【古代エジプト】セラペウムの石棺の謎【サッカラ】
セラペウムの概要
セラペウムはジェセル王の階段ピラミッドなどの重要な遺跡を含む、サッカラのより大きな墓地遺跡の一部です。
全長200メートルのU字型の回廊が貫き、石棺、埋葬室の集合体の複雑なネットワークで構成されています。
1850年にフランスのエジプト学者オーギュスト・マリエットによって発見されました。セラペウムは、プタハ神の化身と考えられ、後にセラピス神と関連付けられた神聖なアピス牛を納めるために設計された地下複合施設と考えられています。
24個の巨大で精巧に作られた石棺
回廊の脇には長さ約4m、高さ約3mの巨大な花崗岩の石棺が並べられています。
棺の蓋の重さは30トン、棺の本体の重さは70トンもあるため、発見時、多くの労働者とラバを使って移動を試みましたが僅か数メートルで断念しています。
また花崗岩はダイヤモンドカッターによる機械穿孔でしか扱うことができず原始的な道具(それぞれ石、銅、青銅、そして後世では鉄)で加工することは非常に困難なプロジェクトとなります。
にも関わらず外側と内側の角は誤差率0.02%以下のほぼ90°の直角、直線を実現しており現代の常識を逸脱する所業です。
もう一つの謎はピラミッド同様、これらの棺がなぜ、誰のために作られたのか、全くわかっていないことです。発見されたとき、1つの棺を除いてすべての棺が空で閉じられていたのは何故なのでしょうか。調査団は発見時にダイナマイトを使って棺を開けましたが、棺の中には何も見つかりませんでした。
リサ「謎が多いエジプト・・・」
先に述べたように、セラペウムがアピス牛に捧げられた古代の墓地であるならば、なぜどの棺からもアピスの雄牛のミイラが見つからなかったのか?発見されて以来、考古学者や研究者を悩ませており多くの議論がなされています。
ギザの大ピラミッドを筆頭にその建設目的、手法は未だはっきりわかっていません。
今回取り上げるサッカラ、セラペウムも同様です。冒頭のセラペウムの特徴を見る限り、ピラミッドよりも謎に包まれている施設であると感じませんでしたか?
クフのピラミッドにも、王の間と呼ばれる玄室に石棺が置かれていますが、そのとても王の墓とは思えない殺風景な空間には物寂しさを感じます。一方でセラペウムの巨大な、整然と並ぶ物言わぬ石棺群には何か沸々と湧き上がる畏怖を覚えます。
更に恐ろしい事は、切り損じや失敗して放置された石が出土している点。
それこそが『人間の手で生み出された』という事を物語っているからです。これにより宇宙人説、未知の技術説はほぼ否定されることになります。
はりねずみ「今回の記事ではそんなセラペウムの石棺について謎に迫っていきます!」
石棺の作り方
当時、最も硬い素材は銅でした。いっぽうで石棺に使用されている花崗岩は銅よりも非常に硬く、現代ではダイヤモンドカッターを使い当然ながら機械で加工します。
それだけ高硬度であるにもかかわらず、古代エジプト人は花崗岩を箱型にくり抜き表面を滑らかに加工しています。
この点、石棺に残る痕跡、実験考古学(当時の古代人が持っていた道具のみで再現を試みる)によってノコギリ状の道具を使い、石英の砂をかけて圧し切っている事が判明しています。
そこで判ったことは、銅のノコギリでも花崗岩の切断、穿孔は可能である。しかしながら、その切断速度は、14時間でわずか3cm。
数人のチームを組み、1日10時間作業したと仮定して、一つの石棺が完成するまで9年の年月が必要だと判明しました。
輸番制でひたすら切り続けたのでしょうか。当時の光景を見ることが出来たとしたら現代の僕たちにとっては異様な光景に映るに違いありません。
そこには動物の本能のような執念を感じます。
石棺の設置方法
次に石棺の設置方法です。
石棺の移動方法はこちらのYouTubeチャンネル『World of Antiquity』で説明されています。 支点になる柱はどうやって立てたのか・・・ 石棺の重量に耐えられたのか・・・ 様々な疑問は残りますが・・・
忘れてはならないのが地下に建設されている事です。セラペウムには狭い階段を伝ってアクセスします。彼らはどのようにして100tもの石棺を地下へ降ろしたのでしょうか?
