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林海象のモノクロサイレント映画『夢みるように眠りたい』;情報が限られるほど想像の自由がある
長く生きていると、自分の成果でもなんでもなく、たまたまその時その場所にいただけなのに、自慢のように語ってしまうことがある。
例えば、『夢の遊眠社』の結成前、まだ学内サークルだった時代に寮食堂で催された演劇『惚れっぽいのは御免だぜ』(たぶんこの題)を生で観たこと。
野田秀樹さんのオリジナル芝居で、軽い身のこなしの野田さんと太ってユーモラスな榊原とつさんのふたりが、舞台狭しと駆け回り、これでもか、これでもか、というギャグの応酬に、観客は抱腹絶倒だった。
永瀬正敏主役の映画『私立探偵 濱マイク』シリーズで知られる林海象監督のデビュー作『夢みるように眠りたい』を公開時に観た、なんてのもそう。
モノクロでしかも字幕の映画なんて ── と思いながらも、逆に物珍しさから映画館に足を運んだ。
マイナー映画なので、若松孝二さんがオーナーだった名駅のシネマスコーレで観たような気がする。
2020年デジタルリマスター版ではなく、1986年公開のオリジナル版で観た、というのが主張点(笑)。
誘拐された令嬢を探す依頼を受けた私立探偵・魚塚(佐野史郎)が、現在と過去の二重の謎を解いていく、という複合構造もよく考えてありました。
モノクロなのはもちろん、舞台となる時代(昭和初期とさらにその30数年前)とその時代に『失われた映画』を描くためでしょうが、「色」は観客側で想像することになる。
字幕なので、僕たちは「声」も想像する。
情報が少ない分だけ、観ている側に想像の自由があるのだ。
なお、この映画には(たぶん)手品師(というより『奇術師』と呼びたい)役で、怪優・大泉滉と共にフォークシンガー・あがた森魚も出演している。
知らない人もいるだろうから、代表作『赤色エレジー』を貼り付けておきます:
こういう歌が大ヒットした時代があったんですね……。
たぶん、この映画より十数年前に、この時代を歌っている、ただそれだけのことで出演者に選ばれたんだろうなあ……。
あがた森魚をインスパイアした林静一の劇画『赤色エレジー』は『月刊漫画ガロ』掲載版を毎月オンタイムで読んだ ── なんて言えばもっと自慢ですが、それは嘘です。
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