書の破壊と創造〜井上有一
これまで「書」についてはとくに触手は反応してなかったんだけれども(故スティーブ・ジョブズがカリグラフィーに見出した美、価値のようなものは同様に認めつつ)
たまたまのご縁で(ご縁はすべてたまたま、happen to とはいえ)知ることができた奇才、異才の書家。
それが井上有一。
必殺仕掛人か?というその容貌は、彼を知るほどに、さもありなん。
この別冊太陽の特集号につけられたサブタイトルそのままに、まさに「破壊と創造」を繰り返し、表現を(ときにそれは、いわゆる「書」にとどまらない)してきた歴史が、いい意味でコンパクトにこの号にはまとめられています。
これきっかけで興味をもったり、魅力を感じたり、よくわからないけどなんか惹かれる、やばいくらいに、っていうような方はこちらの公式カタログ図録が超がつくほどおすすめ。
装丁がまた最高にクール、いかします。
彼(井上)の表現にぴったりの(書ですし)モノトーンでシンプルにデザイされた重厚でボリューミー(これは実際の厚み、容量の意味で)な一冊。
価格についてはあまり言いたくはないけど、はっきり言って超お買い得。
井上有一といえば、一字書(Single Characters)。
あまりにもストレートで、なおかつ選んだ文字が「貧」。
これが最初の邂逅だったので、やっぱり紹介するときには真っ先に浮かびます。
「よくもわるくも」を通りこえて、伝わるから。
もちろん、一字以外の書もあるし、もとは絵画から入ったひとなので、絵的な作品もあります。(それらもたいへんに魅力的)
東京大空襲を体験している(教育者として生徒たちを先導したり、守ったりもしつつ)ことから生まれた作品(その魂の慟哭、悲鳴があまりに痛ましい)を知ると
一見、ひとでも殺したことがあるんじゃないだろうか?
と思ってしまう、その風貌にも、、
「貧」だけだとあれなんで、こちらも
抽象表現主義による絵画作品をある程度知っているひとは「あ!」と思うかもしれない。
そう、フランツ・クライン(Flanz Kline)です。
このあたりの関係性というか、時代(勅使河原蒼風なんかも)に分け入っていくと、またあらたなパースペクティブ(遠近感)が立ち上がってきて面白い。