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【誰も知らない卵の事実】

生産者にしかわからない本当のこと

卵。
食べない日はないと言えるほど我々の食に欠かせない食材の一つですよね。
その種類もピンからキリまであって、買う時の基準も十人十色。
選べる自由があり、好きなスタイルで購入できる豊かな状況とは裏腹に
生産者しか知らない様々な事実や葛藤や分断が起きてるのはご存知ですか?
ちょっとネガティブなイントロに聞こえるかもしれませんがいつもより
もう一歩入り込んであなたの卵に対する知識や選ぶ基準のアップデートの参考になればと思い、今日は書きます。
ちょっと文章長いです、そして最後はそこに着地するのか!って感じですがこれでも頑張って編集したつもりなので少しお時間を頂き、お付き合いくださると幸いです。

ところで、あなたは何を基準に卵を選びますか?
有精卵、平飼い、サイズ、価格、味 etc…

うちのようなお店で買い物してくださる方々はやはり
平飼いの有精卵を正義とし、こだわり養鶏所の卵を選ぶ傾向にあります。
確かに言葉の響きからして優良な卵そのものだと思ってしまいますが
これにも本当にいろんな背景があります。


平飼いで元気に育つ鶏

平飼いのリスク

少し話はズレますが、昨年12月より当店でも卵の取り扱いがスタートしました。滋賀県の養鶏所さんのゲージ飼い無精卵です。初めてその養鶏所に伺った時に社長さんから本当に様々な卵の話を伺い、その上での卵に対する強いこだわりに僕が惚れてしまい、当店で扱いたいと思ったという流れです。

社長はかれこれ35年以上にわたり養鶏所を営んでおり、その歴史の中であらゆるニワトリの育て方を実践し今のスタイルに落ち着いたとおっしゃいます。

さて、本題ですが
“有精卵の定義”をあなたはご存知ですか?
有精卵にはちゃんと定義があり、その定義をクリアして初めて商品に“有精卵”と表記できるんです。

-有精卵の定義-
メス100羽に対してオス5羽ほどがいる割合で平飼いや放飼いにし、自然交配できる環境で生まれた卵

そう、有精卵の定義の中に既に平飼いが条件として入ってるんですね。
ニワトリがニワトリらしく生活しながら交配を経て産まれた卵が“有精卵”という視点からの定義だと思われます。社長も過去に平飼いを実践されていたそうで実際にやってみて気づいた大きなリスクが存在するんです。

それは“感染病”です。

ニワトリは人間ほど視力や嗅覚が発達してないので、放飼いの中で誤って自分たちの“糞”を食べてしまう事があるそうです。これが原因でニワトリ特有の病気である“コクシジウム”にかかってしまい、この病気が誘発する感染病が今でも問題になっています。


そう
鳥インフルエンザです。


鳥インフルエンザの影響

鳥インフルエンザによる決まり事は様々ありますが、とにかく一番悲惨なのが殺処分です。一番最近だと昨年末に埼玉の養鶏所にて鳥インフルエンザにより13万羽の焼却処分が決定し、かれこれ今までに1500万羽が犠牲になり、命の尊さの問題が第一にきますが、感染拡大防止策として焼却は義務付けられており、畜産農家として膨大な資産を失うのはこれ以上にない失望感だと思います。

社長も実はこの経験があります。
当時飼育していた7万羽の鶏を処分する時の気持ち、考えただけで胸が痛みます。社長はこの事件の後、卵を提供していく上で本当に大切な事は何なのか、長い間自問自答を繰り返します。

近隣への感染の被害、風評なども含め鳥インフルエンザによるリスクは本当に深刻であり、畜産農家さんにとって切っても切れない問題です。その反面で熱心な農家さんによる平飼いの技術も昨今では著しく発達しており、地面にネットを張り糞を落とす“二層式平飼い”などの方法で安全性の高い有精卵が流通している側面もあります。

存在するあらゆるリスク、それと立ち向かう同業者
自分の経験、顧客のニーズ、風評、分断…
そんな中、社長が出した答えは実にシンプルで正直なものでした。



日のあたるゲージで1羽ずつと向き合う

元気で健康なニワトリを0歳から育てる

社長の頭の中でめぐる様々な問題が少しずつまとまり最終的にたどり着いた答え。
それは

“元気で健康なニワトリが優良な卵を産む”