さらには石棺は両壁に隙間がほぼなくぴったりと納められている個体も存在しています。
地図を見ても石棺がおかれる埋葬室の正面は壁であり、方向転換するための空間的余裕が無いようにも見えます。
外周は岩盤をくり抜いて作られて地下であるため、石棺を置いた後に外周を覆うという事も不可能です。
下記の写真は調査団が発見時に移動を断念した石棺ですが、通路自体が非常に狭いことが分かります。
ピラミッドは人海戦術で説明がつきますが、セラペウムは事実上密室であり、魔法でも使わない限り石棺の設置方法に説明をつけることができません。
はりねずみ「セラペウムの最大の秘密は未だ隠されたままです。 新たなアクセス手段の発見など、セラペウムの今後の調査が待たれるところです。」
石棺の目的
石棺は発見時、一つを除いてすべて蓋が閉じられていたそうです。調査員はダイナマイトを使用して蓋を破壊しましたが、内部には何の痕跡も残っていなかったそうです。またその後の、石棺内部の精密調査においても、ミイラや副葬品の痕跡は皆無でした。
もしこれらがアピス牛を納めるために設計された施設であるならば、内部に何も痕跡が無いはずはありません。
仮に盗掘だとしたら、30トンもの重さのある蓋を閉め直す必要性はありませんし、石棺を設置後、ミイラや副葬品を入れる前にセラペウム自体が途中で放棄された、という可能性も、蓋が閉められていたことから考えにくい。
これは大ピラミッド内部に安置されている石棺にも共通する謎です。古代エジプトでは基本的に石棺からミイラや埋葬品は発見されていません。
つまり、石棺には僕たちが見過ごしている何らかの『共通目的』がある。彼らにとっての埋葬行為が現代の解釈と異なっているのか?それともまったく別の目的があったのでしょうか?
考察1 石棺の異様な大きさ
セラペウムの石棺には異質な特徴があります。
それは他の遺跡で発見される石棺のサイズよりも異様に大きいという点です。
長さ4m、高さ3mの寸法は人が数十人納まる巨大なものです。この点から、仮に雄牛や人を直接埋葬するために作られたという仮説には少なくとも疑問符がつきます。
石棺のサイズの違いが何を意味しているのか。逆にサイズの違いが解明のヒントになるかもしれません。
考察2 彼らにとっての埋葬行為とは
この謎は、一般相対性理論を発見したアインシュタインと同様に、僕たちの常識を疑うしかありません。逆転の発想で、石棺には何も入っていないのではなく、僕たちが『見えないもの』が埋葬されている。という事。
最有力なのが、カー(魂)の埋葬に石棺を利用した。という仮説です。
この仮説を補強するヒントがルドルフ・シュタイナーの神秘学に残されていました。
思想家ルドルフ・シュタイナーによれば、生命体には固有の魂、アストラル体やエーテル体といったエネルギーが包み込んでいると云います。
シュタイナー曰く、エーテル体は『生命力、行動力』を表し、アストラル体は『意識、感情体』だと述べます。
生命は大きく、無機質(植物)と有機質(人間)に分けられ、感情を持たない植物はエーテル体のみを有しており、感情を持つ人間はエーテル体とアストラル体を有していると説きます。
このエネルギーは通常人間の目には映りませんが、高い霊性を持つ者はこれを可視化することが可能だと云います。
興味深いのが、シュタイナーの提言するエーテル体は『カー』、アストラル体は『バー』と同じ性格を持つ点です。
霊性力、とは右脳が活性化させることで正常な人(普段霊的現象を体験しない人)でも霊的現象を体験するという実験結果からも、右脳と密接な関係を持っており、狩猟採集生活で直感力が研ぎ澄まされていたとする古代人右脳優位説とも符合してきます。
またエーテル体、アストラル体は、肉体の背後に後光(オーラ)のように見える、と説明されており、人間よりも一回り、二回り大きいと解釈できます。
石棺のサイズが人間用としては大きすぎる、という点はこの仮説によって、カーの埋葬用であったため。と説明することができます。
古代日本においても魂が、人間の身に付くと、物を発生、生産する力をもつと考えられていました。この魂を産霊(ムスヒ)といいます。
死を迎えると、この魂は肉体の周辺をしばらくの間ふらふらと浮遊しており、やがて黄泉へと還っていくと考えられていました。
古代人は、この魂が去るまでは息を吹き返す可能性があると信じていたのです。
考察3 一枚岩でくり抜いた目的 何かを溜めるため?
