高校の頃に書いた詩の供養

 パンクロック
                

避けて避けて避けてえええとワタクシ自転車に乗ってカステラ頬張りアラスカどこすか小僧なかなかやりおるわ
それでまあ小田急線の改札にいた木綿豆腐を盗んだ小悪党の再婚の顛末などどうでもいいのであって暑さをどうにかこうにかならないと気が狂うときが来るう
今朝の新聞にはとっくに火を放ったのであるからキャンプには線香花火しか残されていない悪く思うな
奥様お買い得ですわ奥様本当にお似合い奥様出来うる事なら跪いて豚細切れ肉を生のまま下さいお願いします住所氏名電話番号を明記の上こちらに欲しいプレゼントを選んでください高枝切りバサミと安眠枕を持って当社営業部の山田が半裸でお送りいたしますねお待ちどうさまですピザ屋という生命体です
おい、お前は虹を見たのか
奇麗とか美しいとかでなくて感覚的感情的感傷的じゃないゴム人間ラバーマンにはなれない特に理由なく軒下で僕は雨上がりを待っていた
雨が止む頃には君にメールしようと思った
中途採用の家庭菜園だが愛は持ち合わせている少なくともキュウリとは良好な関係を維持した大王はシェフの気まぐれサラダを所望する壮年だがいつになく興奮している
収穫収穫収穫収穫収穫収穫収穫収穫収穫収穫
ふはっはあぁあああああんんんん
良い気持ちでしょうそうでしょうルイ王朝の頃より語りつげられる達成感ドラム小僧御用達の吞み屋の店員とランデブー決める風船おじさん今どこにいる
おい、お前は虹を見たのか
見たとも
君の町の隣の空の下の湖まで遊びに行きたいけれど人間は入っては行けないから君と僕とクッキーは遊べないねそうだね
土曜日曜買い物客だらけの池袋東口の夜空は異様に筋肉質だけどこんなにも鮮やかな色したキュウリの花が咲く
乾杯しよう地球へ都電の植え込みの掃除しているボランティアへ独特な販売促進ポップを拵える書店のお姉さんへ高円寺阿佐ヶ谷間の高架下のアスファルトの窪みに落ちているビー玉へ横浜山下公園カップルのソフトクリームが流れ出す方向へ陽光と孝行へ忠実なバスダイヤとシルバー無料パスへ神田神保町を散歩している陸亀へそれを見ている法被姿の小学生へ塩素臭いプールサイドへ「泣かないで」と「どうしたの」へ
まあ焦る事は無いよ今にも溢れ出しそうな涙を流しても良いと思う



 パンクロックさよなら
              

枯れた井戸には用はないと笑顔で話すあなたが僕は好きだ。たくさんの兵隊が新宿三丁目の交差点で交尾をしている、今朝のグレープフルーツの酸味が口に残ったままだ。透明でありながら僅かな臭いを感じさせて飛行して行く春は僕らが花見をした公園のことに違いない。今朝の朝日新聞の一面に出ているだろう? 春について、つまびらかにすることは躊躇われる。ソワレのあとに口ずさむ幼少期の流行歌のようなものだからだ。Fに恋をしていた。Fとは春のことだ。山手線がたいして加速もせずに隣駅に着く頃、乳母車に乗った子供の眉にもたらされたひかりを感じてからずっとFに恋をしている。あなたは無邪気で無防備なまま変わらないとつぶやく。思っていたよりずっとキレイな駅でそれが堪らなく嫌でなにより恥ずかしい。喉が渇いた。喉渇かない?

銃痕は鮮やかだ
傘の膨らみのなかに
たっぷりと愛を鳴らして
そのあと逢うはずだった
行方を眩ましたのは僕だけれど
情けない小銭入れを取り出して
七年住んだ部屋を出ていた
白くちいさな部屋の窓から
旗を振る人たちが見えて来る
同級生の魚屋だ

自転車に乗って街へ向かえば僕がいなくても世界は確かに回っていてそれが僕にはとても嬉しかった。雑貨屋もカフェも古本屋も集う人、店主、そして建物にさえそれぞれの生が息づいていて変わらない日々がここにある。けれど、日々は永遠ではない。やがて少しずつあるいは突然に消えるように変わっていく僕も街も。僕にはとても嬉しかった。

それじゃあ、こうしよう。僕はやがて都市になる。永遠ではない。僕もいつかは年老いてさ君のところに行くことになるだろ? そのとき爺さんみたいになって会いたくはないね。都市となって再び君に会おうよ。君の足元を君の一歩前を柔らかく照らしたい。夜のひかりとは記憶のことだ。僕らはもがきながらひとつの立派な爆発物をこしらえてしまった。「若さ」や「思想」や「時代」なんてどうでも良いことばに閉じ込められないちいさく強烈な爆発物を。誠実に狂いながら爆発物に点火をした、次々とひかりの束が溢れ出てくる。その一つを君は指で摘んで部屋で育てた。今朝、芽が出て、七色だった。

殴るような音を奏でたことはあるか?
あるいは、
音で殴られたことはあるか?

南青山のギャラリーで僕らは気の触れんばかりに笑っていた。「三階にはレストランがきっとある」と君が言ったからだ。すこし肌寒い日だから三階にレストランを造った。三階を持つ建物そのすべての三階に。

燃えたあとに残るものを
すべて灰と呼ぶなら
僕は灰ではない
まだ人間だ
僕はいま心から
感謝している


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