【パブリッシャー事典】見たことないゲーム求む!なんでも屋な中国パブリッシャー/Astrolabe Games
クリエイターの皆さまに、参加パブリッシャーについて知っていただくことで、マッチングの一助となるべく始動したインタビュー企画「パブリッシャー事典」。各パブリッシャーの特色や得意なこと、目指す姿などをお伺いしていきます。
今回は中国のパブリッシング会社、Astrolabe Gamesの諸葛さんにお話を伺いました!
「Astrolabe Games」ってどんな会社?
ーー本日はよろしくお願いします! まずは会社の概要を教えてください。
Astrolabe Gamesは、2021年に中国の上海で設立したパブリッシング会社です。
本拠地は上海にあり、カナダにも支社があります。
規模としては十数名程度の新パブリッシャーです。
ラインナップをご覧いただければわかるかもしれませんが、パブリッシングタイトルの8割以上は欧米系の開発会社の作品です。
そのため、言語だけではなくタイムゾーンの都合でも、よりサポートしやすい環境を整えるため、カナダ支社を設立しました。
全員がもともとソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下SIE)上海のメンバーで、全員中国人です。
中国の市場では、コンシューマーゲームよりもソーシャルゲームが流行っていますが、我々はあえてコンシューマーゲームを主軸にしています。
自分たちは小さい頃コンシューマーゲームが大好きだったので、そうして影響を受けてきた我々が、世界中のみんなに受け入れられやすいコンシューマーゲームをパブリッシングすることには、意義があると思っています。
より多くの開発会社と組んで、一緒に面白いゲームをパブリッシングできるように頑張りたいと思っています。
今Astrolabe Gamesが扱っているタイトルは、AAAタイトルに比べると規模は小さいものの、多様性は十分あると思っています。
少し変わったゲームや、ぱっと見でも面白いゲーム、雰囲気を重視するゲームなど、様々なゲームをパブリッシングしています。
ーー元々SIE上海にいらっしゃったとのことですが、そこから会社を立ち上げたきっかけなどはありますか?
私は元々、SIE上海が取り組んでいた中国国内のインキュベーションプログラム「China Hero Project」の担当でした。
こちらは、中国の小規模なデベロッパーに対して、ゼロからゲームが完成するまでサポートするプログラムです。
私は2016年から2022年までの6年間で『フィスト 紅蓮城の闇』や『ANNO:Mutationem』といった中国発タイトルのサポートに携わりまして、当時のノウハウを今の会社でも活かしています。
当時の中国には、完全にコンシューマー向けのパブリッシャーというものがほぼありませんでした。中国の企業はスピード重視のため、長期的な目線が必要なビジネスは歓迎されにくいんです。
一方で、私はSIEにいたこともあり、多少日本系の企業とやり取りした経験があったため、スピード感と長期的な目線を両立させる新しい会社を設立した方がいいんじゃないかな、という思いで立ち上げました。
これまでのパブリッシュタイトルは?
ーーでは、これまでパブリッシュしたタイトルを教えてください。
代表作としては、最近発売したばかりの『シャンハイ サマー』ですね。
中国では、中小規模の開発チームが直面する難題はとても多く、例えば大手にとってはごく普通の資金調達も、小さな会社では難航します。
この資金は、ゲームの品質とボリュームに直結しますよね。
『シャンハイ サマー』は、そんな中でも高い完成度を実現している作品なのですが、その理由のひとつとして、デベロッパーが全てを投げ打って開発したゲームである、というのがあります。
このタイトルは、実は一度頓挫しかけた時期があったんです。
当時は開発会社ではなく同人サークルのような形態だったんです。
当時は弊社も立ち上がって間もない時期でしたので、資金も影響力も何も足りておらず、獲得したいタイトルも大手に取られてしまっていました。
そういった、お互いにあまり選択肢がないような状態で出会いました(笑)
契約後、作品に対するリクエストをいくつか出したんですが、なかなか前に進まなかったんです。
そこで弊社のプロデューサーが入り、ストーリーに手を入れ、キービジュアルや作品の刷新を行うことにしました。
ストーリーについては、元々あったエンディングはそのままに、文法やわかりやすさの部分を主に調整しました。
最後のQAやローカライズもしっかりと進めて、なんとか商品として納得のできるクオリティに仕上げることができました。
