要約「デザインのデザイン」原研哉|「本質」を掴む感性と洞察力
3冊目は、原研哉さんの「デザインのデザイン」を紹介します。
原研哉さんは、無印良品つながりでご存じの方もいるかもしれませんし、少し前だと長野オリンピックでご存じの方もいるかもしれません。
デザイナーだけでなく、マーケティング・企画に携わっている方に読んでいただきたい一冊です。
本書のまとめ
デザインとは「技能ではなく物事の本質を掴む感性と洞察力」
デザインは生きた時間の堆積から生まれる。本質は観察と共感にある
新技術・製品やコミュニケーションが登場するたび、デザインが試される
リデザインとは既知を未知化すること
リデザイン集|事例から「デザインとは何か」考える
「デザインとは何か」は言葉で表すのは難しく、事例から考えていく方がわかりやすいと思います。
本書の中で紹介されてるリデザインの事例の一例を紹介していきます。事例を知る中で「デザインとは何か?」を考えていきましょう。
「トイレットペーパー」のリデザイン
あなたなら、トイレットペーパーをどうリデザインしますか?
材質を柔らかくする…
再生紙利用…
カラーバリエーションを増やす…etc
いろいろ考えられますよね。
本書で紹介されてる事例は、
トイレットペーパーを円筒状から、四角にするというもの。
この狙いは「家庭内の省スペース」だけではありません。
トイレットペーパーの扱われ方を観察する中で、
店舗はスペースを取らないように配置している
家でもスペースを取らないように並べている
使う時には、使い過ぎに注意している
ことがわかってきます。
トイレットペーパーを四角にすることで、店舗や家での省スペースを促し、また使いすぎないよう円筒状から四角形にしたのです。
「ゴキブリホイホイ」のリデザイン
つづいてはゴキブリホイホイです。
こちらも、あなたならどうリデザインするか考えてみてください。
本書では、
「置き型からロール状の粘着テープ」にリデザインされた事例が紹介されています。
ロール状なので好きな長さに切ることができ、ゴキブリが出やすいキッチンの隙間にも設置できます。
また両面テープのようになっており床以外にも設置ができ、現代のインテリアを邪魔しないようになっています。
ゴキブリホイホイは「ゴキブリを捕らえて餓死させる」という、改めて考えると残酷な製品ですが、ゴキブリが帰ってきたくなる家のように見立てたプロモーションはそうしたイメージを持たせず、見事家庭に普及しました。
しかし家に見立てた置き型ではインテリアの邪魔になりますし、置き場所も限られます。
プロモーション成功の背景や、プロモーションの一部でもある独特な形を理解した上での、リデザインの事例です。
「マッチ」のリデザイン
3つ目はマッチのリデザイン事例です。
最近ではライターどころか、IHコンロが増えたことで火を知らない子供が増えているそうですが、超がつくほどアナログなマッチはどのようにリデザインすると良いのでしょうか。
本書では、
「落ちてる木の枝の先に発火剤をつける」という事例が紹介されています。
現代社会の中で、マッチを使う人がどういう人か。また「火」とは何なのか。
自然の中で育ち、そして枯れて落ちた木の枝に、地球に還る前にもう一仕事してもらう。
その中で、人間と火の何万年にも及ぶ関係に思いを馳せ、何万年も前の先祖の暮らしを想像してもらうのが、このリデザインの狙いです。
「ティーパック」のリデザイン
紅茶を飲む時、ティーパックから淹れる人も多いでしょう。
この場合、どんなリデザインが考えられるでしょうか。
本書の事例は、
「持ち手を”紅茶の色”に染めたリングにする」というもの。
紅茶を淹れるとき、多くの人は時間を測りますよね。私はスマホで時間を測ります。
持ち手が飲み頃を伝えるリングだったら、その手間がなくなります。
またこの事例で好きなのは、「リングの色が”好みの基準”になる」ことです。
「この色で飲め」と強制するのではなく、「濃いめが好きならこれより深い色」と基準を示し、生活者に選択の余地を残しているところが素敵です。
ここでは本書で紹介されている一例を紹介しました。
本書では他にもたくさんの事例が紹介されていますので、もっと知りたい方は本書を読んでみてください。
【まとめ】デザインとは何か
デザインとは何か、なんとなくわかってきたと思います。
あらゆるモノの価値の本質は、時間の堆積から生まれ、磨かれていきます。
人々とモノとの関係性を、時間とともに磨かれたものを、五感を使って捉えます。
デザインとは、技能ではなく物事の本質を掴む感性と洞察力なのです。
また人は生活しながらさまざまなことを学習し、その度に「Aは〇〇である」と固定観念が出来上がっていきます。
リデザインとは、こうした固定観念・既知の事実を一旦白紙にし、もう一度捉え直すことを指します。
本書の事例からもわかるように、
あらゆるものがリデザイン可能です。
全ての人がリデザインをする人になり得ます。
大事なのはその時に、「表面的なデザインを変える」のではなく、「物事の本質を捉え直すこと」なのではないでしょうか。
冒頭にお伝えしたように、「デザインとは何か」言葉で表すのは難しいです。
事例(やったこととその背景)を知ることで、「デザインとは何か」わかってくるものだと、本書を読んで思いました。
本書にはたくさんの事例が紹介されているので、ぜひ何度も読み返してみてください。