マガジンのカバー画像

写真史の稀書・奇書・寄所

9
運営しているクリエイター

2020年6月の記事一覧

写真史の稀書・奇書・寄所(9)前編ー『芸術を学ぶもののための自然主義写真』初版

写真史の稀書・奇書・寄所(9)前編ー『芸術を学ぶもののための自然主義写真』初版

  海外で調査をしていくなかで、イギリスでは何度か苦いおもいをしたことがある。あるときは最悪といっていい調査旅行だった。

 パリ北駅からユーロスターに乗ってロンドンはセント・パンクラス駅にむかう。北駅1階(日本でいう2階)で出国すると、そのすぐ先にイギリスのイミグレーションがある(つまり、パリのユーロスターのホームはイギリス)。

 入国管理官に「なんのための渡航か?」と聞かれる。「研究活動だ」

もっとみる
写真史の稀書・奇書・寄所(8)ー『A History and Handbook of Photography』

写真史の稀書・奇書・寄所(8)ー『A History and Handbook of Photography』

 本の佇まいに直結する装丁を見ていくのも、稀書を収集する上でのたのしみだ。19世紀のなかばのフランスとイギリスを例にとって比べてみると、フランスではほとんどが革装丁またはコーナーと背だけ革の半革装がおおい。

 というのも、フランスでは本はカルトナージュと言われる暫定的なペーパーバックとして売られ、購入者は自分でルリユール(装丁家)のところにもっていって装丁をしてもらう。つまり、おなじ本でもおなじ

もっとみる