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映画感想『セキュリティ・チェック』
ネットフリックスで話題沸騰中の、空港でテロリストと戦うサスペンスアクション映画です。
ネタバレ気にせず。
1 場所の勝利
僕は空港が非常に好きなタイプの人間でして、例えば海外旅行で十二時間のトランジットがあったとしても結構楽しむことができます。
ただ、やっぱり飛行機を待って空港にいると、信じられないくらい暇な時間が訪れることもあります。空港内のレストランでお腹いっぱいになり、お土産も買って、散策も一通りし終わり、体は疲れているのになかなか寝れず、本を読む気にも英単語を勉強する気にもならず、スマホすら触る気にならない虚無の時間が。
そんな時に、椅子に座りながらボーっと通り過ぎる人々を見ていると、お得いの馬鹿みたいな妄想癖が働いて、「もしここで何か事件が起きたとしたら自分はどう行動するだろうか」、とか、「もしここで怪しい人物が誰かのスーツケースを奪って走り去ったら僕はどうするか」、なんていう中二病たっぷりの想像が膨らみ、興奮してきます。
その愚かな妄想が、映像作品として目の前に出現しました。ほとんどが空港内で完結するアクションの物語です。僕はこの作品を見つけた時点で半分勝利を確信していました。
「どこで」物語が展開されるか、というのが僕にとっては結構大事な要素であることを今理解しました。
空港が舞台のアクション映画があればいいなと、絶えず想像をしていた渦中、この映画と奇跡的に出くわしたので、その大事な要素がバチッとパズルのラストピースのようにはまったような気がします。
2 胸糞要素
ただ、死人の扱いは胸糞でした。
エンタメアクション映画にしては、ちゃんと人が死にました。それも、英雄的な死に方ではなく、突然、完全なる被害者として人が死んでいきます。
そして、そんなに死をしっかりと見せるのだから、殺された人が物語に関わったり、主人公らの心情に何かの変化を与えるのかと思ったら、一切そんなことはありません。
彼らはただ、死んだ!という衝撃だけを与える役目として映画に登場したのです。そういうことをすると映画がぺらっぺらの紙のように薄い印象になってしまいますし、なにより観終わってもの凄くもやもやしました。
ハリウッド娯楽映画の例に漏れず、最後は主人公とその仕事仲間たちが和気あいあいとして終わります。でもそこに、上司が二人いないわけですし、主人公は人を殺しているわけですから、どこか心にひっかかる悪しき根があるに決まっているのに、ハッピーエンドが突き抜けます。……非常にもやもやします。
また、途中で起こる映像的に見せ場の戦闘シーンがあります。ただそれは、お互い大切な人を人質に取られた人間同士の悲しい戦いです。本当は殺したくないのに、人質を取られているから戦うしかない者の表情は見るのも辛く、正直胸糞でした。こんなに辛い気持ちになる戦闘は、アクションエンタメという感覚とはかけ離れていました。僕の中でエンタメに彩られたアクションというのは、アクションの派手さや工夫に見どころがあり、戦闘によってどちらかが死ぬことに対する恐怖を感じさせないはずだからです。
それから、人質をとった犯人に対する怒りも湧き上がってきて、進撃の巨人風に言うならば「鳥かごの中に囚われた屈辱」を思い出しました。
死にまつわる部分だけは、極めて不快で、モヤモヤが残ったのが事実です。
それ以外は楽しかったです。冷静に考えたらこうはならないだろ、というツッコミどころがありながらも、勢いでそれっぽく見せて進んでいく疾走感が気に入りました。