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ゼルダの伝説とクランボルツの計画的偶然性と僕たちの人生と


こういう流れの中で、50歳を過ぎると不思議なことが起こってきます。
これまで関係ないと思われていた人生のいろいろな出来事や人間関係が、
実はある種の必然性で結びついているように感じることがあるのです。
      ―――佐藤優(『40代でシフトする働き方の極意』)



▼▼▼ゼルダができない▼▼▼


『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』を買った。
発売日に買った。
でも、まだ始められずにいる。

始めたら「終わり」だからだ。

始めてしまったら最後、
僕は半分現実の世界、
半分はゲームの世界に身を置くことになる。
いや、30%現実の世界、
70%をゲームの世界で生きることになる。

それぐらい没入してしまうことが約束されているから、
軽い気持ちで始めることができないのだ。

『ゼルダの伝説 ブレス・オブ・ザ・ワイルド』に出会ったのは、
たしか2017年ぐらいだったと思う。

10年前に鬱病を発症し、
2年間まったく動けなかった。
そのときに、大学生以降はまったくしなくなっていた、
据え置き型のテレビゲームを17年ぶりぐらいに触った。

僕の「ゲーム遍歴」は、
スーパーファミコンでストップしていた。
『ドラクエ6』でストップしていた。
高校まではゲーム大好きだったのだが、
大学に入ると十勝の自然の美しさが
ゲームどころでないほど魅力的だったので、
一人暮らしの部屋に持って行ったスーファミも、
売るか人にあげるかしてしまった。
同世代がけっこう通過しているプレステも通過しなかった。
だから『ファイナルファンタジー7』もやってないし、
『ドラクエ7』も、『パラッパラッパー』もやってなかった。

鬱の期間に17年ぶりに買ったのは、
7,000円で買った中古のプレステ2だった。
ハードの世代をいくつもまたいでいるから、
もうそれは衝撃だった。
ゲームはここまで来てたのか!

僕が鬱になったのは2013~2015だから、
そのころは本当はプレステ3の時代で、
ハードでいうとひと世代前なのだけど、
浦島太郎の僕には十分衝撃だった。

鬱病の症状に希死念慮とか強い自罰感情とかがあるから、
起きている間、ずっと「お前なんか死ねば良い」という声が聞こえる。
これは考え方でどうにかなるものではない。
病気の症状だから。
統合失調症の幻聴と同じで、
消そうとすればするほどに聞こえる。
大事なのは「それについて考えないこと」なのだけど、
鬱病でエネルギーがまったくなくなっているときに、
何かに没頭するのは難しい。
仕事はできないし、活字が頭に入ってこない時期もある。

そういうときに見つけたのが「ゲーム」だった。
鬱の人が盆栽とか絵画とかジグソーパズルとかするって、
聞いたことあったけど「こういうことか!」と思った。
そうなのだ。
何でも良いから没頭できるものがあると、
その間「死に神」が黙っていてくれるのだ。
自罰感情の無限ループが止まってくれるのだ。
脳を麻痺させてくれるのだ。

同じことをアルコールやパチンコでやるより、
テレビゲームでやるのは100万倍良い。
肝臓やお財布を痛めつけない。

カウンセラーにも「それは良いですね」とお墨付きをいただき、
かくして僕は鬱の2年間に、
周期的にゲームに没頭することとなった。




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