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(温泉)風邪の始まり②

あらすじ
友人たちと温泉にやってきました。深夜に。


1 お盆

僕は自分が休みではないからと、お盆休みをなめていたようです。
深夜までやっている温泉は勝手に空いているイメージがあったのですが、信じられないくらいに混んでいました。駐車場は車で溢れていて、その時点で気が滅入ってきます。温泉に集まる人間の匂いは、正直苦手です。

加えて、僕とサイコパスは仕事終わりにそのままやってきたので、プラス三百円をかけてタオルもレンタルしなければなりません。気分が悪いですよね。他の友人はタオルを持っていて、自分だけがレンタルをしなければならない状態。

2 やはり敵は大学生

混んでいるだけならまだしも、その大半が大学生ばかりだというのも僕のストレス値をあげる要因の一つです。じっくりと温泉を味わう人たちだけだったらどれだけよかったことか。

深夜に温泉にくる男子大学生というのは、間違いなく3人以上でやってきて、群れて行動します。大抵そのうちの1人以上が髪を染めていて、自分がこのエリアの中で最もかっこよくて頭もいいと思い込んでいます。サウナに入って整うことが男の矜持だと信じ、団子みたいにかたまってサウナに行進します。露天風呂にも室内風呂にも、見渡す限りに、大学近い格安居酒屋に入ったかと勘違いするくらいに、大学生たちがグループで陣地をとっています。馬鹿みたいな声量で話している内容は通り一辺倒の自慢話でろくに聞けたものではありません。サークルの可愛い子とどうだの、就職活動が面倒だの、賭け事の成果だの、たいしたことのない話をたいしたことであるかのように話し、話し手は優越感に浸り、聞き手はどのエピソードで次は自分が優越感に浸れるかをずっと考えています。

3 頼みの綱

デブとドングリは周りの環境をいい意味で気にしないので、僕が感じる苛立ちをほとんど感じません。そういう時にサイコパスです。こいつは僕以上に周りに敏感で、10の嫌なことを心の中で100にする人間ですから、きっと僕の感じた男子大学生軍団への憎悪も、10倍の規模に増幅して協調してくれるでしょう。

しかし、そう思って隣を見ると、頼みの綱のサイコパスがいないではありませんか。というのもこのサイコパスは、メガネが本体と言われるほどにメガネへの依存度が高く、温泉に入るためにメガネを外した結果、視力とアイデンティティを失い、友人である僕たちのことを見ることができなくなってしまったのです。
彼は男子学生と僕たちの区別がつかず、明後日の方角に消えてしまいました。使い物になりません。

ようやく僕たちがサイコパスを見つけて、デブがその巨大な手を激しく振っても、サイコパスは全然気がつきません。これでようやくはっきりとわかりました。サイコパスの、少なくとも8割はメガネです。
これからはメガネに向かって話しかけることを意識するようにします。

とはいえ、温泉自体は最高でした。僕たちも結局は愚かな男子学生たちと本質は同じで、サウナに行くことにしました。整いたいので。


続く

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