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(どうせ散歩)復讐の鬼②

あらすじ

深夜にラーメンを食べた僕と友人のサイコパスは、いつも通り、家まで散歩する羽目になっていました。

1 病気

どこかで書いたに違いありませんが、サイコパスやデブと遊ぶと、どうも散歩しないと遊んだ気がしなくなる病にかかっています。

サイコパスは単純に散歩が好きで、散歩にしか人生の光を見出せない男ですから、存在が病気みたいなものです。恐らくそんなサイコパスと一緒にいたせいで、僕もまた散歩をしないと落ち着かなくなってしまったのでしょう。

症状は悪化しています。

なぜなら、今回は僕自身あまり抵抗せず、自然な流れで散歩に取り組んでしまっていた気がしたからです。これは相当恐ろしいことです。

このまま症状が悪化すれば、僕もサイコパスのように、1人で何キロも目的なく歩く、もはや徘徊する老人と変わらないような奇行をとってしまう恐れがあります。

僕たちは、満杯になったお腹を抑えながら、蒸し暑い7月の夜を歩き出しました。

2 談笑

サイコパスとの会話の内容はほとんど覚えておらず、それがまた僕は好きなのですが、天性の馬鹿こと友人のデブがいないので、会話は些かインテリジェンスを帯びました。

今後の社会を憂い、投資の不安さを語り、互いの境遇を罵倒し、これからの人生にため息をつきます。

そうです、些かのインテリジェンスを帯びるものの、バカ特有の能天気な明るさが明らかに欠如しているので、どう会話しようが、着地点は絶望です。

サイコパスの絶望は聞くものを幸福にする効果がありますから、僕は終始大喜びで話をしていましたが、やはり凍てつく大地で開拓の手伝いをさせられている哀れなデブの存在が思い起こされます。

スリーマンセルには1人バカがいた方がいいですよね。考えなくていいことを考えなくて済みます。

3 ラーメンの後は

僕たちの目的は単に家に帰ることではなく、コンビニに寄ることでした。

夜のコンビニは購買意欲をそそられますよね。しかもこってりとしたラーメンをたっぷりと食べ、散歩で汗を大量に流した後です。

そりゃあもうアイスに決まっています。

コンビニに行き、アイス売り場でああでもないこうでもないと議論を重ねた挙句、アイスボックスというシンプルな選択を2人ともしました。

1日の仕事と散歩で疲れ果てた体と、こってりラーメンで乾燥しきった口に、アイスボックスの爽快感と冷たさがまぁ沁みます。

結局こういうところに散歩の醍醐味があるから、病気は進んでいくんでしょうね。

コンビニの前でアイスボックスを体に流し込みながら、かつて通っていたスイミングスクールの跡地を眺め、2人して感慨に浸ります。

きっとサイコパスは、潰れたスイミングスクールと自分を重ね合わせて、自分も知らず知らずのうちに、こうやって潰され、地面をならされ、新しい建物を作る土台にされるんだ、と悲しく思っていたことでしょう。

4 帰宅

家に到着した時には、一時を過ぎていました。足が痛くてしょうがなかったですし、巨大な蚊に刺されて無性に足が痒い状態でしたが、それでも充足感というか、ラーメンを食べて、アイスを食べて、散歩をしたという満足がありました。

けれどもそこで紛れもない事実を痛感するのです。僕は明日も仕事で、サイコパスは家でのんびりだらだらと、自堕落な生活を満喫する予定であると。

サイコパスはあらかじめ自分が休みであることを見越して全ての計画を立てていたのです。またこれです。いつもこれです。自分の学生という立場を最大限有効活用し、日々必死に働いている僕たちを手のひらで転がし嘲笑うのです。まさに極悪非道の具現化です。

僕は立ち去るサイコパスの背中に中指を突き立て、寝ることにしました。

次の散歩はいつになるでしょうか。いえ、次のラーメンはいつになるのでしょうか。

終わり



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