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伊那市ダブル選用【ファクト考察 観光と経済②「本当の強みと弱み」】

というわけで観光と経済の二回目。
今日もあるあるですが、前回の国内総論からもう少し小さく。地域やエリアでよくみる「自然豊かな」が相手にはまったく刺さらないという「認識」のリアルからスタートしてみたいと思います。

☆「自然」と「温泉」は強みにならない?

移住フェアとかをみるといつも思うのですが、日本全国どの地域も例外なく「自然」を売りにしていて、日本って本当に自然豊かな国だなぁと思います。そして残念なことに、多くの地域、自治体の「自然」というコピーを使っている人々(いわゆる公務員、職員)は、自然に興味がないことが殆どです。

なので、言葉に熱がないし、詳しい人に聞かれても答えに窮するような場面もしばしばあります。多分、うちの伊那市でも9割以上がアウトドアの趣味や時間をもたない職員の方々なので、南アルプスの登山コースや季節ごとの見どころを答えられない人も多いでしょう(足元にある自然の価値を知らない、誇りに思えていない人と出会ってしまって、聞いた方が失望するシーンが見えますか?)。

ですので、こうした「自然」や「温泉」のコンテンツで成功している地域は、マーケティング視点でわかりやすい「トンガリ」を持っていることがほとんど。わかりやすくいえば「日本一」とか「一年にこの一週間だけ」といった希少価値(レアリティ)です。

長野に住んでいたり、北アルプスや南アルプスでの登山を常にするような人々は「本当に?」と思っていても、環境省の「星が最も輝いて見える場所」第一位になったことで昼神温泉(阿智村)は、その星空を目的とする観光客が後を絶ちません。うちの伊那市でも高遠城址公園の桜が Yahoo! で日本三大桜城址公園に選ばれたり、箕輪町の紅葉湖がじゃらん紅葉ランキング一位になったりということが起これば、そこに幾多ある桜や紅葉の行先として「選ばれる価値(レアリティ)」が発生するわけです。

逆にいえば、尖がらない自然や温泉は東京や大阪にも普通に存在していることを地方、地域の人は忘れてはいけません。なので、こうした尖らない自然や温泉を使うのであれば、それ相応の戦略性が必要だということになる。それを怠っているから、無駄なPR費ばかりが消耗されていくのです。

☆ブランドを「使えていない」という絶対的弱み

今回はダブル選用ということもあり、わが伊那市を事例にこの項を進めていきましょう。

伊那市の場合ですが、せっかくある「南アルプス」という絶大なブランドを使い切れていない。そのことが最大の弱みです

私たちの自治体は「二つのアルプスに挟まれる」をコピーにしていますが、この南アルプスが持つポテンシャルを発揮させられていません。つまり、観光戦略として最大の強みを手放しているといえます。
これは SWOT 分析等で「南アルプス」があることで強みと思い込みたいが、実は「南アルプスを使えていない(マネタイズ出来ていない)」という弱みこそが現実ということ。その現実を前提として分析、対策、立案されなければいけないということを示しています。

本来なら看過できないくらいの失策です。ところが、自らも登山を愛し、ここを理解し、強化したい現市長らに対し、議会や行政内部が後ろ向きという構造がずっと続いています。

https://www.pref.nagano.lg.jp/kankoki/sangakusounan/kentou/documents/06shiryou3.pdf

例えば北アルプス(白馬、立山を除く)と南アルプスにおいては山域、百名山の数等はほぼ互角です。しかし、観光登山者数で南アルプスは北アルプスの約1割に過ぎません。もちろん流行病前に「密」な状態であった北アルプスと同等の「数」を目指す必要はありませんが、現状の倍増とそれに伴う「観光と経済」の発展を目指す。それは無理のない数字と言えるでしょう。

実際、これまでもこうしたヒアリングや会議、委員会に出席したケースも何度となくありましたが、行政サイド側やお年のプロの方は「南アルプスに客はこない」「何をやっても駄目だから無理」「山ガールはいない」といった話を終始されていました。これに対して僕などは「車を持たない世代に車がある前提でアクセスをつくる側の問題」「PRの的外れ(山岳アウトドア・カテゴリーではなく、大手一般旅行等にその費用を投じる)」「山ガールはいないのではなく来れないだけ」といった指摘をしてきたわけです。

そしてうちが街宿MILLEをはじめてみたところ、宿泊の約7割が登山観光客となり、その約7割が女性でした。つまり、僕の仮説が証明され、アクセスやルートの解決提案をするだけで、年に数百名の山ガールが南アルプスに来るようになった・ということです。

そしてもともと僕のアイデアであった駅前から各登山口に乗り合いタクシーという形はタクシー運転手の方々からもとても好評で、タクシーが動きにくい土日の朝一回で一日分の稼ぎが出る。加えて、この数百名の中から生まれる宿泊リピートの方々は、伊那で前後泊をしていくようになりました。伊那の街で飲んで、語って、ゆっくりと休日を過ごすように。そんな波及も今、現在で起こっていることです。

そしてこのようなことは、日本の多くの自治体がやらかしていることです。
自然を愛していない人、温泉が好きでない人、地元の街には興味がない人。
そんな人々がうわっつらの言葉でPRをしても誰かに伝わったりはしません。そして、その価値がわからずに機会を逸するどころか、その価値をビジネスにしようとする地域の会社や人々の足を引っ張りかねないことすらやらかしているのです。

☆つまりパートナーは誰?というお話

簡単に言うと、私たちを幸せにするパートナーは誰で、そのパートナーの為に私たちは何ができるのか?という話です。

こうした事実(FACT)を示しても未だに理解されないところなのですが、僕がこの南アルプスという一大ブランドをともにつくっていきたいパートナーは、若い世代です。マナーもよく、こうした自分を成長させるポイントにきちんと投資し、ただ山に登るだけではない旅として捉え、そこにお金をつかうことを惜しまずに出来る人々です。

一方、これまでの行政側や古い考え方の人々が見ている顧客は、頂上に行くことしか興味がない人々(いわゆるピークハンター)です。頂上にしか用がないので、夜中に移動し、車中泊で仮眠をとって、コンディションが万全とは言えないのに雨が降ろうが、風が強かろうが、何も見えない頂上を往復する。そして、直行直帰で家に帰る。そんなお金を使わない客です。

なので、こうしたピークハンターとしての習慣を重ねてきた高齢層を変えていくことにコストをかけるのは無意味ですし、行政側が主張する通りですべてが無駄に終わるんです。

だから、顧客ではないパートナーとして関係性を築いていける新しいカテゴリーを耕していく必要があった。そのことを行政側や古い考え方の人々は理解できなかった。そういうことなんです。

というわけで、長くなってしまいすいません。次回に続きます。

*今日のおススメ




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