ビジネスに“感情”は必要か?
仕事をしているとすぐに感情的になる人がいます。一方でビジネスライクと言われるように感情をほとんど表に出さない人もいます。
議論で白熱するあまり怒り出す人を見た時は「ビジネスなんだからそんなに感情的にならなくても…」と思い、逆にあまりにも淡々と仕事をする人を見た時は「もう少し思いをもって仕事しても良いのにな…」と都合の良いことを考えてしまいます。
ビジネスにおいて感情は必要なのでしょうか?
このことについて今回は考えてみたいと思います。
先に私の結論を述べると、感情の表出は実現したい未来に達するための主体的な思考の結果であるため、仕事において感情は必要と考えています。ただし、全てにおいて主体的な思考の結果ではないため、両者を区別する必要があります。
感情の表出がほとんどない人
まず、感情の表出がほとんどない人の場合から見ていきます。
もしかしたら、うちに秘めた熱い思いがあるかもしれませんが、ビジネスの極限のシーンでも感情が動かないとしたら、それは思いがないからです。
これまで働いてきた職場でも「この資料には“思い”がない」「あなたの“思い”はどこにありますか?」といった言葉が飛び交っていました。
“思い”とは何か。これは「実現したい未来への意思」と捉えることができます。
プライベートで考えてみると分かります。例えば、あなたが家族や友人と旅行に行きます。数か月前から準備を立てて、家族や友人が喜びそうなプランを練り、実際に旅先に向かうのですが、宿泊先のホテルの手違いで宿泊予約が取れていなかったとします。しかも、当日は満室でどうにもなりません。
このようなケースで「そうですか、分かりました」とあっさり引き下がる人はいません。なぜなら、実現したい未来である楽しい旅行が崩れてしまうからです。
仕事においても、これまで計画してきたプランが何らかの社内や社外の事情で進まなくなってしまうケースは起こります。この時にあっさりと引き下がってしまう人は、私から見ると「実現したい未来がない」と見えてしまいます。
この「実現したい未来」は別の言葉で表現するとビジョンであり、主体的に目標を立てたり、その道筋を考えたりする思考形態によってもたらされます。
感情の表出がある人
このように考えると、感情が表に出る人というのは、「実現したい未来」があり、それに向かって仕事を頑張っているため、邪魔が入ると感情が表出すると考えられます。
従って、感情の表出があるというのは、実現したい未来があるという結果であり、望ましい状態と言えます。
最近、エンゲージメントが一種のブームのようになっていますが、エンゲージメントの根幹には個人個人の実現したい未来が必要です。
個人の実現したい未来と会社の方向性が一致した時にエンゲージメント生まれるのです。
エンゲージメントについては別途考えてみますが、感情の表出とエンゲージメントは切っても切れない関係にあります。
感情の表出の源が異なる人
それでは、感情の表出がある人は誰しも仕事に対してエンゲージメントされているか、というと単純にそうは言えません。
「実現したい未来」が人によって異なるからです。
例えば、Aさんは「この仕事を完成させることで、社会を〇〇にしたい」とビジョンを描いています。
一方で、Bさんは「職場で自分の地位を他の人よりも上だと認識させたい」と考えています。
二人は会議の場で激論を交わし、感情的になる場面も出てきますが、大元の目指す姿が異なっています。
BさんはAさんの主張を通すことで、自身の職場での地位が危うくなると考え、熱烈に反対をしているのかもしれません。
マズローの5段階欲求説に基づけば、Aさんは自己実現欲求、Bさんは承認欲求または社会的欲求によって突き動かされていると言えます。
従って、感情の表出を行う人は誰しもエンゲージメントされているわけではないということも頭においておく必要があります。
感情表出の方法は訓練が必要
とはいえ、より良い社会に向けての熱い思いがあるからといって、感情を爆発させて良いわけでありません。
初期のスティーブ・ジョブズは伝記や映画で有名ですが、実現したい未来へのこだわりが強すぎて周りに対する配慮を失ってしまっては、実現したい未来から逆に遠のいてしまうこともあります。
ですので、感情は殺さずに、表出の方法をコントロールできるよう訓練が求められます。
代表的なトレーニングはアンガーマネジメントです。
アンガーマネジメントでは「怒らない」のではなく、「怒り」が湧いた時にどう対処するかからスタートします。
人間は感情の動物ですので、感情を殺すのではなく、感情を制御する必要があります。
思いをもって仕事をし、感情を制御できるビジネスパーソンがチームで成果を上げるためには必要です。
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