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万年筆は、やっぱり魔法が使えるペンだった。

子供の頃から文房具が好きだった私は、何でもかんでも欲しがった。
良い匂いがするペン、途中で色が変わるペン、キラキラペン。。。

そんな中で万年筆は、憧れのペンだった。
なんだか魔法が使えそうじゃない?
万年筆ってかっこいい!

そんな思いを抱いて、中学生の時にやっと手に入れた万年筆は、中にインクが既に補充されている簡単でお手軽なものだった。
今でも覚えてる、空色の万年筆。

でも、中学生の私が持つにはまだ早すぎた。
力加減が出来ない私は、よくインクを漏らしていたし、筆圧でペン先を潰してしまった。
書いた後にインクを乾かすこともせず、書いた文字をぐちゃぐちゃにした。

「なんだこれ、使えない」

私は悲しさでそう認識づけた。
使えないは万年筆に言った言葉だったけれど、ブーメランのように自分に返ってきた。使いこなせないんだろって。

そんな私は大人になっても長い間万年筆に手を出さずにいた。

私は昔から、何かをやる時は全力で、力加減の調整が出来ない子だった。

社会人になった私のその矛先は、当然1日の長い時間を過ごす仕事で、仕事の日はヘトヘトになるまで働いていた。

そんな私の力がふっと抜けたのが33歳の時だったと思う。周りからみたら、「いや、まだまだ全力でやってるよ」と言われるけれど、それでも自分の中ではふっと肩の力が抜けた。
今まで120%でやってた仕事や日常生活が、意識すれば80%ぐらいまで力を抜けるようになってきた。

力を抜いてもいいんだってなんとなく思えた。だって、仕事に毎日出勤しているだけで80点スタートだし。減点はないし。加点方式のみだし。

それに、もっと自分に優しく生きてあげたいって思えたんだよね。

そんな時、ほんとになんとなく、万年筆を購入した。
とても欲しくて欲しくてって感じじゃなくて、ちょっと使ってみようかなぐらいの気持ちだった。

今回も簡易式だけれど、艶感のある赤色のフォルムに、無難に黒のインク。

試しに、毎日の日記をこの万年筆でつけてみることにした。

軽い!
びっくりするぐらい万年筆は軽くて、さらさらと文字が進む。昔憧れていた万年筆は、やっぱり魔法が使えるみたい。
こんなにさらさらと文字が出てくるなんて。

万年筆の良さに衝撃を受けた。
それからは、万年筆は私の相棒と化している。

万年筆って、さらさらと、本当に文字が進む。
さらさら進むけれど、それは全部自分の中から出てきている言葉で。
肩に力が入ったままでは、万年筆が書きたい言葉も出てこないのかもしれないね。

肩の力を抜いて、今日も万年筆を手に、私は自分と向き合う。

そうすると、思いもよらない自分の気持ちがなんとなく出てくるような気がするのです。


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