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お寿司、おいしいですよね。
私は回るお寿司屋さんばっか行ってますので(笑)その「すごさ」を目の当たりにすることはあまりありませんし、まぁこういうことは人知れずさらりとやってのけてることかと思いますので、その場で気づくことも少ないのでしょうね。
実は、目の前のお客さんによって、ひとつひとつ作り方(握り方)を変えている。
結構知られてないと思いますが、寿司店のカウンターで目の前のお客さん相手に作る(握る)お寿司は、そのお客さんによって、ひとつひとつ作り方(握り方)が変えられていたりします。寿司職人と言われている方たちすべてがそうかはわかりませんが、そうおっしゃる職人さんは少なくないですね。
性別、体格、食べ方、好みなどから、酢飯の大きさ、わさびの量、握りの硬さなどを微妙に調整しながら、そのお客さんにベストな寿司が供されます。
ごく簡単に言うと、お寿司はできるだけふわっと握った方が美味しいのだそうですが、お箸で召し上がる方に柔らかく握ると、途中で崩れてしまう可能性があるので、多少固めに握るのだそうです。
そのため、作り手側からすると手で食べていただいたほうが、より美味しいお寿司を握れる、ということになるんだそうですので、カウンターで、職人の目の前で食べる時には、手で食べることがお勧めなんだそうです。
とはいえ、まぁ、好きに食べればいいとは思いますけどね(笑)。
「新鮮=おいしい」ものも、なかにはあるが…くらいのもの。
とある寿司店のカウンターにて、若いカップル客と職人の会話。こんなやりとりがあったそうです。
女性「うーん、おいしい中トロ~、サイコー♪」
男性「ほんとだー、すごーい、新鮮だぁ〜!」
職人「いやいやお客さん、それ10日以上前に上がったやつだよ。店で3日は寝かしてますよ(苦笑)」
男性「えっ、10日前!?」
女性「そんなに!」
職人「そうよ。お客さん、全部新鮮ならうまいって思ってません? そうじゃないんですよ。鯛、平目、鯖、鰤、全部3日以上〝ちゃんと〟寝かさないとダメなの。鮪もそう。釣ってすぐなんて何も味しないんだから。まぁあんまり食えたもんじゃないんですよ。おいしくない。イカなら1日2日。釣ってすぐうまいのはスルメイカ。あと鰹は寝かしちゃダメ。鰹はすぐに食べる。ほかは寝かす。寝かすとうま味が出てくんのよ。グルタミン酸とかイノシン酸とか、聞いたことあるでしょ?」
女性「えー、知らなかったぁー。すごーい、いいこと聞いちゃったー♪」
男性「ホントホント、今度やってみよーよ」
職人「ダメダメ、シロートはやめときなさい。難しいんだから。熟成してんだか腐ってんだか見分けつかないでしょ? 特に鯖はダメだよ。当たったらきついからね!」
まぁ、もちろん新鮮なほどおいしい魚もあるでしょうけど、特に貝類なんかはそうだと思いますが、こういう知識とか、そもそもおいしい魚の目利きとか、下ごしらえや握りのスキルなどなど、ひととおりマスターするまで、というか一人前になるまでにも結構な期間が必要でしょうねぇ。
上記はネタの話でしたが、ここからは「バランス」のお話。
握り寿司で最も必要なことは、寿司ネタと酢飯との「バランス」とおっしゃる寿司職人も少なくないですね。
寿司ネタと酢飯が、口の中に入って同時に消えていく…。「合一」(ごういつ)とも言うそうですが、これが理想なのだそうです。
そのため、やたらと寿司ネタが大きかったりすると、その現象は起こりません。
それだけでなく、例えば柔らかい穴子や大トロと、固めの蒸し鮑や茹でタコ、イカなどを同じように握ったのでも、その現象は起こりません。
優秀な寿司職人は、そのバランスをとるために、細やかな切れ目(隠し包丁)を各ネタに合わせて入れたり、さらにそのネタによって、握りの硬さを微妙に変えて握ったりします。
そんなことは、食べてもシロートにはわからないんじゃないのと思われるかもしれませんが、握りを口の中に入れて味わっているうちに、ネタも酢飯も口の中に残らず同時に消えていく、その美しさ・おいしさは、注意深く食べれば、誰にでもわかるものなのだそうです。
寿司は「特別」と感じた、ほんの一例。
東京都内、ミシュラン三つ星のとある店(今は審査対象外店になったようですが)に、1年に1度だけ訪問する会社員のお客さんがいます。お給料やボーナスのなかから、1年間懸命にお金を貯めて、一夜の贅沢を楽しみに来ます。時間はせいぜい30分ほどだそうですが、至福のほんのひとときを過ごして、また1年後の「その日」を予約して帰っていきます。
このお店のご主人「どんなお金持ちのお客様より、どんな有名なお客様よりも印象に残っていますし、緊張もします。そのお客様のために、私どもは、最善を尽くして最高の鮨を提供いたしたいと、いつも思っています」。
特別な食べ物なんだな、と、つくづく思います。