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映画感想『カメラを止めるな』

複雑な難解事件を解いたのような爽快感がありました。
おかしな話ですよね。たがが低予算で誰も期待していない映画を作るだけの話なのに、ここまでの感動と、ここまでの綺麗な伏線回収と、ここまでの面白さを作ることができるなんて、爽快感を越えて嫉妬心まで呼び起こされたくらいです。

映画を撮っている人たちを映すドキュメンタリーはよくありますが、その映画を撮っている人たちを題材として映画を作るという三重構造のアイデアには度肝を抜かれましたし、何よりそのアイデアをこんなに面白く綺麗にまとめる手腕に拍手を送りたいです。

青春

なんというか、ハプニングだらけのワンカット撮影を終えた時の、一人一人の笑顔が本当に眩しくて、まるで高校生の全力で挑んだ一度きりの文化祭を観ているかのような青春を感じました。

やっぱり創作、とりわけ映像作品というのは、少なからず子どもの頃に見た映画やテレビの影響の地続きに存在し、どれだけ大人になろうとも子どもの部分が残っている人たちが作っているものです。そりゃ確かに大人になれば、上からの圧力もありますし、それぞれの家庭の問題に責任も生じ、個人の考えか凝り固まって他人への理解がなくなったり、アル中などの身体的な問題とも闘わなければならなくなるでしょう。子どもの頃のようにはっちゃけることはできないわけです。でもそれらを乗り越えて一つの映像作品を作るとなった時、考え方は違えど創作という茨の道を選んだ人たちは、もう一生味わえないと思っていた、思い出すだけで胸が締め付けられて理由のわからない涙が出るような青春の世界に再び舞い戻ることができるのです。

その素晴らしさに爽快感を抱き、自分も味わいたいと思う嫉妬心が生まれました。この映画の主人公たちは、作った映画で賞を獲ったわけではありませんし、各々の抱えている問題が解決したわけでもありません。ただ、一緒に苦難を潜り抜けて映画を作ったという共通体験が、ワンカットムービーという危機感の効果も相まって、各々の心に大いなる意味と価値を与えるのです。

結果ばかりを追い求めて創作していた自分が少し恥ずかしくなるのような、むしろ少し救済を与えてくれるような……。

もっと頑張って、本気で、楽しんで創作活動に勤しもうと思わせてくれる映画でした。クサい感想だなと思いつつも、クサくとも真っすぐやりたいことと向き合うことの力強さを訴えているのがこの映画だと思うので、今なら堂々と言えるような気がするのです。

がんばろ。

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