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日本は親子上場大国?親子上場の利益相反という問題を3ポイントで整理

日本は世界でも例外的に親子上場が多い国です。

経済産業省の資料によれば、上場企業全体の6.1%をいわゆる親子上場が占めています。アメリカはわずか0.5%、イギリスに至ってはゼロですから、日本の親子上場大国っぷりが良く分かります。

しかし、親子上場はその構造上「利益相反」という問題を抱えています。今回はソフトバンクグループ(親会社)とソフトバンク(子会社)に代表される親子上場の問題点を整理します。

1.そもそも誰と誰の利益が相反するのか?

親子上場の最大の問題点は利益相反です。これに尽きます。

では、具体的に誰と誰の利益が相反するのでしょうか。利益相反は、親会社と子会社の少数株主の間に発生します。ちなみになぜ「少数」株主と呼ぶのでしょうか。そもそもの構造として、上場子会社の場合、その株式の過半数を親会社が握っています。ですから、それ以外の株主を少数株主と呼ぶのです。

親子上場とは言いますが、実のところ上場子会社のガバナンス上の問題と言い換えても良いのかもしれません。

2.親会社と子会社のいびつな関係性

上場子会社には、必ず親会社というボスが存在します。ボスの同意なしでは、経営上の意思決定をすることが実質できないわけです。ボスがその気になれば、子会社の社長は簡単に更迭されてしまいます。

例えば、2020年9月に上場子会社だったNTTドコモの吉沢社長が実質的に更迭されたことが話題になりました。記者会見で親会社NTTの澤田社長は、収益性を高められなかった吉沢氏の手腕を正面切って批判しました。

「吉沢さん、ごめんね。ドコモはシェアこそ1位だけど収益は3番手だ」

29日のオンライン会見で澤田社長は隣に座る吉沢社長の経営手腕に率直な疑問を呈した。澤田氏は複数回「吉沢さん、ごめんね」と断りながら、ドコモの状況についての不満を述べた。

親会社がその気になれば、子会社の社長を更迭することも可能なのです。

3.利益相反は親子上場の構造上避けられない問題

本来であれば、上場子会社は株主全体の利益になるように事業を展開すべきです。ところが、親会社という支配株主がいるために、経営上の意思決定がいびつになってしまう恐れがあるわけです。

例えば、親子間でお金の貸し借りが発生するケースを考えてみます。親会社としては、できるだけ低金利で子会社のキャッシュを活用したい、と考えます。そして支配的な立場にある親会社はそれが可能なわけです。

これを子会社の株主の立場で考えてみます。本来なら、投資先企業がビジネスを成長させる為に使うはずだった、または使うことができたキャッシュが、親会社の都合で吸い上げられてしまうことになります。

まとめ

親子上場は構造上、ボスである親会社が子会社に睨みを利かせることができます。もしかしたら、親会社が支配的な地位を利用して子会社を利用しているのではないかと疑念を持たれる余地があるのです。そして、少なくとも親会社が子会社を利用することが出来る構造にあるのは間違いありません。

親会社と上場子会社の少数株主の利益が相反したとき、優先されるのは必ず支配的な立場にある親会社の利益です。ここに利益相反問題があるのです。

2022年4月に予定されている東証の市場再編では、流通株式時価総額という上場基準が設定されます。わざわざ「流通」株式としている背景には、利益相反問題を抱える親子上場を解消していこうという狙いがあるわけです。


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