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筍の木の芽焼

醤油の焦げる匂い、山椒の芳香が実に食欲を誘う、春らしい一品です。

筍の木の芽焼、ぜひぜひ、楽しんで頂きたい一品です。



今回は「筍の木の芽焼」についてお伝えいたします。

まずは筍ですが、生の物を茹でて使います。

もちろん茹でた筍を買ってきて、仕立てても問題ありません。

むしろ産地で取りたての状態から、間を置かずに茹でた水煮は非常に品質の高いものがあります。

中国産の生の筍だったら、国産の水煮筍の方が数段優れているでしょう。

さて生の筍は、まずは束子でざっと泥を落とします。

水で流しながら、土を落とす程度で構わないのでさっくりと洗ったら包丁を入れます。

まず皮付の筍の先を斜めに落とします。

この先の部分も大きく落としてしまいがちですが、後々姫皮を使う事を考えたら削ぎ取る程度に包丁を入れるのが賢い使い方です。

その後、縦に切れ目を入れます。

この切れ目も深く入れ過ぎると筍の本体に傷がつき切付の時に切れ目に合わせて・・などと余計な手間となりますから皮1枚を切るつもりで切れ目を入れるのが正解です。


下処理の終わった筍を鍋に並べて水を張ります。

糠と鷹の爪を加えて茹でましょう。

茹で時間は筍の大きさによっても変わるのですが、鮮度や産地によっても変わります。

また料理人の感性によっても時間に差が出ます。

時間が短くなれば、当然のことながら灰汁はあまり抜けません。

えぐみが残るし、硬さが残る場合があります。

時間が長くなれば、より灰汁が抜けて柔らかくなると理解してください。

では長ければ長いほど良いのかと言うと、そう言う事ではありません。

えぐみも筍の味わいの一部と言う考え方です。

例えば、えぐみを残して茹でるのであれば沸いてから1時間程度で火を止めて、すぐに水にさらしてしまうというやり方です。

逆に、すっかり灰汁を抜きえぐみを残したくないと言う事ならば、同じく湯が沸いてか3~5時間ほど茹でてから、茹で汁の中で一晩掛けて冷ますという方法です。

最近では糠に代えて大根おろしを使う方法や、米の研ぎ汁を使う方法などを採用する料理人も増えています。

それだけ、この灰汁抜きの仕事はプロセスの評価が分かれる所であり、仕上がりへの逆算で方法が変わる所であります。

私の場合は、アクも味わいのうちというスタンスで、綺麗にし過ぎないと言う茹で方をしていました。

1時間ほど糠・鷹の爪で茹でて、即・・水に晒してしまいます。

その後、皮を掃除して煮物に仕立てる大きさに切付けて水に漬けて保存しますが、この時点でもアクは抜けます。

だから厳密にいえば提供する時間をも逆算し茹で加減、アクの抜き加減を決める事となりますが、ここから先は料理人の感性と言う事で自分のイメージに近い仕上がりを目指し試してみてください。

さて茹でる話が長くなりましたが木の芽焼に使うのは、この状態になった物です。


まずは軽く素焼きにして表面の水分を飛ばします。

その後、酒と醤油の割醤油を3回ほど掛け焼にして、叩いた木の芽・・山椒の若芽をまぶして完成です。

酒に代えて出汁と醤油の割醤油を使う職人もいれば、醤油は淡口醤油を使う者もおります。

こちらも好みに沿って色々と試して自分流の木の芽焼を創造して頂くのが良いかと思います。

さて、掛け焼はボールなどに割醤油を作っておいて、串に刺した筍であればボールの上にかざし、お玉で上から割醤油をかけてタレが回った所で、また焼くという手法です。

これが上火の焼台であれば網の上にホイルを敷いて、その上に筍を並べて焼くのが効率が良いです。

ご家庭であれば魚焼のグリルであるとか、オーブントースターでも充分利用できます。

こういう時は、ボールの割醤油の中で洗った筍を焼きつつ、途中で取り出しまた洗っては焼くという方法が良いです。

そして回数は3回、話が逸れるようですが鰻のタレ焼の時もタレの回数は殆どの場合は3回です。

1回目で色を付ける、2回目で味を付ける、3回目のタレで照りを載せるというのが基本です。

あくまで掛け焼の場合はイメージとなりますが、1回目の割醤油で全体に色が付き割醤油の味が乗る下地を作る。

そして2回目の割醤油で、しっかり焼いて割醤油が焦げる直前位まで筍の表面を煮詰めるイメージです。

ある意味、カラメリゼのイメージで臨んでも構いません。

酒の糖分だけなので、厳密にはカラメリゼになるほどではありませんが、この焦げ目が全体に喰い味として行き渡ることと、3回目の割醤油で艶を載せますがその下地を作る事を目指して下さい。

そして3回目の割醤油を乗せ、醤油に火が入ったら焼き終わりです。

大体の時間を比率で言うと1回目の焼時間を10としたら、2回目は12~13で3回目は2~3といった所です。


そしてまな板、もしくは大きなお皿に焼き上がった筍を並べて、叩いた木の芽・山椒の若芽をまぶします。

そして、盛り付け。

盛付用に筍の皮などを取っておくと、雰囲気は出ますが笹や葉蘭などお好きな会敷を使って頂く方が個性が出ます。

焼物には必ず焼前というあしらえを添えますが、蕗の葉の辛煮などが季節的には良い品と感じますが、色目に派手さがないのが私のセンスの未熟な所です。

長々と綴ってしまいましたが、筍の木の芽焼。

いかがでしょうか?

季節には必ず1度は食したい品、食べて頂きたい一品と自負しておりますが、お試し頂ければ幸いです。

では、本日も良い一日をお過ごしください。



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