【インタビュー】デザイナーを辞め、本屋を立ち上げた。
はじめまして、サラリーマン3年目のしゅうまです。
昔から人の働く姿や何かに没頭している姿に憧れていて、プロフェッショナル仕事の流儀や7ruleは毎週録画、最近は「夢中なあの人に会いに行こう」をテーマに何かに没頭されている方にインタビューする活動をしております。
本日は、先日インタビューをさせていただいたグラフィックデザイナーから書店主へと転身されたSNOW SHOVELING 中村秀一さんのお話を、お裾分けさせていただければと思います。
— SNOW SHOVELINGはどんな場所なんですか?
なるべく自分でそういうのを規定しないようにいるんですけど、だからすごいいじわるな回答をすると普通の本屋ですって言っています(笑) わかりやすいパンチラインがあったほうが人には伝わりやすいと思うんですけどね。創業当初は自分でキャッチコピーを作って遊んでたんですけど、ロマンチックでボヘミアンな本屋とか、あとは出会い系本屋とか。でも今はなんとなく意見や感想はその人に委ねるっていうか、自分で言うよりは、人が思ったほうが正しいと思っているので、大げさに言うと勝手にしあがれだと思ってます。
— 中村さんは元々グラフィックデザイナーだとお伺いしているんですが、SNOW SHOVELINGをやるまでの経緯をお伺いできますか?
20代後半にフリーランスのグラフィックデザイナーとして独立して、それなりにうまくやってたんですけど、3年ぐらいしたらややバーンアウトっていうか、ちょっと先行きが見えなくなったんですよね。あとリーマンショックで同僚がバタバタと倒れいくのを見たときに、自分は大丈夫だったんですけど、けっこう危うい世界にいるんだなという体験をして、かつ自分は受注産業よりももっと自分を前に出せるところで活躍したくなっていたんですよね。クライアントを喜ばせるよりも、自分の意見が強かったんですよ。そうすると相手に納品するものでも、こっちの方がいいのにと思いながら相手に寄せると、自分が傷つき、それが続くと、この先ずっとやるのは無理かもしれないなって思ったんですね。そうなったら何したらいいんだろうと思ったら、単純に自分発信で仕事を作っていかなきゃダメなんだなっていうふうに、ぼんやりと入口なのか出口なのかが見えてきました。その状況で自分発信で何ができるかを考えると、単純に自分のライクやラブみたいことじゃないとサステナブルではないと思ったんですよ。自分はサッカーとアートと本が好きだったんで、例えばサッカーだったら、スポーツジャーナリストとか、アートならギャラリストとか、本なら自分で本屋をやってみるみたいなのが思いつきました。本当に幼稚園生レベルのライクで一旦三つ出して、一番現実的で、かつ自分がそれを妄想をした時に、どんどん自分で思いつけていけたのが本屋だったんですよ。もしも、私が本屋をやったらってなったときに、じゃああれをああして、これをこうしてみたいに、わりと自然に湧いてきたので、じゃあ、いったん本屋をやってみようというのがスタートでした。
— もしも私がっていう発想方法はすごく面白いですね。最初、本屋をやってみようとなった時に何からされたんですか?
何からしたんだろう...具体的にはバックグラウンドでお話すると、10代後半20代に旅人ごっこをしていて、何か国内外を金と時間があればいろんなところへ行くという活動をしていたんですね。いわゆるバックパッキングでお金がそんなにないので、金のかからない場所って公園と本屋なんですよ。あとはパブリックミュージアムとかです(笑) そんな理由で結構いろんな街の本屋に行ったりしてたんですね。普通に本が好きだったっていうのもあるんですけど、そういう理由で本屋に行ってるうちになんとなく分析的に本屋を見る癖がつくいていました。そういうデータベースがあったから、いざ自分が本屋をやってみるってなった時に素材が揃っていたんですよ。あと自分がデザイナーで、割と手を動かせば具現化できる状況だったので、そういうのも本屋をやるときにすごい活きたって思いますね。
— 中村さんのそれまでの好きが蓄積されていたんですね。本はもともと家にあったものを売るところからスタートしたんですか?
