映画感想『ヴェノム:ザ・ラストダンス』
1 あっという間の映画
これはいい意味でもあり、悪い意味でもあります。
とにかく展開が早すぎます。
「〇〇を呼べ!」と軍のおじさんが支持したら、次のカットですぐにそれがやってきます。追跡者を放て、と悪役が言うと、次のシーンではすぐに敵が激突してきます。
ヴェノムとエディが離れ離れになった!と悲しんでいると、数分後にはすぐに2人は合流します。
....は、早い!
確かに展開が目まぐるしいという点ではこの早さは生きていて、序盤から終盤まで見応えがありました。けれども感情が追いつきません。楽しい感情を引きずったままちょっとしんみりして、二つの混ざった感情を抱いていたら恐怖がやってきて、驚きがやってきて、と、世界が加速して僕だけそこに置いていかれる感覚がありました。
比喩ではなくジェットコースターに乗った感覚ですね。よく「ノンストップアクションムービー」と宣伝される映画がありますが、そう名付けられた映画の中で1番ちゃんとノンストップをやっている映画なのかもしれません。
2 悲しい
感情が置いていかれつつも、結構悲劇的な展開に驚きと悲しみを抱いた時間は長かったです。
人もシンビオートもバンバン死んでいきます。エディが自身で人を殺している瞬間もありますし、次々とシンビオートが完全体になり、ワクワクしたと思いきやあっという間に敵に殺されていきます。最終的にはヴェノムも.......。
あとですね、敵が強すぎます。要は不死身という事で間違いないでしょうか。倒しても倒しても起き上がってきますし、後半に弱点が明かされるのかと思いきや、何にもです。そりゃそんな奴を相手にしたら、兵士もシンビオートも死ぬに決まってます。暗い話になるに決まってます。
そして人間も、エディとヴェノムも、皆が皆その場その場での悪手を打ち続け、悪い展開がどんどん悪くなって、結果ヴェノムは死んでしまうわけです。あぁ悲しい。
観ている時も観終わった後も、「楽しい!」「楽しかった!」という感想が出る前に少し引っかかったり、ヴェノムとエディの掛け合いはやはりとても面白かったのにやや印象が薄いのは、その悲劇性と絶望性があるからかもしれません。
3 ちゃんと死んだ
もしかしたらヴェノム生きてるかも、という希望は些か残しつつも、映画のラストは2人の別れで幕を閉じました。
あぁ悲しい....ですが、きっちりと2人の別れを描いたのは素晴らしいと思いました。ラストダンスといっても、どうせ2人が仲良く歩くシーンで終わるんでしょという甘い気持ちが残っていましたが、そこを製作陣はキッパリと切り捨てました。エディが1人で自由の女神を見つめるラストはなかなか哀愁が漂っていてよかったのではないでしょうか。未亡人の佇まい。
この世に生を受けた以上、僕たちは必ず死に、永遠を誓い合った人でもどこかで別れがくるのです。それの疑似体験をさせられた気分で、悲しかったし、苦しかったですけど、ヴェノムの決断と、エディの前を向く姿に心を打たれ、僕もまた今を大切に過ごそうと思うわけです。