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「身に覚えのある」記事を読み、「身に覚えのない」謎と、意表のリアクションを思い出した!

凡筆堂さんの「故事ことわざ辞典」の新項目「身に覚えがない」の中の「用例」を読んで、ドキリとした。
「身に覚え」があったから、であーる。

「ねえ色吉さん、上着のポケットに変なものがはいってたわよ。どこの誰とどこで何をどんなふうに何回してきたのよ」
「なんだよ、その、いきなりの、やたら細かい追及は」
「つべこべ言わずに吐きなさいよっ。身に覚えがあるでしょっ」

凡筆堂さん「故事ことわざ辞典/身に覚えがない」より

昭和の吉本新喜劇で夫役のポケットから出てくるのは、キャバレー・ハワイ(懐かしい!)のマッチだろうか。
それくらい問題無さそうだが、奥方の設定は専業主婦で、むしろ経済的側面からお怒りになったのかもしれない。

さて、私の場合、会社員になって2年目ぐらいだったろうか。同期会か何かで3次会ぐらいまで呑んで、12時近くに帰宅した時のこと。
妻に上着を渡したところ、
「あれ、何かしら、これ?」
とポケットから細い鉛筆のようなものを取り出した。
「え、何 ── それ?」
「これは……女のひとの……アイライナーじゃない? ……なんでこんな所にあるの? 私、こんなもの、使わないわよ」
「え……?」

── 絶句した。
その日は確かに複数の女性を含めた何人かで呑み、最後はそのうちのひとりとバーでふたりきりになった。
けれど、残念ながら ── と言うべきか、それだけで、特にドラマはなかったはずだ。

「え……? なんでそんなものが入ってるんだろ?」
まったく「身に覚えがない」《謎》だったが、なぜか酔いが覚めてくる。
妻はどう出るか……。
とにかく、まったく「身に覚えがない」のだから、言い訳のしようもないし……。

その時である。
妻が手にしたアイライナーを高く上げ、
「もうけた!」
と叫んだ。

はは……。
意表のギャグに苦笑いするしかなく、特にそれ以上追及もされず(されても説明のしようがないのだけど)、私は無事、風呂場に向かった。

……それにしても、その後巷間で長く語り継がれることになった(いや、なってないけど)『アイライナー事件』の真相はなんだったのだろうか?

3次会まで一緒だった女性に翌日尋ねたが、
「え? 知らないよ、そんなの」
── 嘘を言っているようには見えなかった。

むしろ、彼女を狙っていた独身男(学生結婚した私以外は未婚だった)が2次会あたりで仕掛けた《罠》だったのかもしれない。

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