柔軟な働き方にはガードレールが必要 ~働き方方針ガイドを公開~
私が経営しているHQというスタートアップでは、創業時から非常に柔軟な働き方を採用しています。
フルフルフレックス/コアタイムなし
フルリモートワーク可/週出社強制日なし
子育て層や地方在住者はもちろん、全社員に「ライフスタイルにあわせた柔軟な働き方ができる会社だ」と感じてもらえていると思います。
一方で、経営者の友人からはよくこんなことを聞かれました。
これらの指摘は本当にもっともだと感じます。
実際に3年間柔軟な働き方を運用してみて実感するのは、
「自由だからこそ、逆に明確な規律や仕組みが求められる」
ということです。
当初は、一人ひとりひとりにとってのアタリマエが違いすぎて、すれ違いも多くおこりました。細かく挙げると切りがないですが、以下のような声が多くあがりました。
柔軟な働き方には、逸脱や非効率を防ぐための”ガードレール”が必要不可欠と考え、この3年間、一つ一つ方針を言語化してきました。
結果として、現在では、大きな混乱なく、
「生産性の高さ」と「多様な個の自分らしい働き方」の両立
がある程度は実現されているように感じています。
「実際にどうやっているの?」
「具体的にはどんな制度にしているの?」
と知り合いから聞かれることが結構多かったので、第一弾として、
フルフレックス制度に関する社内ドキュメントをそのまま公開しようと思います(一部守秘情報は削除済み)。
企業経営の現場で使えるリアルなTIPSとして、ご活用いただければ幸いです。
(もちろん、自由にコピペ、改変していただいて構いません。※どんな会社様に合っているか知りたいので、もしよかったらTwitter/Xやnoteで一言頂けますと幸いです)
<以下が社内文書からの抜粋です>
フルフレックス制度の前提 「自由と責任」
HQは、「コアタイムなし/フルフレックス制度」を採用しており、いつでも好きな時に自由に勤務できる会社です。
一人ひとり、働きやすい時間は違います。家族構成、趣味の時間、自分の集中しやすさ、など、「自分らしい働き方を自らデザインできる組織」でありたいと思います。
一方で、その自由を謳歌するうえで、前提としての「責任」があります。
顧客価値と経済価値の創出という**「十分な成果を出す」**という責任を果たせていない場合、自由きままに働くことを許容するわけではありません。
結果責任を果たすために、「自由の中でセルフマネジメント」を自ら行う必要があるため、一人ひとりが成熟したプロであることを求められる厳しさのある人事方針でもあります。
あくまで、フルフレックス制度は手段であり、目的は「ワークライフシナジーの最大化」です。
明確な共通の枠組みのもとでの自由
フルフレックスだからといって、「完全自由=すべて自己責任」とは考えていません。時間が自由だからこそ、「チームが共通で徹底している共通の枠組み」が必要です。
一人ひとりが自分らしく働きながら、成果を出していくための仕組みや制度をしっかり整え、更に全員がそれを守っている必要があります。
以下に全社員にぜひ徹底してほしいことを纏めていますので、順守をお願いします。
都合よく捉えてフリーライドする人が出てきては柔軟な働き方を維持することができません。全員が共通の枠組みを守って初めて、一人ひとりの自分らしい働き方を現実に体現することが可能になります。
①成果=Outputにコミットする
Input(労働時間)としていつ働くかは自由ですが、Output(成果)は違います。給与や役割に応じた成果期待に沿った貢献を求めています。自由の前提として、成果=Outputにコミットしていることを求めています。
責任を果たしたうえでの自由であるため、期待成果が出ていない場合、Inputの自由をそのまま放任することはありません。
たとえ正確に打刻していたとしても、期待する成果に到達しておらず、毎日の生活リズムが崩れていることに原因があると判断された場合、上司から改善を求めるフィードバックを行います。
②働くリズムを自らデザインし、開示する
労働時間が自由、であることは、会社が「仕事のリズム」を提供してくれないので、「簡単に堕落しやすい」ということを意味します。
たとえるならば、給食を食べていれば健康を維持するのは簡単ですが、自由だからといってマクドナルドやコンビニ弁当ばかり食べて健康を害してしまう人も多いです。
つまり、一人ひとりが「他の企業よりもプロとしての自己規律スキルが求められる環境」です。
自らの中長期的パフォーマンスを最大化する「働くリズム(=習慣)」を自ら形成してほしいと思います。
理想のスケジュールは、人それぞれ異なります。ある人は朝型で毎日7-17時かもしれませんし、ある人は子育てのために9-16+20-22、かもしれません。また、趣味やその他の関係で曜日によって違うリズムになる人もいるでしょう。
大切なのは、漫然と何となく働くのではなくて、自分の職務内容、成果の出し方、性格や生活に”フィットしたリズム・規律”を持つということです。
また、自らの働くリズムを自己開示し、お互い簡単に理解しあうことは極めて大切です。
多様な働き方のニーズがあり、土日働きたい人もいれば、深夜子供が寝た後に稼働したい人もいることを理解しましょう。
そして、自ら開示しないと、他者がそれを推測できるわけがないことも理解しましょう。
具体的な依頼事項
