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一人暮らし大学生 辞書を買う
二十歳を過ぎてから、自分の生まれた日にあまり特別な感情を抱くことはなくなった。
学校で友達から祝ってもらえるかな、家族から何か貰えるかななどの特別な日としての感覚が消えてしまったため、ただの1日でしかないのだ。
「〇〇歳誕生日おめでとう、まあ呑気にやれよ」と心の中でつぶやくだけである。あとは親族からのお誕生日おめでとうLINEのみ。
「自分の機嫌は自分で取れ」じゃないけど、最近、心が落ち着かない日々を送っていたので、何か自分を甘やかしてあげられることを探していた。
以前から買いたかったもの、行ってみたかった場所、食べてみたかったことなどなど手あたり次第紙に書いた。しっくりくるものはなかった。
僕にとって節目の年でもあり、自分を豊かにしてくれるものにお金を使いたかった。紆余曲折あったが、挙がった候補の中で最適だったのが「国語辞典」だ。
僕は、読書中に不慣れな単語が出てきたときはスマホで調べるか、それも面倒な時は見えなかったふりをして流していた。
小中高時代は家に紙の辞書が数冊置いてあったので、意味の知らない単語出てきたら家の本棚から辞書を持ち出し引いていた。
分からない単語が出てくるたびに辞書を引くのは面倒だけど、その面倒さを求めている自分がいる。
今はスマホ一つで自分の求める情報に一直線でたどり着くことができる。でも、重たい辞書を持ってきて、「あ、か、さ、た、、」と順番に紙をめくり、自分の求める情報にたどり着く前に「へー、これこんな意味もあるんだ」と違う単語に気を取られながら紆余曲折し、求めていた情報にたどり着く。遠回り万歳。
大学生で暇な時間が大量にあるのでできる所業ではあります。
というわけで辞書を買うことに決めた僕は、どんな辞書があるのか事前に少し下調べをして本屋さんに向かいました。
一つの本屋さんには、下調べした辞書すべては置いていなかったので、結果数軒の本屋さんを暑い中自転車で走り回りました。これも暇な大学生だからなせる業です。大学生万歳。暇万歳。
辞書を買うのにここまで長くなりましたが、結果購入したのは
・新明解国語辞典第八版(三省堂)
・日本語 語感の辞典 中村明著(岩波書店)
一般的な国語辞典は新明解を選択しました。辞書購入において大事にしたのは、「言葉について深く知りたい」ということです。そして二冊目も購入した理由は、「日本語 語感の辞典」の装丁にも惹かれたのですが、なにより「まえがき」がいいのです。語釈には、文学作品の中で出てくる生きた実例があることも気に入った点です。この辞書たちとは一生の親友になりそうです。
しかし、二冊の偉大な辞書を新書で買ったことは僕のお財布事情をだいぶ厳しいものにしました。おかげで少し困窮してします。でも後悔はない、ないはず。
この二冊の辞書とともに、手つかずの本たちとも今一度向き合えそうです。怠惰な読書活動家は大きな一歩を踏み出しました。
誕生日おめでとう。まだまだ前途多難な人生だけどきっと大丈夫、君ならなんとかやっていける。