「お金」を知ると、世界の見る目が変わる
前回に引き続き、「お金」をテーマにお話をします。
前回の投稿では、そもそも、なぜ、どのように人間がお金を生み出して、発展させてきたのかを解説しました。
(そういえば、「お金」ってなんだっけ…?―お金の誕生から会社、税金までをシンプルに解説!―|加藤将馬|note)
そこで、今回は、身の回りから、通貨と経済について考えてみます。
スーパーのすごさ
前回の投稿でも少し触れた通り、かつての市場ですら画期的でしたが、現代のスーパーはそれをはるかに凌駕します。
たとえば、空腹で魚や肉が欲しい時。
昔なら、誰か数人がきまぐれに持ってきたものから選び交渉する必要がありました。その種類や量など、妥協はつきものだったはずで、「別の種類の魚が欲しかったな」「もう少し量が欲しかったな」と思う場面も多々あったはずです。
しかし、今では、衛生的にさばかれパックに包装されたものの中から、好きな種類のものを好きな分だけカゴに入れればいいのです。
それどころか、国内だけでなく世界中から集められた、豊富な野菜、果物、飲み物などがあり、安全性や品質も厳格に管理されています。
生産地を見れば、『フィリピン』『ガーナ』『オーストラリア』『ブラジル』など、あらゆる国から、その最寄りのスーパーまで、はるばる届けられていることがわかります。
たとえば、フィリピンのバナナ1つを想像しても、それを適切な場所と管理方法で何か月もかけて育て上げ、十分な品質のものを選抜して、日本のスーパーまで運ぶというのは、想像を絶する苦労ですね。
それをたった数百円で手に入れられるのは、ひとえに、人間が、想像を絶するほど複雑で巧妙な経済システムを築き上げたからです。
人間がお金を信頼していなければ、生産者は輸送業者と交渉がうまくできないし、輸送業者と店舗の経営者、そして、店舗と消費者とのやり取りも不可能に近くなります。
お金がない時代と、お金が身近になった時代
よくよく考えてみれば、現代では、自分では食べ物を得るための狩りをする必要すらなくなり、ほとんどの人は狩りの仕方を知りません。
しかし、それでも、経済的に豊かな個人は、一生、食べ物に困ることはありません。
それどころか、経済力さえあれば、あらゆる情報を書籍から手に入れたり、著名な音楽家の演奏を聴けたり、遠くへ簡単に移動できたりする。
そんな、あらゆる物や経験を享受できる権利が、一部の権力者だけでなく、多くの一般人にも与えられている現状は、歴史を振り返るととても特別です。
しかし、複雑かつ大規模に発達した経済システムには批判がないわけでもありません。
良くも悪くもお金を軸に社会が回る現代では、矛盾した現象が起きています。
お金は、元々、人間の暮らしを便利で豊かにするために、人々が知恵を絞って生み出し、発展させてきたもののはずです。
しかし、今では、そのお金を得るために、少なくない数の人が、やりたくないことをやることに人生の中の膨大な時間を費やしています。
さらには、お金は何かを得るための道具、つまり「手段」であるのにもかかわらず、盲目的に神格化され、「目的」とみなす個人が大勢いる。
『「〇〇が欲しい」「〇〇がしたい」、そのために「〇〇円」が必要だ』と思うのではなく、ただ「お金が欲しい」「大金を稼ぐ人は成功者だ」と信じるようになったのです。
史上最も、経済が発達して、お金の便利さも増した現在において、多くの人がお金の便利さを知らず、お金の不満を毎日漏らしていることは、大いに皮肉です。
すでに、人間のためにお金を使うのではなく、お金のために人間が動いている側面もあることは否めないように思いますが、今後は、さらに経済の複雑さが飛躍的に増していくことが確実です。
人間がお金をコントロールできるようになるとは考えにくいため、非常に大きな懸念材料だと、私は思います。
【筆者の詳細について】
―加藤将馬:著者、講演家、幸福学&ビッグヒストリー研究家
・加藤将馬のウェブサイトはこちら
【著書の紹介】
宇宙と人類、138億年ものがたり ―ビッグヒストリーで語る 宇宙のはじまりから人間の未来―
紙の書籍:1260円→電子書籍版:0円(変更の可能性あり)
本書は、宇宙と人類の歩みを考察する一冊です。
「宇宙が生まれた頃はどのような姿だったのか?」「なぜ19万年間も狩りをしていた人間は、今では宇宙進出を始めているのか?」「気候変動やAIなど、これからの人間社会はどうなってしまうのか?」といった大きな問いについて説明します。
そして、本書の最大のテーマは、「人間は文明を発達させて地球の覇者となったのにもかかわらず、なぜ世界には数多くの自殺者がいて、不幸が消えていないのか」というものです。
138億年にわたる壮大な物語を堪能していただくと同時に、人間社会のあり方にまで思考を巡らせてもらうことを本書では目的としています。そして、私がなぜ本書を書き、ビッグヒストリーを通じて何を伝えたいのか。ぜひ、最後まで見届けていただけると幸いです。
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