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【FREE】北陸宿泊施設は便乗値上げすべき理由

北陸復興割がスタートするに当たって、なんか今から「便乗値上げするな」みたいなお話が大宣伝されてて、耳を疑ったところです。むしろ便乗値上げすべき、と思うのです。

プライシングというのは経営の基本であり、事業者の経営判断の核となるところです。それについてクーポンを配るが、既存の値段のままに設定し、クーポン使えば劇的に安く泊まれるようにしろ、ということを要請するわけです。。。

何を持って便乗値上げなのか、そしてクーポン利用適応で安売りをすると何が起こるのか、今一度考えてほしいと思います。

◯ GoToで発生した宿泊施設の阿鼻叫喚

そもそもこのクーポン利用で割引というのは震災復興、そして近年ではGoToトラベルというコロナ対策後の消費換気でも用いられた税金による割引サービスです。

これは税金活用としてはコスパの良いもので、5000円を支出すれば、客が15,000円つかって宿泊してくれれば、簡単にいうと3倍の経済効果を生み出すことができるというしろものです。だから政府とかは消費換気とかでこの手のクーポン企画をやりたがるのです。PayPay割とかも各自治体でよくやるのもその理由ですね。

でもって割引をして皆が泊まって満室になって「よかったよかった」となるかといえば、そんな単純ではないのです。

安売りをすれば何が起こるか。客筋が変わるのです。

GoToのときも普段は泊まらないような客が高級宿に押し寄せまして、知り合いの宿とかでは大浴場のアメニティにAesopというオーストラリアの高いソープやボディークリームをおいていたのですが、それらが軒並み盗まれる事態に。さらに、態度の悪い客が増加して、普段からの常連客から「なんであんな人たちが泊まっているのか。怖い」といったような話になって、なぜか安売りによって常連客を失うみたいなリスクまで抱え込むことになったりします。

だから皆がクーポン利用時で普段と変わらない金額に変え、サービス部分や食事をより良くしたりするという工夫をするようになったのです。実際の支払う金額で客筋は大きく変わるのです。

言いたくないですが、地獄の沙汰も金次第。安く安くを求める客にろくな客はいません。だから事業者は客を選別するために金額を設定しているんです。実にクーポン期間だけでなく、長期的な顧客との関係を考えた上で合理的に判断しているのです。

◯ 続く地獄のオペレーション

まず今のように来月からクーポン適応になるという時期、先立って予約された方の予約は「適応しない」ということになれば、一旦キャンセルして取り直すというお客様が当然出てきます。下手すると、今のうちに確保だけして、振り替えてくれ、みたいな連絡をしてくる客もいるのです。

さらにクーポン分については各種細かな手続きをやりとりし、政府から支出された予算が事業者に届くまでに時間がかかることが多くあります。この間の資金繰りの問題も発生します。震災で客が減ってしまって苦しい中で、さらにキャンペーンをやったらキャッシュフローがさらに悪化するという笑えない話も引き起こされたりするのです。

何より窓口業務や申請業務がプラスされるわけでその工数分を値上げしなければ、元の値段のままやったら「損する」のです。事業やっている人であれば手間=コストと理解できると思いますが、そういうのが理解できない人はサラリーマン大国日本にはたくさんいます。

以上のような理由からも金額をある程度引き上げて回さなければ、大変なことになるのです。被災地支援ではなく、被災地をさらに叩き落とすことになりかねないのです。

◯ クーポン対応を拒否しても続く地獄

さらにこういう事情があるので「もはやクーポンは適応しないでおこう」と決断する施設が出てきます。私も関わる施設でこの手のクーポンやらないほうがいいわ、常連客でしっかり回していこうと決めたところがありました。

が、今度は電話がかかってくるのです「なんでおめーの施設は適応除外されているんだ」という恐怖の連絡です。安く売れ売れ野郎たちは恐ろしいのです。

値上げをしても文句をいい、クーポンすら適応せずに頑張ろうとしてもそれでもクーポン使わせろとオラオラ言っていくるのです。

いいですか、だから値上げをするんですね。便乗値上げがだめだ、ではなく、別にやってもいいんですよ。それで客が来なくてもそれは宿の責任になるだけじゃないですか。ただそれだけの話。

人生いろいろ、宿もいろいろです。掴んでいる客層もサービスも多様なのです。ちょっとした期間のクーポン利用で経営の軸を歪めてその後回復不能になるのでは困るのです。

何度もいいますが、常に客は泊まらない権利を常に持っているんですよ。泊まらない限りクーポンの税金はその宿支払われないのですから国の負担も増えない。

こういうところは市場メカニズムに委ねるべきで、一々介入して、元の値段以上に引き上げるな、禁止指導するぞ、なんてクソみたいな話はやめるべきですわ。むしろもっと創意工夫をして普段ではできないサービスを作り出すための機会にさせたほうがいいでしょ。値上げをしてそこにクーポン分も適応されて、さらに値上げができた上でのサービスをトライしてみるというのでもいいのです。

それが気に食わないなら泊まらなければいいだけ。常に泊まらない権利はあるのです。

それをなぜにプライシングを決める権利を国が非難し、クーポンを適応するしないの権利を利用者が非難したりするようなおかしな話がまかりとおるのか、全く私には理解できません。

ご質問されたのは地元選出の先生のようですが、もう少し北陸における宿の中長期的な高付加価値化、発展に向けた機会にするような質問を観光庁に投げて頂きたいところです。

◯  voicyとnote音声配信でも解説しました。

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