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西洋美術史のゲシュタルトはこれでつかむ〜木村泰司の西洋美術史

ちょっと前までは美術史なんて、それほど興味もなく、それでも相応に楽しんでいたのだけれど、ふと「勉強したらもっと楽しいかも」と。

木村泰司氏(西洋美術史家)はこれまでも新書くらいでは数冊読んでいて、その経験と博識に尊敬の念をいだきつつ、楽しませてもらってきた。

どれもテーマ、切り口がユニークで、氏の座右の銘「絵はみるものではなく読むもの」にとても役に立つし、なによりおもしろい。

そんなこんなで氏にはけっこうな信頼をおいていたので、どうせなら美術史(時系列順に主要な流れや歴史、関連性などもざっくりレベルで)でもお世話になろうと思って図書館でみつけたのが本書。

Amazonのカスタマーレビューにあるように、たしかに誤字脱字、誤植がけっこうあって、ものによっては脳内変換、補完に手間取る場合もあるんだけど、内容はすばらしい。

このヴォリュームでよくここまで流麗にまとめあげ、読み手を迷わせずに導いてくれたなと。

古代からはじまり、中世、近世、近現代まで(印象派がモダンアートの幕開けなので、印象派まで)

画家や作品だけにとどまらず、歴史、宗教、人間関係までもふくめて立体的、複層的にコンテンツを編み上げてくれているので、なかなかにボリューミーなれど、あきずに楽しく刺激的にたのしませてくれる。

専門家になるつもりの勉強でもないかぎり、すくなくとも趣味(それもわりとつっこんだ)レベルでは十二分に機能する良書。

おかげで西洋絵画(とくに古典)をみる目がかわったし(もちろん、よい意味で)興味をかきたてられる機会、度合いも格段にふえた。

本書を読み終えてからさっそく「西美(国立西洋美術館)」の常設展(常設展なので500円と、すばらしくリーズナブル)も堪能してきたし。

ただし、

絵はみるものではなく、読むもの」についていえば

それは違う。

あくまでも「読むもの」として描かれたものにだけいえることで、そうじゃないものも絵画にはたくさんあるということ(西洋古典美術においては、間違いなく「それ」が大前提としてあったことを認めつつ)。

たとえば本書で同氏もみずから言及しているように、セザンヌ作品を読もうとするのは間違い。

彼は造形性を追求し、それについての評価をもとめていたから。

セザンヌだけでなく、抽象表現主義あたりから現在に続く現代美術においては、読まれること(意味)を放棄、もしくは拒絶している作品(作家)も多い(パッと思いつくところでは、ミニマリスムに分類されるフランク・ステラなど)。

敬愛するエド・ルシェ(Edward Ruscha)なんかも、意味をはぎとることにむしろ執心しているし(それでいてモダンアートにおいて、偉大なる足跡をしかと残している)。

木村氏ほどのひとであれば、当然そんなことは知っているしわかっているんだろうけれど、大胆に言い切ってしまうほうが伝わりやすかったり(商業的にも)するのだろう。

本稿を書くにあたって氏の他の著作も調べたら、まだまだおもしろそうなものもあったので、また読んでみたい。


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