観るのがあと2年くらい早かったら崇拝しかねなかった悪魔の映画 『花束みたいな恋をした』
筋トレ中にワイヤレスイヤホン片っぽ落としてぶっ壊してから、もうステレオだのモノラルだのLだのRだの死ぬほどどうでも良くなってる。好きな言葉は、広告スキップです。
放映後、日本の大学生の恋愛観を総アップ(あるいはダウン)グレードさせたと言われるエモ邦画、『花束みたいな恋をした』。
放映当時の俺は大学2年の終わり頃。大学3年の最初の登校日に会った友達が、みんな揃ってジェネリック菅田将暉の様相を呈していたことを思い出すと、この映画が大学生に与えた影響って半端じゃなかったんだと思う。
それから実に3年。観るのがだいぶ遅くなってしまったけど、なんというか、大学在学中に観なくて本当に良かったと思う。
明大前駅で終電を逃した大学生の麦くん(演・菅田将暉)と絹ちゃん(演・有村架純)。2人が終電を逃して立ち寄ったカフェで、遠くに座る押井守(演・神)の存在に全く気づかない男女と同席する。そこで
(映画マニア自称しといて、え?『ショーシャンクの空に』? ですか?笑 出た出た。大して映画観てない素人が名作に挙げるヤツね。んでアレでしょ?『ニュー・シネマ・パラダイス』とかも好きなんでしょ?どうせ)
みたいなキモすぎる思想で意気投合。
俺は『ショーシャンクの空に』を名作に挙げたくらいで映画通ぶってる奴、を馬鹿にすることで通ぶってる奴は全員痛い目に遭えばいいと思ってるけど、そんなささやかな願望をよそに2人は恋に落ちていく。
好きなカルチャーが似通った2人だったけど、やがて社会の荒波に呑まれて心はすれ違いはじめる。
「ポップカルチャーに迎合しない俺」を演出していた麦くんの数限りないサブカル趣味も次第になりを潜めて、パズドラとかいう死ぬほどメジャーなアプリゲームの、ヨグパーティとかいう死ぬほどメジャーなパーティで、光2コンボ324倍の火力を敵キャラに叩きつけることしかできなくなっていく。
俺はそんな麦くんの姿を見ながら、来年4月から始まるであろう社会人生活に震えるのであった。。。
いいんですよそんなことは。そんなことよりこの映画全体から匂う「俺はお前ら一般人と違ってサブカルチャーに対して教養があります」みたいな逆張りスタンスが大学時代の俺とかぶって全身痒すぎるんですよ。
誓って言うけど俺は高校生の時からきのこ帝国もフレンズも好きだったし、夜に散歩に出かけては必ず聴いてた。カラオケ行った時はちゃんと「クロノスタシスって知ってる?」の「知ってる?」でマイク向けてたし、歌い終わった後はその派生で「○○って知ってる?」って聞いて「知らない」って言わせて、「○○のことだよ〜」って答えるマジでキモすぎるノリやってたからね本当の本当に。
あとフレンズは一人二役で歌ってた。ひとりで。
これは予想でしかないけど、この2人ピチカート・ファイヴとかサニーデイ・サービスとかも好きだぞたぶん。
なんでお前らが知ってんだよ。麦くんと絹ちゃんだけじゃねえよ。お前らだよお前ら。なんでお前らも知ってんの。『NIGHT TOWN』歌ったときに「お、花束じゃ〜ん笑」ってニヤニヤされた時の屈辱を俺は絶対忘れないからな。俺しか知らないと思ってた、ずっと大切にしてた歌が、『花束みたいな恋をした』観ただけでサブカルに酔っちゃった浅い奴らに認知されて、コメント欄も「花束から来ました」だの「元カレを思い出す」だので埋まってて。
元カレ思い出して泣くな!
『NIGHT TOWN』はもう付き合ってるようなもんなのにほんの一歩が出せないっつうもどかしいきゅんソングなんだよ!
映画観たくらいでフレンズまで分かった気になるな!!クソがっ!!!!!
って言いたいところなんですけど、っていうかもうちょっと観るのが早かったらまさにこういう記事書いてたと思うんですけど、もうそういうのダサいと思う歳になっちゃったんすよね。
大学生当時は「みんなが知らない曲聴いてる自分」に酔ってたけど、今は1周まわって髭男とかbacknumberが好きだし、そうやって通ぶってるのクソダサいっつうか。
言わば、大学時代の俺は『ショーシャンクの空に』で通ぶってるニワカ映画ファンを小馬鹿にする存在で、今の俺はそういう痛い映画ファンをさらに上から哀れむ存在。
大学出て、いろいろ大人になって、逆張りがダサいってことに気づいちゃったんすよ。
『鬼滅の刃』の影響で声優がちょっとブームになったとき、「みんはや」とかいう早押しクイズを自作できるゲームで声優クイズつくったんすよ。そこで『鬼滅の刃』観たくらいで声優知った気になってるクソガキをおびき寄せて、俺しか知らないようなコアな声優を問題に出して、誰もまともに答えられない哀れな姿を主催者として酒飲みながら観察するっていうカスみたいな遊びをコロナ期間中ずっとやってたんですよ。
もうやめません?そうやって「俺しか知らないカルチャー」で自己を確立するの。
ファミレスで麦くんと絹ちゃんに「二股のイヤホンを2人で片耳ずつ分けて聴くことがいかに無意味か」を熱く説く男が出てきた辺りが恥ずかしさのピークでした。
たまたま菅田将暉と有村架純に向けて言ってないってだけで、俺も友達に似たようなことしてましたもん。ほんっとに恥ずかしい。
この映画を観れば観るほど、大学時代に誰も知らない趣味でニヤニヤしてたこと思い出して枕に顔埋めたくなるからもう観れない。「2人の関係性がリアルすぎて、しんどくなって観れない」みたいな感想よく目にするけど、そんなの俺のいたたまれなさに比べたら些細な問題すぎるだろ。
言っちゃ悪いけどこの映画観て別れる決意を固めるカップル、些細すぎるぞあまりにも。
ぶっちゃけ俺もその検証をしたいがために今まで観れてなかったわけだけど、「菅田将暉の顔、よくね?」って言い合って終わったわ。
そんなことよりフィルムカメラ風のフィルターとかかけてインスタのストーリーあげてた大学時代とかを思い出す方が2億倍しんどいだろ。もう別の理由で別れたくなるわ。恥ずかしいから1人にさせてくれ。永遠(とわ)に。