非特異的腰痛に対して股関節周囲筋の強化は効果的なのか?
抄読文献
要旨
【目的】
腰痛(LBP)は、西洋諸国の人口の70〜80%に影響を与える健康問題です。
腰部と股関節の間の生体力学的関係から、この関節の筋肉を強化することが、LBPの症状を改善する可能性があると考えられています。
この研究の目的は、LBPを持つ人々の痛みと障害を減少させるための股関節強化運動の有効性に関する現在のエビデンスを評価することです。
【方法】
臨床試験は、2022年9月までに公開されたPubMed、PEDro、Scopusデータベースから収集されました。
Preferred Reporting Items for Systematic Review and Meta-Analysis(PRISMA)ガイドラインに基づき、CASPおよびPEDroツールを使用して方法論的品質評価を行い、LBP治療の一部として股関節強化運動を含む研究と、痛みおよび/または障害パラメータを測定した研究を選択しました。
検索で特定された966の記録の中から、設定された選択基準を満たす合計7つの研究が選ばれました。
【結果・結論】
全体として、股関節強化運動を行った参加者は、痛みと障害の面で有意に改善しました。含まれる研究の方法論的品質は「良好」と評価されました。
結論として、股関節筋力強化運動の追加は、LBPと相互作用し、痛みと障害を効果的に改善します。
要点
本システマティックレビューは腰痛、特に非特異的腰痛に対して、股関節周囲筋の筋力強化が効果的であるという報告が見られるのを受けて、そのテーマに関して行なったものになる。
上記のような問題提起のもと、股関節周囲筋の筋力強化を明らかにするために調査された。
PICOを上記のように設定し、スクリーニングした結果、966件ヒットし、そのうち条件を満たすものは7件まで絞られた。
結果として、メインに解釈する痛みに関しては、6件が調査され、そのうち3件で股関節周囲筋トレーニングが有意に疼痛を軽減させると示された。
その他、ODI等の総合的な機能評価に関しても改善が見られた報告があった。
筆者は上記のように股関節周囲筋と腰痛の関連を考察している。
先行文献の報告も踏まえて、ターゲットは中殿筋、小殿筋であると述べている。
それらの弱化が骨盤コントロールの不安定性を生み、腰椎部への負荷を増強させるとしている。
それらを踏まえて、筆者はこのようにプログラムを提唱している。
ここには直接の体幹筋のトレーニングは含まれておらず、股関節周囲筋を重点的に強化するプログラムであることが非常に興味深い。
どのように活用するか
非特異的腰痛はその状態を呈しているものは多く、明確な解決策が示されていないことが問題となる。
それらに対し、心理的介入や、脱感作などさまざまな方法が検討されている。
本研究では、それらよりも非常にシンプルで、股関節周囲筋のトレーニングにより、腰痛を軽減させる効果がある程度あることを示している。
少なくともネガティブな要素はなく、安全にプログラム展開できることも魅力的である。
エビデンスに基づいて、股関節周囲筋の強化を行うことにつながり、特に中殿筋、小殿筋は重要な要素であろうという結論を活用することもできる。
股関節周囲筋の強化は腰部痛が強い時期であっても、条件や部位によっては行うことは可能であろう。
その中で疼痛を観察しながら、プログラムに組み込んでいくことが有効であるかもしれない。
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