最近作った短歌です。「何をお前は知っている」

滑稽なおとこ器用にバルーンをつなぎ此処らの鳩を手招く

アーケード街から左に逸れてゆく足が自由に辿り着くまで

賽の目に生姜を刻む朝は過ぎこれは前戯かキュビスム展へ

蜜と飛行機みなそれぞれに寂しくてアンドレ・ブルトン『シュルレアリスム宣言』

私には私などなく銀座線座って手繰る後藤明生

ガリガリくんも社ではガリガリ課長なのか飲むために飲み酔うために酔う

ニトログリセリンを一つ机上に配置して三半規管にあとは任せろ

羊羹は親のかたきのごと甘く恨みつらみは口の端にでる

ショー・ビジネスたっぷり辛子をつけながらわ、わ、辛いですねと言えば寂しさ

一ミリも評価しないと言ったあとミリミリと鳴る脳のおかしさ

ザンギエフのような男と節税の話を交わし龍土町ゆく

てめえが馬鹿だからをそういう考えもありますよねと直し驟雨の銀座を走る

馬鹿に馬鹿と言えばこちらが馬鹿になる六本木で食う飯のまずさよ

速報と臨時ニュースを比較して善哉に振る粗めの塩を

五貫ほど寿司をいただき繰り出せば嫌だな東京がローマ字になる

多数決の結果の街と諾えば築80年が廃材となる

寿司鰻蕎麦天麩羅を繰り返し神田あたりで笑い死にたい

凹凸のない都市になる寂しさよナメック星にクリリンとゆく

東京の何をお前は知っている月が出るまで蕎麦湯を飲んで

宝石と羽毛あります。いや、しかし、即きすぎている浅草は雨

フェラーリのラリのあたりを信じたい天現寺から高輪へゆく

タワマンと聞けばシャネルズを思い出すあれはクワマン・桑野信義

やなもんはやだから嫌だ貴様らはパンダを赤に塗れというのか

踊りつつ殴り倒すの選択を探して三十路の門を出てゆく

江戸っ子の末裔という怪しさよ向かいはむかしローソンだった

醤油より醤油より醤油よりそのために悲しみばかり見えて

論文に脚韻をひそませてゆく「た」の拡がりを海に喩えて

「が」から「は」へ変えて査読をされてゆく論文を子に喩えれば地獄

やや緩い瓶の蓋にも近代の超克という使命はあった

ヤバい奴はだいたい中央線に住む黄金色の傘振りかざし

アブドーラ・ザ・ブッチャーことばの響きからやさしくなれるまじないでしょう

職位が上の奴から殴るすばらしい僕はあなたをそなたと呼ぼう

そうなんだ。ただ寂しくてタルトだけ焼いた人生、そうなんだ。焼く。

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