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Ex_Machinaタイムマシン紀行 - 音の鳴らない日々。

前回、15歳の僕は音楽と同化をしました。
それまでの流れは、ぜひ以下マガジンよりお読みください。


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さて、QueenやXとの出会いを経て、15歳の僕はある都立高校に入学した。

なぜその高校を選んだのかと言うと、

・強豪の野球部があって僕も高校野球生活に闘志を燃やしていたり
・軽音部の活動が盛んでバンドを頑張って女子にモテようと企んでいたり

なんてことは全然なく。

ただ単に、勉強をわざわざしなくても入れる程度の偏差値だった事と、昔に生まれ育った街にある学校だったので、何となく愛着が湧きそうだった事が理由である。


入学式を終え、友達も増えてきたある日の事、上級生による部活勧誘が行われた。
運動部から文化部、およそ20〜30ほどはあっただろうか。

上記にもあるように、軽音部が盛んであったわけではないが、僕はすでに音楽と同化した身。
バンドを組む為に、クラスで早い段階で仲良くなった"Tルオ"と、その幼馴染で隣のクラスだった"Zン"を誘い、軽音部へと入部した。
(ちなみに"Zン"は当時からかなり凄腕のラッパーであったが、少し強引に軽音部に引っ張った。)

3人で入部説明会の教室へ入ると、パラパラと上級生と入部希望者が、規則性なく座っている。
僕らは3人が固まり、周りの様子を伺いながら少し後ろの席に陣取った。

説明会が始まり、部長らしき少し小太りの男が場を仕切り始めた。
とても当時の僕がイメージするミュージシャンのシルエットではなかったのは正直な感想だ。


「それではこれから新入部員に自己紹介と希望のパートを述べてもらいます。」


実は僕は非常にダサい上に謎な事に、ドラムをやりたいという希望をこの頃誰にも話せずにいた。
無論、一緒に入部した彼らにもその事は何となくはぐらかしていた。

僕の順番が来た。


「い、1年D組の...小谷翔です。希望のパートは...」

「希望のパートは?」

「そ、その...」

「ん?」

「ベ、ベース...で、す」

「お!ベーシスト志望なんだね!よろしく!」


...


はぁ。なんて愚かな。


訳のわからない恥ずかしさから、なぜ僕は別に第二希望という訳でもないベースを選んだのか。
おそらく当時は、(hideじゃないけど)歌を歌うなんていうパーソナリティを持つなんてとても自分には向かないし、ギターという真っ直ぐにベタな憧れ心と勘違い気質を必要とするパートにもとても耐えられない、と無意識に考えたのだろう。


そう、ここまで来て、僕はまだまだシャイなのであった。


というのも、生まれてから保育園の年長くらいまで、僕は恥ずかしがり屋の極地にいたのだ。


母親の後ろに隠れるなんて日常茶飯事。
特に知らない人に話しかけられる事が良くあったので、そんな時は自分の気配を消し、オープンに人と接する事ができない少年であった。

そんな性質が自分でも面倒に思い、少しずつ治まっていくのだが...
どうも自分から目立とうとするパーソナリティを嫌ってしまうような子であり続けた。

ロックに出会ってからの僕にも、何となくまだその性質が残っていたのだろう。
今考えるとアホらしいのだけど。


正式に"ベーシスト志望"として軽音部に入部した僕は、初めて楽器を手にする。
もちろんベースだ。


どうやらこのベースは、少し小太りの部長の所有物らしい。

...この部には共有の楽器はなく、よく見るとドラムセットも置いていない。

小太りの部長は僕に言う。

「じゃあまずは簡単なスピッツからやろうか!」


僕は戸惑う。
いや、スピッツが嫌いなのではない。
むしろ僕だって、スピッツは耳馴染みがあって、好きだ。

ただ、シャイな部分が出てしまったが情熱が滾っている事は事実な僕は、果たしてこのままスピッツを弾きたいのだろうか?
しかも楽譜を読んで一音違わず。

当時の僕は、そんな疑問をここまで言語化できてはいなかったと思う。
それに新入部員の分際で、僕はリアムギャラガーのような態度を、いくら小太りとは言え"部長"という立場で、学校の"先輩"とされる男に取ってしまっては、今後の明るい高校生活において致命的ダメージになる事もわかっていた。

仕方ない。
さぁ、ピックを持って、ベースを担ごう。

...


ベン、

ベン、

ベベン、、

ベ、ベン、、


ベン、




バタン。



...僕は1週間後、音楽室を去った。

そのまま僕が向かった先は、西新宿のブートレグCD屋。
ナヨナヨしてしまった心を正しに、QueenやXのアンオフィシャルなDVDやCDを探しに行った。

そしてその後は、やはり東京ドームだった。


ここから少し長い間、僕は音楽を鳴らす事から離れた。
音楽室の前すら通らなくなった。

スピッツのイントロのみ弾ける技術だけを持って、僕はXのライブ映像をとにかく漁り、彼らの全てのエッセンスを吸収する期間に入る。

その間音楽に関してやった事といえば、少年ジャンプやダンボールで作った簡易ドラムキットで、ドラムを叩く動作の真似をするだけだ。
聴覚からだけでなく、視覚からも音楽を吸収した。


そう、僕から音は鳴らない。
ここからおよそ2年間。


ただし、確実に、音を吸収していた時期だった。
そしてドラムだけじゃなく、僕の感性は自然と音の流れや共鳴を知っていく。


2年後、高校3年生、17歳になった僕は、ある日東京ドームに行かなくなった。
そしてもう一度、音楽室へ足を運ぶことになる。


同級生とバンドを組み、本物のドラムを叩く事を決めたのだ...



Sho Kotani


SK x

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