【メモ①】小説に関する本を読んで
小説に対する態度を改めて洗い直してみようと、一週間時間を取って、小説に関する本を10冊読みました。
『超入門!現代文学理論講座』(亀井秀雄、蓼沼正美)
『小説の言葉尻をとらえてみた』(飯間浩明)
『ゼロからの脚本術』(泊貴洋)
『物語の役割』(小川洋子)
『秘伝「書く」技術』(夢枕獏)
『プロを目指す文章術』(三田誠広)
『文学理論』(ジョナサン・カラー)
『官能小説の奥義』(永田守弘)
『小説の読み方』(平野啓一郎)
『ミステリーの書き方』(日本推理作家協会)
上記の10冊を読みました。
小説を書いていて、自分なりに整理できていた部分、まったく気にしていなかった部分もあり、勉強になりました。
以下メモのような形で頭の中に残ったものを箇条書きにしてあります。
僕の頭を通したメモなので、どの本から得られたものかは、ごちゃまぜになってます。
小説を書くということの要点が分かるのではと思います。
文学の中での小説の立ち位置
今では文学といえば小説を連想すると思いますが、もともと文学においては詩がメインでした。
叙事詩、抒情詩になりえない散文が小説で、文学=小説になってきたのは19~20世紀くらいからです。
小説とは
・一本の線。その起伏(プロット)を楽しませる
・主語と述語。矢印。大きな主語・述語・矢印が物語のプロット、小さな主語・述語・矢印が一文一文
・時間の芸術。どこからでも始められる。人の人生をどう切り取ってもいい。前史をいかに語るか
・言葉を前景化させる。あたりまえのものを見たことないものとして立ち現わせる。異化作用
・映像には出せない魅力、内的描写、手触り、臭い、味、温度、体感
・人間の生き方に関わるリアルな問題提起
・発話が場面を規定し、場面が発話を規定するもの
・読者の想像力に補完されることによって成り立つ代物。余白、空所
・主人公が世界認識の核となり、主人公の欲望(目的)の前に障害物が立ちはだかる
・登場人物間の関係性が逆転する。不安や予言からその実現やどんでん返しに向かう。問題の設定からその解決に向かう。謝った非難や虚脱からその修正に向かう
・異なる声や言説を登場させることで、様々な社会の見方と支店の衝突を舞台に乗せること
小説はかくあるべし
・安易に説明をせずに描写で語る。説明、描写、心理、会話のバランス
・会話のセリフには二重・三重の奥の思いを込める
・テンポ、リズム、読みやすさ、分かりやすさ
・魅力的な登場人物
・冒頭の引きの強さ、没入感。印象的な場面もしくは、印象的な文章
・知覚への衝撃、視点の切り替え、解像度の変換
・定型の図式を見せず、語り口の魅力で引っ張っていく
・焦点化。時間、距離やスピード
・予定調和的な予想のつく展開の安心感と、突飛な切り口での驚きとのバランス
・プロットを前進させる述語と、主語を充填する述語(一文単位でもパラグラフ単位でも)
・人間の難しい心情を美しい自然を織り込んで描くのと、乾いたクールにコントロールされた分とのバランス
・描写を掴む一点。情景を立ち上がらせる一点を掴んだもの
・主人公に悲しみや弱点や制限。脇役も丁寧に描写
・タイトルは、作品をイメージしやすく、かつ、分からないところがあって興味をそそられるもの
テクニック
・登場人物の差を出すには、その人物の感じ方、行動によって。動詞の使い分け、知識の差、生育環境の差
・書き直し:削る、刈り込む
・捨てカット(風景描写);アクションやセリフなどの濃いシーンで疲れさせないための箸休め
・メタファーの文学的力はギクシャクした不調和感。矛盾しているようで言い得て妙。類似性
・メトニミーは与えられた内部で一つのものが別のものへと移動しその時空間の連続性の中で物事を結びつける。隣接性
・シネクドキ:全体を部分で置き換える。部分が全体を代表させる。提喩
・アイロニー:うわべと実像を並走させ、期待と反対のことを起こす
・活喩;無生物に言葉を与える。命ないものに話しかける行為は詩人・幻視者に仕立てる機能
・名前:意味を持たせるケースと、無色にするケース。フルネームだと情報化された人物っぽくなる
・メタファーの使い方:イメージを近い所からどんどん飛ばしていく方法と、イメージを遠くの突飛なものから近くへ引き戻していく方法。後者を取り入れたい
・付帯情報の匙加減。想像力を補う部分と、空所にするバランス
・読者を代弁する疑問。読者を置いていかないための補助機能と注意喚起
・間の置き方。場面の区切りや細かな間として、一句の挿入、会話の区切りとしての一描写
・現在進行形、必要最低限の描写、肉体感覚の挿入でより読者との一体感を緊密にできる
・記号による圧縮。ロールスロイス
・場面の折り畳み。会話のキレで言外の内容を読者に推測させられる
・視点の法則。その視点の人が感じられる範囲でしか描写してはいけない。日常的なことは注意して見ないから詳細に描写するのは変。非日常を持ち出せば描写に違和感がなくなる
・シナリオ理論;変曲点(次のパートへ移るきっかけ)、ミッドポイント(ど真ん中で大きく変化、小説のテーマにおける諸所の問題に向き合い掘り下げる場所)
・叙述トリック(男・女、大人・子ども、被害者・加害者、過去時制・現在時制、現実・非現実)
・登場人物が区別がつきやすいように、名前の文字数変える、漢字カタカナ分ける、呼称を分ける、方言話者、敬語、バックグランドの符牒を入れる
・テンポの良さ。最強のテンポアップは、削るではなく、書かないこと
・過去形と現在形の織り交ぜ。同じ時制が続いたら転換する
・会話の間にずれを入れる。真正直なやりとりはつまらない
・日常のなかで、近いものを離し、遠いものを結ぶ
・書き出しが伏線っていう技
・冒頭で、つかみ(動きのある場面、物事が転がる場面)と主要人物を見せる役割
・アクションや性や暴力シーン、比喩等はスパイス。ふりかけるのは効果的だが、使いすぎに注意
・悪役の特権利用。悪にとってはラッキーは許される。不可視的な描写の省略も許される。不良の善行効果もあり魅力的に写りやすい
・主語を省くことで、読者が体験している感覚
最後に
丸一週間の時間を使って、勉強をしたことで、自分なりに「こう書いてみたい」という新たな挑戦目標もできました。
特に、文章の刈り込み方、会話の切りつめ方は今まで以上に意識して書いてみたいなと思いました。
最後にあるあるを。
ミステリー系の作家は(ハメットと)チャンドラー好きな人多すぎ。
というわけで、LONG GOODBYE!
ARIGATO,
Shota Arai