SDGsレポート(001)まるで!ホテルのような〇〇〇〇〇/SDGsは内から外へ(着眼大局と着手小局)
2022年2月に発刊予定の拙書『(仮)未来から愛される会社~持続可能な組織づくりとSDGs経営』の中から、
筆者が、地域の中小企業における「これこそ!SDGs経営(ESG経営)のモデル」と感じた取り組みを「SDGsレポート」として、先出しで少しずつご紹介してまいります。
みなさん!まずは、こちらの写真をご覧ください。
いかがでしょうか? ホテルのような空間が広がっています。
続いて・・・2枚目の写真!
モダンな床に、何やら数多くのモニターのようなものがあります。
最期の・・・3枚目の写真!
窓の形や角度に特徴が、何やらハンドルのようなものがあります。
さて正解は・・・
第一昭福丸!遠洋まぐろ延縄漁船です!かなりの衝撃!驚きです!
私の父親がフェリーの機関長だったこともあり、子供の頃、船に乗ってデッキや機関室を見学した記憶をたどると、
客室部分は綺麗でゆったりとしていましたが、デッキとか船員の部屋などの執務・従業員スペースはもっと無機質でゴツゴツしていた印象が記憶に残っています。
このマグロ漁船、それもそのはず、2020年の「グッドデザイン賞」を受賞しています。(写真は、株式会社臼福本店ホームページより)
SDGsは内から外へ(着眼大局と着手小局)
船の持ち主は、株式会社臼福本店(本社:宮城県気仙沼市、代表取締役社長 臼井壯太朗)で、創業は明治15年(1882年)140年の歴史を持つ会社です。
臼福本店、創業140年の時点で「SDGs」です。
世界における100年企業(一般的には、創業100年を超える企業)のうち、日本の「100年企業」の比率は、40~60%(統計の取り方にもより)といわれています。
帝国データバンクの2019年1月08日【レポート「老舗企業」の実態調査】によれば、業歴 100年以上の「老舗企業」は全国に約3万3千社という数字も出ています。
「老舗企業」の実態調査(2019年)業歴100年以上の「老舗企業」、全国に約3万3000社~ 「貸事務所」、「清酒製造」などが上位に ~https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p190101.html
さて、話をもとに戻します。
この第一昭福丸のコンセプトは「人が集まる魅力ある漁船」。
マグロ漁船としての機能性だけでなく、安全で仕事がしやすく、陸上にいるような“安心感”と“快適性”のある“乗組員ファースト”な漁船として建造されています。
SDGsでは「think globally, act locally」という視点が大切だ。ということを聞きますが、とかく「地球環境」「地域社会」といった大きな視点(外側を起点)で留まりがちです。※中小企業が取り組みずらいと感じるところ。
この第一昭福丸の取り組みはまさに「従業員(乗組員)」「職場(漁船)」といった足元の視点(内側を起点)から「不の解消」を実行に移した「think globally, act locally」の見本です。
この「think globally, act locally」は、春秋戦国時代の思想家・儒家でもあった荀子が残した言葉「着眼大局、着手小局」とも同義といえます。
「広い視野で物事を全体的に大きく捉え、本質を見抜くこと。そして、実際に取り掛かる際には、細かなところに目を配り、小さくそして具体的に行動することが重要である」は、まさしく経営そのものです。
特に、地域の中小企業における「SDGs(ESG)経営」においては、欠かせないポイントだと考えます。
なお、「地球環境」「地域社会」の視点と行動として、2020年8月には、クロマグロでは世界初となる“持続可能な漁業”の世界基準「MSC認証(通称:海のエコラベル)」を取得しています。
竣工式挨拶に込められた思い
最期に、第一昭福丸竣工式の際に、臼福本店・臼井社長が挨拶で語ったその言葉に「日本の漁業」への思いが込められています。ホームページから全文転載いたします。ぜひ、ご一読ください。
〜第一昭福丸竣工式 〜
株式会社臼福本店 代表取締役社長 臼井壯太朗 ご挨拶 (令和2年2月5日)
本日は御多忙中のところ、日頃より、公私ともに、大変お世話になっております皆様方に、遠方からも多数ご臨席を賜りましたことに、会社を代表いたしまして心より御礼を申し上げます。
また、新船第一昭福丸を建造するにあたりまして、弊社の新たなチャレンジに賛同をいただき、様々な無理難題に対して向き合い、こうして新たな船を竣工していただきました、吉田会長、木戸浦社長をはじめとする、みらい造船のみなさま、内外装を担当していただきました、nendoさま、乃村工藝社さま、長崎船舶さま、そして甲板から機関部まで、ご協力をいただきました関係各社、すべての職人の皆様方に、改めまして、心からの敬意と感謝を申し上げます。