これでした。
ニワトリが元気に、そして健康に育てる環境でニワトリの不完全な部分を人間がフォローし、優良なニワトリとして成長してもらう事が一番だと考えたのです。

何か一つを優先すると何か一つが犠牲になる。だったら全てのバランスをできるだけ歩み寄らせてニワトリの健康を最優先することを誓ったのです。

通常の養鶏所では生後からある程度育ったヒヨコを仕入れて、7万羽ほどを一斉に飼育しながら卵を生ませます。ゲージには詰め込めるだけのニワトリを詰め込み、日当たりもままならない環境でひたすら排卵だけを煽るような生育スタイルです。

ですが、社長のところでは生後すぐのヒヨコを仕入れ、最も適した室内温度を24時間管理して育て、大人になったら1羽1羽の顔が見えるくらいゆとりのあるゲージの中で飼育します。日当たりもよく、餌も栄養価の高いものを独自配合して自分のペースで食べてもらう。常時15000羽以上は飼育せず、養鶏所の従業員さんたちと常にニワトリの健康情報をシェアします。そう、まるで自分の子供を育てるような気持ちでニワトリと向き合います。
“私が育てている”という自覚と行動がニワトリの健康を守っているのです。
驚いたのは、僕が養鶏所に伺っても鶏舎には案内されなかったことです。いつ、どこからどんな菌が入り込むか分からないので部外者も立ち入り禁止なのでしょう、当然といえば当然ですがどんな小さなことでも真剣に考え実践されてる様子が伺えて感動しました。


言葉ではなくポリシーが見えるものを

平飼い、有精卵、こだわり
言葉にする事は時に簡単であり、時に疑わしく、また時には言葉では足りない事だってあります。実際社長にお話を伺って、思ってもいない事実が次々と出てきて本当に勉強になりましたし、やはり話を聞かないと分からない事だらけだなと思いました。ここでお話ししたのは有精卵が実は危険だとか平飼いは危ないとかスーパーの卵は買わない方が良いとかいうことではなくて、せっかくこだわって選ぶなら表面的な言葉ではなくその後ろにある農家さんの本当のこだわりを知った上で選ぶ方が良くないですか?という事なんです。

前述したとおり、社長は日々努力しながらニワトリを大切に育てておられます。その賜物として生まれた卵の味はこれまでに無いくらい臭みがなく、というか今までの卵って臭みがあったんだなと気付かされるレベルで、白身の弾力もプリプリで黄身のコクもしっかり味わいがあります。ですが、何か手を加えて卵の味わいが豊かになったというよりも、健康的に育つ事で邪魔なものが削ぎ落とされ卵本来の味が前面に突出しているような印象の、ピュアな味わいという表現がピッタリな仕上がりです。豊潤な卵の香りは今まで味わった事がないようなレベルです。


プリップリの白身とコクのある黄身



卵の味そのものを追求するのも良いですが、その前にニワトリの健康を追求する事で得られるものがこんなに大きいとは思いもせず、既に食べてくださっているお客さんとも感動しています。

ですが、これを販売する時の言語の表示はせいぜい“こだわりの卵”くらいの表現しかできず、なので店頭でもここに記した内容と同じくらいのお話をさせてもらい、ご購入頂いてます。ポリシーあってこその品質である以上、やはりご購入頂く方には全てを知って頂きたいですし、間違った情報も多々流れる世の中でそろそろGoogleだけが正解みたいな体質も変わっていって欲しいという気持ちがあってのことです。

自分が社長から聞いた話はあくまでも例の一つにしか過ぎませんし、養鶏所の数だけストーリーとポリシーが存在するんです。“平飼い 有精卵”で検索して確保した安全・安心なんて誰も保証してくれません。何にしても選んだ自分に責任があるのであればもっといろいろ知っていきませんか?いろいろ教えてくれる店や農家さんと繋がりませんか?そんな思いで店をやってます。答えは一つじゃ無い、だからこそ常にいろんな情報を集めて自分でアップデートしていくのです。自分の正義は自分で作る。


卵の話から最終的に脱線したかもしれませんが、卵に学んだ考え方でした。
最後までお読み頂きありがとうございました。





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