自らのコアタイム&働き方をカレンダーでわかりやすく表示する
仲間が簡単に自分のコアタイムが分かるようにする
フルフレックスでは、オンオフの切替は自己責任で行う必要があります。
自分が自由な時間に働けるということは、自分が働いていない時間に仲間が働いているということを意味します。いつでもメッセージが飛び交うのです。自己防衛できないと、24/7で仕事のことを気にし続けないといけない可能性があるということです。
また、チームで働くうえでは、自分だけでなく仲間が自己防衛していると信じられる必要があります。
自分のコアタイムで仕事をするとき、「今この人にメッセージ送っていいのかな。」といちいち気にしなければいけないのだとすると、そんなスピードの遅いチームに勝機はありません。
具体的な依頼事項
自分がオンオフを切り替えたいときにSlackを見ないようにするなど、オンオフを切り替えるための自己防衛は自己責任で行いましょう。
Slack通知を切る設定を活用しましょう。やり方はNotionにて。
仲間はしっかりセルフマネジメントできているという前提のもとで、忖度はやめて、開示情報に基づいてコミュニケーションしましょう。
NG 「なんとなく朝型の人っぽいし、夕方に会議いれたら迷惑かな」と勝手に思って翌日にまわす。
⇒推奨 カレンダーをみたら、夕方16時-20時はNGのようだったので、16時からの会議はリスケする。OKだったらそのまま入れる。
NG 「自分は業務委託で土日働いているが、なんとなく土日や夜に連絡するのは良くないなと思ってSlack投稿をやめた」
⇒推奨 レポート相手はしっかりセルフマネジメントできていると思うので、仕事が終わったら即レポートするメッセージを送る。受信側はそれが嫌だと思ったら通知設定を自ら行う。
*長時間労働やオンオフの切替がないことは推奨しませんが、労働するタイミングや曜日はヒトそれぞれです。土日に連絡ができない会社は、たとえば業務委託、副業が活躍しにくい会社になってしまうことを意味しています。
④法令遵守の勤怠対応
フルフレックス制度をフル活用するためのには、①法令遵守と②コスト抑制という二つの制約条件をまもることが大前提となります。
法令遵守:労働にまつわる各種法律を守らないことは、会社の評判や税務の観点で大きなリスクになりえますし、なにより誠実な会社とはいえません。
コスト抑制:自由な時間に働いた結果として、成果は他の人と変わらないのに、残業代や深夜割増賃金が増えてしまうのは、フェアとはいえません。また、少しでも倹約する必要があるフェーズのHQにとっても経済的損害です。
具体的には、以下のような運用を行います。
コーポレートからの指示を確実にフォローしましょう
有給取得などの法令で求められる具体的な対応事項は、コーポレートが適切に取り纏めて、具体的な指示を皆さんに送りますので、フォローをお願いします。
「どうしてこれを守る必要があるの?」という疑問が生じるかもしれませんが、守らなかったときに大きなリスクになるため、会社や皆さん自身を守るためには必須の対応と認識してほしいと思います。
フェアではない追加人件費の発生は最大限防ぎます
自分の意志で自由に働いた結果、深夜労働が増えたり残業が増えたりして、過剰に報酬が上がってしまうのは、他の社員と比較してフェアとはいえませんので、「自由に働いた結果の報酬がフェアになる仕組み」として「固定残業手当/固定深夜手当」を導入しています
念のためですが、残業や深夜労働は全く推奨していません。大半の社員はいわゆる日中に働くほうが適しているでしょう。残業時間の有無ではなく、パフォーマンス/成果で評価します。
一方、法律を守った公正な勤怠対応が何よりも優先しますので、結果として割増人件費が発生してしまうのは仕方ありません。発生したものを隠すことは絶対にせず、公明正大にレポートしましょう
⑤最後に:中長期で大事を成し遂げるためのハードワーク
大前提、スタートアップはハードワークです。正直にいうと、ゼロから大きなことを成し遂げる創業チームにとって、ワークライフバランスを常に最優先することは現実的に難しいと思っています。
私生活を何よりも優先する考え方は否定しませんが、その場合、今のフェーズのHQでの正社員というキャリアは、そのひとにとってベストな選択肢とは言えないでしょう。より安定して利益・キャッシュフローが出ていて、確固たる事業の基盤がある大きな企業のほうが仕事の融通がつきやすい環境といえるかもしれませんし、非常勤社員や業務委託という関わり方のほうが適しているかもしれません。
HQもあと5年もすれば、ワークライフバランスがかなりとりやすい正社員ポジションも幾つか出てきていると思います。そのタイミングがあなたが加入すべき時期である可能性もあります。
一方で、私たちの取り組みは長期的な挑戦であり、100m走ではなく、たとえるならばインターバル走です。
毎日全力ダッシュでは力尽きてしまいます。中長期的に成果を最大化する、ハイペースだが持続可能なコントロールされたダッシュである必要があります。
人生を謳歌しながらの「メリハリのついたハードワーク」を目指し、長い時間をかけて、偉大な事業と組織を築き上げていきましょう!
「ユカイに理想を追求」を体現していきましょう!
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