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やっと私も大人になった

電車の中。
前の席に座る老夫婦。年齢は80代くらい。
特におしゃべりをするわけでもなく、静かに座っていました。

終点の駅に着きみんながゾロゾロと降り出した時、女性の方が少し遅れてしまいます。
そのことに男性は気づいていません。

女性は「待って」というように手を伸ばし、急いで駆け寄ります。そして、男性の腰のあたりの服をキュッと掴んだのでした。

その後、改札を出る時は逆に女性の方が先に出てしまい男性が遅れます。

すると女性はそれに気づき、振り向いて、男性を待っています。男性が出てきたところで、二人は並んで歩き出したのでした。

昭和の夫婦の姿なのでしょうか。
男性の方がちょっと奥様である女性よりも年上にも見えました。
女性は男性に寄り添い、男性はそれには気づいていますが、特に女性に優しい言葉をかけることもなかったのかもしれません。

でも、最後に二人はちゃんと並んで歩いて行きます。
やっぱり、二人がいいのです。
長年一緒にいて築かれた信頼関係と一緒にいる安心感は何にも替えられないはずです。

そんな後ろ姿を眺めながら、私は彼との待ち合わせ場所に向かっています。

彼は駅のホームで私を待っていてくれました。
彼はいつも私のことを気遣ってくれて、歩幅を合わせて一緒に歩いてくれる人。もし私が遅れそうになったら、私の手を握って離さないでいてくれる人。私の手を握りそびれてしまって私が遅れたら、振り向いて私を待っていてくれる人。

パートナーとの関係は人それぞれだし、時と共に変化して行くのだと思うけれど、私もあの老夫婦のように、どんなことがあっても最後は二人で並んで歩くのがいいと、お互い思える関係を築きたい。

彼を見つけエスカレーターに乗ると、前には先程の老夫婦がいました。

上がりきったその先の二人を見ていると、やっぱり男性がスタスタと歩いていきます。後ろを追いかけるように歩く女性。

ちゃんとどこかで足並み揃えて歩いてほしいなと思いながら、その老夫婦を目で追いかけてしまいました。彼はよそ見をする私の手を握りながら、ゆっくり歩いてくれています。

老夫婦から視線を外して、手を繋いでくれている彼の横顔を見て思いました。

やっぱり、追いかける必要もなく、初めから手を繋いで横並びで歩いてくれる人がいいな。

もし、手を繋がないで歩く時は、行き先を分かり合っていて、間違いなく同じ方向に歩いて行く。
そして前を向いているけれど、お互いを気にかけながら足並みを揃えて進んで行く。

お互いを思いやり、大切にしながら進んでいきたいものです。

若い頃の二度の結婚だって、相手を思う気持ちはあったのだと思うけれど、いつのまにか見ている方向が違ってしまっていました。そして気がつけば随分一人で歩いていってしまい、軌道修正できないくらい離れてしまったように思います。

この年になってやっと、上手に、行くべき方向をお互いにすり合わせができるようになってきたのでしょうか。無理なく寄り添い合えるようになってきたのでしょうか。

若さゆえできなかったことなのかどうかはわからないですが、少なくとも今は自然な形で寄り添い合う関係を築ける大人になったということです。

そんなことを感じた、週末のひとときでした。


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shu_kozoo
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