そうです。最初からのこの店舗を構えました。勇気がありますねってよく言われるんですけど、全然勇気とかじゃなくて、腹くくるというとややマッチョなんですけど、単純にやるしかないって思ってたんですよ。やるしかないって思った人って多分熱源は勇気とかじゃないんですよね。自分に対する使命感とかなんですよね。いったんこれをやるという状況にしたら、勇気よりも好奇心とかが勝ってましたね。
— 最初始めた時からお客さんはいらっしゃったんですか?
2012年の9月9日にオープンしたんですけど、来た人たちは僕の直接の知り合いと僕のTwitterを見てくれてる人たちがちらほらでしたね。やや自意識過剰なので、いわゆるグラウンドオープンみたいなのは嫌だったんですよ。お花をもらうとか(笑) あとはたぶん自信もなかったんですよね。自信があったらグランドオープンやプレスリリースを打ったと思うんですよ。でもそういうのをせずになんとなく試し打ちみたいに始めましたね。
— そうなんですね。なんか自信がなかったというのは意外でした。
本屋に関してはなかったですね。本当に書店勤務やバイト経験もない状態から始めたほんとに素人のお店だったので。そういう意味では、なんとなく近い人から来てもらいたいという、心の弱さがあったと思うんですよ。
— 最後の質問です。ストレートに、没頭を見つけるにはどうしたらいいですか?
すごいシニカルな答えになっちゃうんですけど、探さない方がいいですよね。これはあるニーチェは、「汝(私)の立つ処深く掘れ、そこに必ず泉あり」って言っているんですよ。結局、僕もそういう経験があるんですけど、何かになりたいとか、外に探しちゃうんですよね。それこそ自分の理想的なペルソナを探しちゃう。そういう時期はあっていいと思うんですよ、特に10代20代とか。多分そういうペルソナを取っ替え引っ替えして、たぶん自己が形成されていくんですけど、でもおそらくはその人以上にはなれないじゃないですか。だから自分になるしかないんだと、なんとなく気づいたんですよ。自分になるにはどうしたらいいんだろってなったら、ホントに外は探せないんです。内側にしかないから。だから単純に没頭するにはどうしたらいいかって質問は、そんなことを求めないほうがよくて。じゃあ何したらいいかっていうと、たぶんもっと自分の状態をよくしておくこと、自分の機嫌を良くしていくこと、自分に余裕を持つこと、あるいはおいしいご飯を食べること、好きな人としゃべると、好きな人とボディタッチをすることという環境さえ整えておけば、何かに没頭しやすくなる。そうすると、何かが入って来た時に自然な反応が起こって、こんな素敵なものがあるんだとか、これっておもしろいかもという風になっていけると思うんですよ。でも自分が弱っているときって、外に探してそれを勝手に運命とは感じちゃうんです。一生のヤツ見つかったとか思っちゃうん。でも自分が弱っていたら、勘違いなんです。自分の状態がよくないと、感受性とかジャッジみたいなのが鈍るんですよね。西洋医学的な対処療法になっちゃって、東洋医学的な根源療法にはならないんですよ。根源療法でいうと、いわゆるQOLあげるとかじゃなくて、自分がまず健康でいるっていうのが多分一番大事ですよね。
— あー、面白い。確かにそうですね。ついSNSなどを通じて対処療法的な情報に目が向いちゃいますよね。ずっとSNSを見ているので、脳も疲れているので万全の状態ではないですよね。
だからサ活とかはソーシャルメディアとかを遮断して何もしない時間を過ごせるからいいなと思いますね。
ー すごく勉強になりました。本日はありがとうございました。
最後に
フルバージョンは、こちらに収録させていただいておりますので、お時間のある方はぜひご視聴ください。中村さんの人柄が、じんわり伝わってきます。