたいのであれば、その勇気を奮い起こすことである。
はい
ゆっくり息を吸って
ゆっくり吐く
もう一度
ゆっくり息を吸って
ゆっくり吐く
はい
ゆっくり目を開ける