毎日コツコツ料理暮らし その75「ふつうの家庭料理」
みなさん、こんにちは。毎日コツコツ料理暮らしをするためのコツやヒントや役立つ情報などを伝えています、ショクタクの久保です。
今、無印良品のデザインを手がけていますプロダクトデザイナーの深澤直人さんの『ふつう』という本を読んでいます。前職がデザイナーだったというのもあり、深澤直人さんの環境から人が無意識に意味を見つけた行為の痕跡などからデザインをしていくプロセスには感銘を受けていまして、それは俳句のような世界観でもあり、ありのままの景を客観的に描写するのと似ています。
私は、新しいことをするにしても、「ふつう」の無意識にしているところの中にこそワクワクするような発見があるといつも思っています。ちょっとしたことの違いを見つけたり、「ちょっとやり方をかえたら、すごくよくなった!今までの悩みが吹っ飛んだ!」なんてことは多々あります。
人の意識や欲望はドーナツ型になっていると昔から考えています。勝手に「欲望のドーナツ化現象」なんてことを言っているのですが、人は近すぎると慣れすぎて「ふつう」になってしまい、意識しなくなっていきます。
私は地元は徳島で、徳島を離れるまでは阿波踊りはそんなに好きというものではありませんでした。父が有名蓮で踊っていたりと今思えばすごいコトかもしれませんが、大学で関西に在住してから、少し距離を置いてから、阿波踊りの良さに気付かされました。近いほど、見落としていることが多いことはいろいろなところにあります。人はドーナツの穴の意識しなくなったところで生かされているというのはあると思います。
今回のコロナによって、ドーナツの穴の部分を意識させられることとなって、「ふつう」の大切さに気付かされたことがたくさんあります。意識をドーナツとして、ちょっと遠くを見るよりも、あんドーナツのような丸い形であんの部分を意識することで、とてもワクワクすることがたくさんあります。
料理での「ふつう」は定番料理というものに当てはまるかもしれません。
肉じゃが、ひじきの煮物、味噌汁、炊きたてのご飯、梅干し、鮭の塩焼き、豚汁、カレーライス、オムライス、とんかつ、ハンバーグ、豚の生姜焼き、寿司、ステーキ、水炊き、すき焼き、コロッケ・・・
みんなが好きな料理は定番料理なものが多いと思います。ちょっとずつ時代とともに定番料理も変化したり、地方によっては、肉じゃがなら豚肉か牛肉で肉の種類が違うなんてこともあります。地方で当たり前と思っていた料理が、違う地方では当たり前じゃあないなんてこともあります。
これが面白いところだと最近はつくづく思います。それぞれの「ふつうの料理」が他のところでは「ふつうじゃあない料理」で真新しいものだというのは、料理以外でもたくさんあります。こういう発見こそがおもしろいところでもあり、新しいクリエイティブが生み出される根源だと思っていますし、会話のネタにもなります。
人はあまりにも風変わりなものは違和感を感じます。トレンドの移り変わりがよくあるファッション業界でも、人が認識できる許容範囲内でトレンドが変化していっています。
ファッションではトレンドの変化は新しいアイテムを使いこなすというようなこともありますが、シャツなら素材感、サイズ感、色などの真新しい感じではない変化でトレンドが移り変わっています。シャツという定番の「ふつう」はそのままで、シャツという型の中で変化を加えているだけです。
私は料理をメインとして仕事をしているにあたっても、ファッションの移り変わりのように定番の料理の型内で変化を加えることで「新しいふつう」を作るということをしています。
定番すぎると人は飽きてきます。例えば肉じゃがなら「えー!また肉じゃがなの・・・」なんて声が聞こえてくるかもしれません。ここでは肉じゃががしょっちゅう出てくる家か場所にはなりますが。
肉じゃがなら茶色系が多いイメージですが、それにカラフルな食材を加えてみると、肉じゃがだけどいつもの感じがしないとなります。視覚情報は味に影響も与えますし、ドーナツの穴の部分=定番料理の美味しさに改めて意識させることにもつながるかと思っています。
料理は、こうでなくてはならないという固定概念が多いです。それはレシピだけが広がりすぎて、それに固着しすぎてしまう傾向があるからかもしれません。変わらない美味しさという普遍的なふつうの料理もありますし、私もそういうものは残していきたいというのがあります。「かわらないふつう」は人の生活に無意識に馴染んで生きづいています。
料理のレシピのデメリットは、食品の移り変わりや技術革新、食材が場所によって味のばらつきなどがでるなど、レシピを作った人と同じ環境はないし、どんどんと移り変わってきていることです。お米の洗い方も今と昔では精米機の精度が上がって、そんなに洗わなくてもよくなっています。
料理だけではありませんが、当たり前のふつうがどんどんとゆるやかに変化していっています。それぞれの「ふつう」に向き合うと新しい発見があるかと思います。
毎日料理をしている人なら、いつも作っている自分の定番料理の食材を少し変えてみるなど、小さな変化をしてみると「あたらしいふつう」に出会えるかもしれません。毎日の生活はふつうで生かされています。生かされているという部分を意識できるようになってくるとすごいなあっていう発見もたくさんあります。
ぜひ、いろんな「ふつう」の発見をしてみてくださいね!
定番料理に変化を加えるなら、薬味を加えるなども効果的です。定番料理の小さい変化のつけかたも次回以降で紹介したいと思います。
ふつうを意識してみたい方は深澤直人さんの「ふつう」を読んでみてください。
いろんな「ふつう」について書かれています。