石棺のもう一つの特徴は、一枚岩でくり抜かれている点です。
完璧な直角と直線で加工された棺と蓋は、閉ざすと音、光が一切入らない空間になるそうです。この点において、内部の情報を出さないための加工ではないか?と考えている一部研究者もいるようです。
一枚岩で作る意図として真っ先に浮かぶのが、内部の何かが漏れ出すことを防止する目的で作っていた。という事。
肉体の死後、周辺をふらふら浮遊する魂がカーであるならば、彼らは腐敗してゆく肉体よりも、不滅である魂を永遠の象徴である石棺に文字通り『閉じ込めた』という仮説は低いものの否定できないと考えます。
以上の考察から、霊性が高い古代エジプト人は、シュタイナーの説明するエーテル体やアストラル体を、カーやバーが肉体を包むオーラのように実際に見えていた。と考えられます。
故に閉じ込めた魂が漏れ出さないよう『密閉』する必要があったために、完璧な直角、直線加工にこだわったのだと思われます。
結論としては、石棺とは、ミイラではなく魂であるカーを埋葬するためのもの。よってセラペウムの石棺は神となった『アピス牛のエーテル体』の埋葬のためだと結論付けられます。
単純な信仰ではなく、彼らにとっては非常に現実的な葬送儀式であったと思われます。
リサ「ってことは石棺をダイナマイトで爆破したときに魂が抜けてったことになるよな・・・」
この仮説は石棺内にミイラ等の痕跡がない、ことを根拠の一つとしていますが、悪魔の証明のようなジレンマは残ります。
しかしながら古代遺物はオーラや人魂、チャクラ、エーテル体などの目に見えない存在を間接的に説明しているように思います。このような痕跡に耳を傾けることも考古学の大切な取り組みの一つではないでしょうか。
さらなる謎
今回、古代エジプトの石棺の秘密に迫りました。
しかしながら、これによって更なる疑問が生まれることになりました。
それは、なぜ古代エジプト人はここまでして『カーの魂を捉えようとしたのか?』です。冒頭にも触れたとおり、そこには動物的な、本能的な欲求から突き動かされているようにも感じてなりません。
不要なものは淘汰されてゆくものですが、彼らが残した巨大な遺跡群は4500年を経過してもそこに佇み続けていました。
今回の考察で、古代人は現代人と世界の見え方が異なっている可能性を示しました。もし、古代エジプト人が『魂の数は限らている』ことを知っていた、そのために、永遠に保存しつづける必要があり石棺やピラミッド、そして地下深くに魂を保存しようとしたとするならば・・・
あらゆる種子の保存だったり、地下深くに高レベル放射性廃棄物を隔離するといった、現代文明と同様、『合理的な理由がそこにはあった』のだとしたら・・・
僕たちはパンドラの箱を開けていることになるのかも知れないのです。