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映画感想『The Day After Tomorrow』


1 愚かな人間

人間というのは愚かな生き物ですよね。自分たちの振舞いのせいで地球にガタがきて、この映画の場合は氷河期が訪れたのにも関わらず、人々は被害者のような表情をして逃げ惑い、理不尽な仕打ちから生き残れるようにと祈ります。

僕もまた、人々が虚しく凍り付き、ハリケーンで吹き飛ばされ、洪水に飲み込まれるさまを見ていて、可哀想だと思いました。やはり僕は人間で、地球に散々迷惑をかけておきながら、その恩恵だけがあればいいと思っているのです。決定的な証拠に、主人公たちが知恵と勇気を振り絞ってハリケーンをやり過ごす場面では、絶えず彼らを応援し、逆境を振り払ってくれと願いを込めていたのです。

この映画が上映されて、それでも人間は地球を破壊し続けています。現実に氷河期が訪れる、なんていう見出しを見たこともあります。結局僕たち人間は、この映画の登場人物たちと同じ道を辿っているだけにすぎません。どうせ、手遅れになってから団結し、なんとか危機を乗り越えるのでしょう。その過程で何百万人が死ぬんでしょうかね。この映画で危惧されていることを何も理解していない人間は本当に阿保らしいです。

きっと、僕も含め、個人では人間の振舞いのおかしさや、地球温暖化の脅威を感じているはずです。でも、誰かと一緒にいたら地球環境のことを念頭に置いていてもゴミのポイ捨てをしてしまうように、一人二人と固まっていった時に、人間は愚かで無知な存在に成り代わってしまうのです。

The day after tommorowはこのままだと本当に起きてしまうでしょう。

2 映画として

洪水や巨大ハリケーン、寒さががやってくる中盤はまさに様々な恐怖が殴り掛かってくるようで見ごたえがありました。都市があっという間にハリケーンに飲み込まれ、人間たちが全く持って何もできていない状態なのが、絶望的でゾクゾクとしてきました。

しかし終盤、一番のクライマックスが近づいてくるはずのところでは、僕は眠気を隠せませんでした。理由は単純明快で、雪ばかりでつまらない、ということです。図書館にいる息子も、息子の元に向かう父も、どらも雪! 乗り物が動かない! 仲間が死にそう! 凍り付いてしまいそう! の連続で、同じような風景で奮闘するので、奮闘しているところ申し訳ないですが、終盤はもう見飽きてきます。途中頑張って船やオオカミを出してみたりしていましたが、そいつらは逆に作品のリアリティラインを損なっている気がして、いまいち効果がなかったな、と思います。

加えて、異常気象が強すぎて人間如きが相手にならないというのも大問題です。地球の猛威(絶対零度の吹雪)が訪れた時、人間には我慢して耐えることしか選択肢がありません。我慢の仕方に様々な方法はあるのでしょうが、やはり映画としては、何かを能動的に倒さなければ、前半部で大破壊を許していた分の鬱憤が晴らせません。終盤の盛り上がりが「耐えるだけ」というのはなかなか、映画としては詰まらないですよね。映画としては。

3 結論

真面目に観ると、人間として情けない気持ちになったり、人間という群衆に対する怒りが沸きあがる社会的な作品に感じられましたが、油断して映画として観ると、ただ寒さに耐えるサバイバル映画を、やけに壮大なスケールで描いているように感じる作品でした。
面白かったです。

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