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159日目。【短編】脆い骨について。

私、骨が弱いのよ。

…どういうこと?

すぐに折れたりヒビが入ったりするの。子供の頃は跳び箱を跳ぶのに失敗してヒビが入ったこともあるわ。貧相よね。大人になってからは無理しないようにしているけど。

そりゃあ、折れるのは心配だもんね。無理しちゃいけない。

それでも思うのよ。ああ、私は身体の芯の部分が人より弱いんだって。身体の中が弱くて脆いんだって。一本、入っているものがすぐに折れてしまうんだって。それで意味もなく辛くなるの。

そんな、どうしようもないじゃないか。気に病むなよ。大人になったら激しい運動なんてわざわざ選ばないとしないんだから。大丈夫だよ。

そうなのよ。大丈夫なのよ。大丈夫に見えるの。それも少し辛いわ。だって一見すると普通なんだもの。でも自分の中にだけはずっとあるの。ああ、自分は人より脆いんだ、って。同じ皮をかぶっただけで違う中身なんだって。思うのよ。

それじゃあ、キミは自分が嫌いなの?

いいえ。私は自分大好きなの。繊細で華奢なこの見た目とか。あとは性格とか。全部好きよ。骨は嫌いというより、気に食わない、といったイメージね。私はもっとよくなれたのに、骨のせいで足を引っ張られているわ。でもそんなものかもね。完全なんてつまらないものね。

そうかそうか。それを聞いて安心したよ。僕はてっきり君が自分自身を嫌いになって責めているのかと思ったんだ。

うふふ。責めるわけないでしょう。こんなに素晴らしいのに。私が私を嫌いになったら誰が味方になるのよ。だから骨が弱いのも完璧になれなくて残念、くらいにしか思っていないわ。ねえ、あなたはどう?

僕かい。僕は…



言いかけて止めた。自分の、嫌いじゃないけど完璧じゃないところ、を楽しむほどの余裕がないことに気付いた。

負けた、と思った。


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