また、ロンチトレーラーの制作も弊社が担当した作り上げたものです。
希望が見出せそうにない状況でも、時間と愛情をかけて工夫して、プロの職人として諦めずに努力をすることで素晴らしいものに仕上げられる、ということを改めて感じました。
まだ実績やリソースが足りない、聞いたことないパブリッシャーやデベロッパーでも、大物になる可能性が必ずあります。
私がパブリッシャー業務をやる中でも、一番やりがいを感じる部分ですね。
会社として得意なこと、サポートできること
ーー続いて、会社として得意なこと、サポートできることを教えてください。
中国圏、欧米圏でのマーケティングやローカライズは得意ですね。
ただそれだけではなくて、基本的に何でも屋でいようと心がけています。
個人開発者や小規模な開発会社は、常にいろんなリソースが足りていない中で開発を行っていると思います。
ですので、パブリッシャーの仕事は限定的なものではなく、その開発会社が本当に求めていることを見極め、それに合わせてサポートしていくことが重要だと思っています。
サポートはもちろんチャリティーではないので、同時にビジネスの条件が成立するかを考えることも重要です。
そうしたバランスを取りながら、連携して効率を高めて開発を進めていけるところが一番の特徴でしょうか。
サポートの具体的な内容ですと、『シャンハイ サマー』ではストーリーの調整、キービジュアルの作成、トレーラームービーの作成などを行いました。
それ以外では、国内に弊社の知り合いのサウンドスタジオもあるので、音楽のサポートもできます。
また各国のローカライズもサポートしていますが、その際には「日本語なら日本の会社や役者」というように、必ずその国の会社や個人と手を組んでいます。
あとは、知名度が低いゲームエンジンで開発されたゲームの移植もサポートしています。コンシューマー機向けの移植が困難なゲームエンジンで開発していたとしても、弊社内に優秀なエンジニアがいますのでお任せください。
ーーなるほど、ありがとうございます。得意な言語圏は中国、欧米、あとは日本語になるのでしょうか?
得意な言語圏としては中国、南米、イギリス、アメリカですね。社内やパートナー間で主に使われている言語は英語です。
日本のタイトルを取ったとしても、言語の観点でケアしきれない可能性があるので……。今は英語や中国語が話せるところが主になっていますね。
今後パブリッシュしていきたいタイトルは?
ーー今後パブリッシュしていきたいタイトルはどんなタイトルでしょうか?
タイトルを見つける時に重要視しているのは、やはり「ジャンルより面白さ」ですね。
年々出るゲームが増えていると思いますが、その中の9割以上が、昔出た有名なゲームの再現品、模倣品だと思っています。
どういうゲームが面白いかを一言で言うのは難しいですが、その中でも「見たことがない」という新鮮さが重要だと思っています。
シナリオ、ビジュアル、メカニズムなど、どこかに「自分ならではのもの」があるといいなと思います。規模や制作費用は関係ないです。
あとは、制作チームの執念があるといいですよね。
「自分たちのものとして、どうしても完成させたい、予算さえあれば作りきれる!」というようなチームだと応援したいですね。
そんな執念深いチームが大好きです。
ピッチデッキに盛り込んで欲しい情報は?
ーーでは、ピッチデッキに盛り込んで欲しい情報はありますでしょうか?
ピッチデッキというよりは、やはり遊べるビルドがある方が説得力がありますよね。
ピッチデッキの作り方がわからない方でも、ビルドを作ってアピールするのは効果的かもしれません。
ビルドが難しい場合でも、ゲームの映像があるとわかりやすいですね。
Game Pitch Base 参加クリエイターに向けて
ーー最後に、Game Pitch Baseに参加しているクリエイターに向けて一言お願いします!
日本語が扱えるパブリッシャーではないのですが、なんでも屋です。
興味があれば、ぜひ弊社にご連絡ください!
Game Pitch Base上のメッセージでも、XアカウントのDMでも大歓迎です!
ーーありがとうございました!
「なんでも屋」として、開発会社が本当に求めることを叶えていきたいと語ってくれたAstrolabe Games。
開発会社に寄り添いながら、全力でサポートしていこうという意気込みを感じました。
「見たことがないという新鮮さ」を重視されているとのことですので、あなたならではのエッセンスを持つゲームがあれば、お話を聞きに行ってみてはいかがでしょう?
Astrolabe GamesのGame Pitch Base パブリッシャーページはこちら。