022 『さゐしゅうめんせつ』【ショート小説】
深作藩主、五藤永助が自分を見つめていた。眼前に強い気を感じる。
「名は」矢のように通る鋭い声。
「筒井定吉と申す」
凛とした声だ、と急に褒められ動揺する。「入藩したいと思った由は?」
刹那、幾度も繰り返した文句が飛ぶ。何故か突いて出たのは「……五藤殿に憧れて……」だった。何て幼稚な。
「数奇者じゃの」顔は満更でもなさそうだ。
「どうして鞍替えしようと思ったのじゃ?前の藩でも良いであろう」
前の仕官先の名を言うと、合点がいったようだ。
「ソコは軍を派遣吏員で固めたり、俸禄も『