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『読書道楽』 生きるために、読む。 鈴木敏夫

読む。生きるために、読む。

本書帯びコメント

『どんな本?』

展覧会「鈴木敏夫とジブリ展」で
配布された文庫「読書道楽」を
加筆修正し、単行本化された本。
展覧会でも紹介された鈴木さんの
蔵書8,800冊から、鈴木さんの人生を振り返り、
年代ごとに読んできた本について語られています。
インタビュアーの柳橋閑さんが鈴木さんの
読書の記憶を呼び起こしていきます。

ジブリファンの読書好きには、
たまらない一冊です。

『読みたくなった本』

鈴木さんがこれまで読んできた本が
たくさん紹介されています。
その中でぼくが個人的に
読みたくなった本を紹介します。

「近代家族の成立と終焉」 上野千鶴子

 高度経済成長とは何だったのか。
 宮崎吾朗監督と対談された上野さんの本に興味が湧いた。

「陽のあたる坂道」 石原洋次郎

 宮さんの描くヒロインのもとが描かれている。

「読書と日本人」「最後の読書」文庫版 津野海太郎

 最後の読書の文庫化で鈴木さんのあとがきが追加された。
 読書というものを学説的に捉えてみたい。

「姿三四郎」 富田常雄

 宮さんと鈴木さんが仲良くなったのは
 「三四郎のファン」という共通点があったから。
 そんな奇跡の一冊を一読してみたい。

「野生の思考」 レヴィ=ストロース

 “レヴィ=ストロースを読んだことは、
 その後のぼくの人生を変えましたよ“と話す鈴木さん。
 レヴィ=ストロースの名前が本書の随所に出てきていた。

「恋と女の日本文学」 円谷才一

 タイトルに興味を唆られた。

「忘れられた日本人」 宮本常一

 高畑さんと宮さんと出会った当初、
 鈴木さんがこの本を読んでいないことを
 鼻で笑われて悔しい思いをした本。

「yam yam」vol61  雑誌

 鈴木さんと養老さんの対談
 好評だったそうで、ぜひ読んでみたい。

『言葉の燈』


日本の漫画の根っこには戦後の貧しさ、
学校に行けなかった人たちがいるんです。

子どもたちの早期の自己確立を求める。
それって内気な子にとっては辛いですよね。
そういうとき、
「そんなことできなくても大丈夫だよ」
と慰めてくれるもの。
それが日本のマンガ・アニメ
だったんじゃないですかね。

本や映画というものを、
実践的に血とし、
肉としたんだと思う。
一方でメタ視点というか、
「こんな読み方をしている自分は何者なのか」
という俯瞰的な視点もあった。

「読み・書き・算盤」
ができると、生きていけるんですよね。
最近はそれをできない人が多すぎて、
ちょっと驚くんですけど。

(本に線を引いたり付箋を貼る)
それをやると読むのがつまらなくなっちゃう。
やっぱり心から楽しまないとね。

レヴィ=ストロース、
そして日本の加藤周一。
この二人のおかげで、
ぼくの宮崎駿研究は強固になりました。


加藤周一。
集団と個人のどちらが大事が。
福沢諭吉やその後継者の小泉信三とか、
いろんな事例を引きながら、
個人であるということを証明するんです。 
ー。
つまり問題を設定して、
具体例をあげて、
明快な回答を見つける。
そのおもしろさですよね。

唯脳論。
雑に言っちゃうと、
人間は石器時代から今日に至るまで
脳は進化していないということでしょう。
動物と何が違うかといったら、
その方を使って人工物をつくってきた点。

歴史の真実を明かすような作品が、
ぼくは好きなんですよね。
そういう意味では、やっぱり宮崎駿にも「風立ちぬ」で
重慶爆撃を描いてほしかったんです。

「最後の読書」キャッチコピー
『本当の意味で老いるのは、
死ぬ前の最後の一日でいいんじゃないだろうか』

そのうえで、ずっと迷ってるんですよ。
やっぱり自分の役割として
宮崎駿、高畑勲について
書かなきゃいけないのかなって。


同じフランスでもサルトルの
実存主義とはやっぱり考え方が違う。
ぼくにとってはレヴィ=ストロース的な
もののほうが心地いいんですよね。
ホッとするんです。

まぁ、そうかもしれないけど、
もっと読みたいんですよ、ほんとは。
やっぱり読書が好きなんですね。
それがぼくという人間の根幹にある。
それだけは間違いないです。
だって活字がないと生きていけないもの、
やっぱり。


「立派な大人じゃなくて、立派な少年にならなきゃいけない」
「けっこう根深い価値観というか、ぼくら団塊ジュニアの世代
にもちょっと残っているような気がします」

読書とは、本という過去を読んで、
現在の自分を見つめなおすことだと思う。
そして本棚にはその人の過去がある。
(展示会スタッフ 出野龍郎さん)

ここまで持ちこたえて残してきた本を、
ひとつの部屋に全部並べて、眺めてみたい。
74年生きてきて、それは、
個人としてのぼくの密やかな夢だった。

『読書感想』

読書と何か?
人はなぜ本を読むのか?
なぜ読書を薦めるのか。

考えてみると、抽象的で言葉にするのが難しい。
学びの読書なら、著者に教えを乞う。
癒しの物語なら、空想の旅をする。
エッセイなら、著者に憑依する。
ルポジャージュなら、心で旅をする。

人は言葉を使って考える。
だからどんなにテクノロジーが発達しようとも、
人は言葉を使い続けるだろう。
だから人は本を、活字を、読み続ける。
人は本を必要とし続ける。

それとも、電気信号を送信して、
一瞬で本の内容を頭にインプットする。
未来はそんなことになっているのか!?

未来のことはわからないけど、
読書はなくならないと信じている。
ならば、読書の魅力を伝えたいと思う。

「大切な本が一冊あればいい」

宮崎駿監督の言葉。
そうなのだ。
人それぞれ、大切な本は必ず存在する。
そんな本に出会うきっかけに
ぼくはなりたい。

本書あとがきの出野さんの言葉が素晴らしい。

『読書とは、本という過去を読んで、
 現在の自分を見つめなおすことだと思う。
 そして本棚にはその人の過去がある』

その通りである。
そして、他にも意味はあると思う。
それを考えるのも楽しい。
鈴木さんの周辺には、
こんなにも素敵な言葉で読書を
表現できる方がいるのか。
素敵だなぁ思う。

読書道楽。
人それぞれにあるその真意。

ぼくなりに「読書とは」を考え続け、
ぼくなりの思いをいつか表現したいものだ。

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