空気を読んだからこそ、声に出して伝えよう!【フィードバックの第一歩は観察から③】
「一つだけの立場を選んではならない。一つだけの思想を選んではならない。選べば君は、その視座からしか人生を眺められなくなる(アンドレ・ジード)」
どうも、さいさんです。
前回はフィードバックの土台となる「共感」しあう対話の三条件。
・相手の視点(状況、環境、性格といった現在地)を理解する力
・相手の感情を汲み取る力
・相手が本当に求めている事を察知する力
に関して話を進めてきました。
☆ 事例から見る
今回はその続きです。
ここは僕自身もコーチングや1on1セッションで扱うことが多い部分でもありますので、実際の事例をもとに見ていきましょう。
起業予定の女性Aさんとのセッションは「良かれと思っていろんな人がアドバイスをしてくれます。なかでもBさんは勢いづいてしまって・・。私の知らないうちに話が進んだりしてしまったり・・」と始まりました。
この言葉だけでそのまま理解するとBさんが悪い感じですよね。でもこれ、彼女の伝えたい②とBさんが理解した④が違ってしまった典型例なんです。
正しい、正しくないのものさしで測らない。
繰り返しますが、ここは重要です。このようなケースに対し、僕の1on1のお手本でもある世古さんがシンプルにこう伝えてくれています。
「個人に焦点をあてた対話の不足」
まさにここでした。
☆ 対話スタイル
Aさんに限りませんが、起業をする多くの人にはそれぞれの目的があります。なかでもAさんのように起業の背景が「ライフスタイル」や「ソーシャル・アントレプレナー」といった生き方に根差している人。
彼らは、前回(上記リンク)説明しました会話の5プロセスにおいて、人生の設計図からうまれる感情や思考が①にあり、それを実現する為の働き方としての意図や目的が②にあります。
この②が往々にして、今の世の中にはないものであったり、希少なものであったりするので、③の言葉を探しながら伝えている状態です。
一方でBさんはAさんの言葉に対し「結果を出す」という心理バイアスのある状態で聞いています。なので、すぐに「何をどうする」という戦術的貢献をしようとしています。
これは日常的に起こっている事なのですが、Aさんの試みているコミュニケーションが「お互いを理解する為の対話」なのに、Bさんは目標達成に向けたただの「情報交換」になっているのです。
☆ 正しさを心の棚に置け
ここでAさんと一緒にBさんを非難したり、貶めたりする反応が「同感(同一化)」です。「だよね~」「わかる~」といった言葉は「同感」であって「共感」ではありません。
良いコーチやカウンセラー達は、クライアントに必ず「共感」で関わっていきます。その為に課題を分離させ、
・Aさんが本当に伝えようとしている事
・Bさんが本当に貢献しようとしている事
をきちんと俯瞰して、整理していきます。
コーチの役割はクライアントの現在地を感じながらも自分自身を保ち、クライアントの盲点から問いや提案をしていくことにあります。
これが同感ではない真の「共感」であり「フィードバック」の出発点です。
かくしてクライアントは自分自身では気づきにくい③④⑤の情報(盲点からのリソース)をコーチの問いから発見し、活用することが出来るわけです。
こうしてクライアントは、新たな情報から新たな思考を生み出し、その思考から新たな言葉を作れるようになります。
当然、その新たな言葉は相手の反応や周囲への影響を変化させます。
すると、その反応や影響の違いからクライアントは学ぶことが容易になり、伝え方の修正が出来るようになっていきます。この繰り返しで、自分の意図や目的に近づく発信が出来るようになっていくわけです。
このトリガーになれること。
そこにコーチの価値があるわけです。
*「必要な助けを得るための4ステップ」をまとめたこちらの回。よろしければ、あわせてご参照ください。
☆ その結果
このセッションで、AさんはBさんの貢献したいという意思をまず肯定することにしました。そのうえで、Bさんがどうして性急に物事を進めてしまうかを、相手のポジションから見てみました。
すると、Bさんへの仮説を立てていく中で、Aさん自身が八方美人的に振る舞っている自分に気づきました。
自分自身の謙虚さが行き過ぎてしまっていた。
その結果、周囲に「ピンチ」「助けて」と受け取られているのではないかと考え始めたのです。そして、
・自己紹介で「自分の目指す未来像」を語る事
・相談では「自分の目指すライフスタイル」と「相手の役割の具体化」をきちんと言葉にする事
を決めて実行しました。そのうえでBさんにもいくつかのリクエストをしたわけです。その後の結果は、いうまでもないですね。
☆
というわけで、今日はここまで。
次回からは、僕が具体的にどのようなフィードバックをしているのかをまとめていきます。
ではでは!