
オリーブオイルの警察官は、繊細な味覚をもつマッチョだ。
世界でもっとも偽装されやすい食品はオリーブオイルだといいます。
海外ではしばしばオリーブオイルの偽装が発覚して騒ぎになります。
筆者の記憶に残っている例をあげると、もう10年以上昔の話になりますが、アメリカの高校生のグループが夏休みの自由研究として
「ニューヨークで販売されているオリーブオイルのうち、表示が偽装されているものは何パーセントくらいあるのか」
という調査をしました。
「アメリカの学校にも夏休みの自由研究があるのか?」
「高校生になっても夏休みの自由研究をさせられるのか?」
といった突っ込みは、ここではスルーします(笑)。
とにかく、調査は行われました。
結果はどうだったかというと。
ニューヨークで販売されているオリーブオイルのうち、7割が偽装されていることがわかったのです。
「何パーセントか」を調べるつもりだったのに、その答は「7割」でした。
レポートを最初に読んだのは、もちろん彼らの学校の先生でしたが、その先生もさすがに事の重大さに気がつきました。
先生はそのレポートを新聞社に送りました。
新聞社はそれを全国版の記事にしました。
映画の予告編のセリフみたいな言い方をすると、「全米が衝撃を受けました」。
▽
オリーブオイルの偽装には、おもに2種類あります。
1つは、品質の偽装。
エキストラバージンではないのに、エキストラバージンを名乗る
コールドプレスではないのに、コールドプレスを名乗る
というもの。
もう1つは、産地の偽装。
とくに生産国の偽装です。
イタリア産ではないのに、イタリア産を名乗る
ギリシャ産ではないのに、ギリシャ産を名乗る
というもの。
なお、オリーブオイルのもととなるオリーブには、品種がいろいろあります。
コロネイキとか、オヒブランカとか。
したがって理論的には品種の偽装というのも考えられますが、実際にはあまりないようです。
(日本の米の場合、コシヒカリでないのにコシヒカリを名乗る、的な「品種の偽装」の事例があります)
▽
イタリアにはオリーブオイル専門の警察が存在しています。
裏を返せばそれだけオリーブオイルの偽装が多いということでしょう。
オリーブオイルの偽装を見分けるのは機械や化学の方法では不十分。
人間がテイスティングすることで判別するのが、もっとも信頼できるそうです。
したがって、オリーブオイルの警察官はテイスティングの達人でもあります。
オリーブオイルの偽装が多いのは、それが大きな利益を生むから。
マフィアの資金源になっているほどです。
マフィアと戦わなくてはならないため、オリーブオイルの警察官は武闘派でもあります。
つまり、オリーブオイルの警察官になりたければ、
ティスティングのためにすぐれた味覚・嗅覚がなくてはならない。
マフィアと戦うためにマッチョでなければつとまらない。
文武両道が求められる職業なのです。
おそらく、簡単になれる職業ではないはず。
オリーブオイルの警察官は、もしかすると、イタリアの子供たちがもっとも憧れる職業の1つなのではないかと思いますが、これはあくまで筆者の想像にすぎません。
