読書感想文:処女連祷
今まで書いてきたnoteのアクセスログみると、意外にも『ペスト』紹介を細々と読んでいただけていることに気がつきました。
おすすめすぎる小説だけど、旬でもないし、海外作品だし意外!
非常に読みやすく、何度読んでも楽しめる読み応えがあるのが世界的名作たるゆえんですね。
前置きが長くなりましたが、今回も5本の指に入るくらい好きな小説、
『処女連祷』です。
〜あらすじ〜
卒業を間近に控えた女子大生仲良しグループ。珠美は秘書、文代は教師、トモ子は編集者など、七人それぞれの進路へ巣立とうとしている。恋愛に憧れつつも、まだ見合い結婚が主流の終戦直後、彼女達が常に盛り上がるのは、唯一婚約者のいる祐子の話だ。卒業後、婚約者の誕生日に全員が祐子の家に招待されるが―。
私の祖母と同世代くらいの話で、当時、大学までいく女性は非常に少なかったはず。
悲しさを通り越して笑ってしまうほど、女性の悩みは当時から変わらず「いつ結婚するのか」「仕事はどうするのか」など。有吉佐和子は決して「結婚=ゴール」とは描きません。高学歴な女性が家庭に入り、家事や育児に終われ、才能が錆びていく姿も描きます。
家庭に入ってしまった当の本人は日々の生活に終われ疲れてはいるものの不幸せではありません。しかし、大学教育まで受けた自分たちの未来の姿をみて、新婚者や独身者は動揺を隠せないのも事実。
物語は「女性の悩みを描いた〜」というだけでは終わらずミステリ小説にもなっています。
※以下、ややネタバレあり・・
グループの中で、唯一婚約者がおり、常に話題の中心だった裕子にまわりのみんなは振り回され続けるのですが、ラストシーンで主人公たちが裕子の嘘を暴きに行こうと出かけます。それでも最後の最後までは決して描かず、友人の裕子をとっちめるかどうか逡巡するところで終わります。
きっと彼女たちは、今後も裕子との友情をなんとなく続けていくんじゃないかなぁ。
男性社会の中で独身のまま仕事を続ける聡明な彼女たちは、“女の幸せ”という虚像に取り憑かれて嘘を塗り固めた裕子を糾弾することは、自分たちの心の中を切り開き、そのどす黒い感情を直視せざるを得なくなることだと理解しているからです。
現実を正しく凝視して、釈明を一切退けて生きることの難しさを、文代は知っていた。
まさにその通りだなぁ・・と頷かずにはいられない一文です。