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読書感想『もっと知りたい動物園と水族館』
自分が水族館の飼育員になる夢を早々に諦めた理由
僕は小学生の頃、水族館の飼育員か、生物学者になることを夢として持っていた時期があります。しかし、わりとすぐにその夢はなくなりました。この本を読んでふと思い出し、わかりました。僕が水族館の飼育員になる夢を早々に諦めた理由が。
非常に面白い書籍でした。前半は一問一答形式で、見開きのページに質問とその答えが乗っていて、わかりやすくかつ楽しく読めました。回答が端的で、著者の頭の良さを感じました。後半は実際に水族館で働いているスタッフの方々へのインタビューが掲載されていました。
僕は記憶力が常人よりも著しく低いので、一問一答やインタビューの内容を詳しく覚えているわけではないのですが、ページをめくるごとに、僕は水族館や動物園そのものが好きであるということに、改めてではあるのですが気づいていきました。
つまり、水族館が醸し出す雰囲気が好きなのです。日本で最初の水族館は何年にできただとか、動物を輸送する時にはどうするのかだとか、そういうことをぼんやりと知りながら、実際に水族館を歩き、水槽を眺め、光の反射にうっとりし、面白い展示に釘付けになり、水族館の存在意義などを考えるその時間こそが、好きなのです。
逆に言うと、水族館に住んでいる生物たちへの愛情はあまりないのです。自分がとても冷たい人間に思えてきました。水族館スタッフへのインタビューを読んでいると、皆生き物が大好きで大好きで仕方がないことがわかります。こういう人たちが集まって水族館を形作るのです。生物に対して愛情もなければ責任も感じない僕みたいな人間が水族館で働いたら、水族館はもう終わりです。
最初から僕は、水族館の外側にいるべき人間だったのです。本能的にそれがわかっていたからなのか、中学生の途中あたりだったと思います、僕は人知れず水族館の飼育員になるという夢を捨てました。
適材適所が何事にもあるように、僕は水族館の中にいることには不向きと判断して遠ざかっただけであり、悲しい気持ちは特にありません。むしろ、自分なりに水族館との距離感を掴めたような気がして、満足した気持ちすらあります。
まさか水族館・動物園の興味深い事実を楽しむ本で、過去の夢とその挫折に思いを馳せるとは……。