もうかる漁業のプロジェクトを立ち上げましてから、4年と2か月。
時間はかかりましたが、おかげ様で本日竣工の日を迎えることが出来ました。この4年の間、私たち日本の遠洋まぐろ漁業者が行ってきた厳格な資源管理の成果もあり、大西洋とインド洋のまぐろ資源は回復傾向となりましたが、肝心の船を動かす乗組員は、まぐろ資源とは逆に減少をし続けおり、このままでは近い将来、各社労務倒産を起こしかねない、そういった危機的状況にもなってきております。
せっかく資源が増えてきても、その魚を取ってくれる船員さんたちがいなければ、船を造る意味がありません。
いま私たち日本まぐろ漁業は、過渡期にきています。若者は田舎を離れ、人はどんどん少なくなっており、漁業への就業者は年々減少しつつあります。どうにかして、このような状況に歯止めをかけていかなければなりません。
伝統ある日本のまぐろ漁業を次の世代へ繋げるために、まずは目の前にある問題を一つ一つ解決していく必要があります。
私たちがこれからやらなければならないこと、若者が参入しやすい、魅力ある産業へとこの漁業を変えていくこと、ヨーロッパ諸国のように日本の漁業も成長産業へと変えていかなくてはなりません。
今回の第一昭福丸のコンセプトは、人が集まる船です。長い洋上での生活を、ストレスなく、出来るだけ陸上に近い環境のなかで、安全で仕事がしやすい、より暮らしやすい、この船に乗ってよかったとみんなにそう思ってもらえるような、若い人たちにも、この船に乗ってみたい、ここで働いてみたいと思ってもらえるような、そんな想いのもと、みんなで船を造ってまいりました。
陸上並みの高速のインターネット環境を整備することで、洋上でも携帯で通話ができたり、インターネットTVで好きな番組が見られたり、TV電話を使った医療診断も可能になるはずです。
また、SNSを活用し、沖の情報を発信することで、一般の方々にも漁業への理解を深めていただくことが出来ると思います。
震災後に知り合えた友人たちにもご協力をいただきました。世界的デザイナーに監修をしていただいた船内空間で、陸上にいるような緑の香りを感じていただきたく、ダクトにリラクゼーション効果のあるエアアロマも設置させていただきました。
いままで漁船にはなかったものを、新たに取り入れることで、人が集まる、魅力ある環境を作れたのではないかと思います。
また会社としても、船を造っておしまいではなく、船が釣ってきた魚の価値を高める活動、差別化を図る活動も引き続き行っていきます。
MSCやMELなどの国際的な資源認証にもチャレンジをし、持続可能な漁業を目指し、トレーサビリティが明確な流通を確立させるための行動をします。
食の大切さを伝えるために、子供たちへの食育事業も継続して行ってまいります。
他にもいまやるべきことを考え、陸の社員一丸となって、未来を見据えた活動を実践していきたいと思います。人が集まる産業へと変えていくために、私たちも沖の乗組員たちに負けないよう、精一杯努力していきたいと思います。
本日は、引退した弊社の先輩方、私たちを育ててくれたOBの方々にもご臨席をいただいております。
先輩たちから受け継いだものを、いまを預かる私たちが責任をもって、次の世代へと繋げて行く所存であります。
かつて世界一だった日本のまぐろ漁業を、もう一度世界と闘える漁業にするために、いまやるべきことを実践 してまいります。
先輩方に於かれましては、どうかこれからも、ご指導ご鞭撻の程、何卒よろしくお願い申し上げます。
最後になりますが、本日お集まりの皆様方のご健康とご多幸、沖で働く各社各船の航海の安全と、大漁をご祈 念申し上げまして、簡単ではありますが、私からの挨拶にかえさせていただきたいと思います。本日は誠にありがとうございます。
実は。2013年5月19日に開催したドリームプラン・プレゼンテーション沖縄大会2013では「東北復興支援プロジェクトNever Forget 3・11」と題して、
宮城県気仙沼市から、塩田賢一さん(釜揚げうどん団平 店主)、臼井壯太朗さん(株式会社臼福本店 代表取締役社長)、及川洋さん(有限会社オイカワデニム 代表取締役社長)の3名にも沖縄に入っていただきました。
震災当日の様子や復興の現状、これからの気仙沼・宮城県・東北・日本で描いている「夢」についてもお聞きし、沖縄ドリプラでも最も意義深い大会となりました。あれから8年・・・またこうして『(仮)未来から愛される会社~持続可能な組織づくりとSDGs経営』の出版を通して、臼井社長や宮城県・気仙沼のみなさまと「つながり」を持てたことを、とても嬉しく思います。
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